第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

心大血管疾患

[PB-1] ポスター:心大血管疾患 1

2022年9月16日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PB-1-3] ポスター:心大血管疾患 1急性心筋梗塞発症後,ARDS・肺水腫を発症し長期人工呼吸器管理となった症例に対するI C Uからの作業療法経験

川崎 祐太郎1高岡 宏1德本 秀哉2 (1松山赤十字病院リハビリテーション科,2松山赤十字病院循環器内科)

【はじめに】日本集中治療医学会はICUにおける作業療法士の役割の一つとして,退院後の日常生活機能を早期より予測し日常生活回復を支援することとしている.今回急性心筋梗塞後,ARDS・肺水腫を発症し,長期間人工呼吸器管理が必要となった症例を担当する機会を得た.ICU入室早期から介入し,合意目標を他職種で共有・支援した結果,人工呼吸器離脱,ADL改善,参加拡大が得られたので以下に報告する.尚,本報告にあたり症例の同意を得ている.
【症例紹介】50歳代男性,診断名:急性心筋梗塞,現病歴:倦怠感・呼吸困難にて当院受診. CK:12390,BNP:335.5,急性心筋梗塞疑いにて入院.心原性ショックを認めIABP挿入後PCI施行しICU入室. 3病日目:ICUにて作業療法開始.O2:4L,BP:100/80,HR:123,SpO2:97%,四肢GMT:4,DOB・Nad持注,入院前:独歩・ADL自立,職業:土木作業員,一軒家で同僚4人と同居.身寄りなく,キーパーソン:会社社長.趣味:読書・銭湯・パチンコ,Demands:復職.4病日目:ARDS・肺水腫による急性呼吸不全発症.6病日目:人工呼吸器管理となる.その後抜管,再挿管を繰り返し,22病日目:気切施行.
【経過】3病日目より介入するが,呼吸・循環動態安定せずbed上訓練を中心に実施.23病日目:人工呼吸器管理 ( PS モ ー ド ,PEEP:16cmH2O,PS:10 ) ,RASS:-2,BP:88/54,HR:89,SpO2:97%,RR:26,PaO2:76.5Torr,PaCO2:41.5Torr, EF:30.9%,心胸郭比:48.9%,胸部XP所見:両肺全野にすりガラス陰影あり.四肢GMT:3, ICDSC:7点,覚醒時は文字盤でコミュニケーション可能,FIM:18点.30病日目:座位訓練開始するが全身状態不安定.Drと定期的に情報交換を行い,リスク管理に努めた.40病日目:本人より“コンビニに行きたい,アイスが食べたい”との希望あり.合意目標:W/C座位で氷を自力摂取出来る,他職種カンファレンス(以下Cf)にて目標を共有し積極的に離床を図る方針となった.41病日目:W/C座位訓練開始. 47病日目: ICDSC:0点,握力:16.4kg/11.6kg,四肢GMT:2+,SPPB:0点,MMSE:20点,FAB:8点,TMT-A:25.08秒,TMT-B:90.19秒.56病日目よりbed上・W/C座位にて下肢エルゴ(3W)開始,Borg scale:11-13で実施可能.Nsにて日中や休日も可能な限り実施してもらい退院まで継続.62病日目:W/C座位1時間・氷の自力摂取も可能となった.69病日目:ICU退室.70病日:Nad終了.76病日目:“ATMやコンビニにアイスを買いに行きたい”との希望あり.合意目標:W/Cでコンビニへ買い物に行く,Cfにて目標共有.83病日目:人工呼吸器装着下にて歩行訓練開始.85病日目:DOB終了.86病日目: OT・Dr・Ns・MEとATM・コンビニへ行く.101病日目:人工呼吸器離脱.103病日目:Cf実施,合意目標:病棟内ADL自立.以後段階的にADL訓練を進め,入浴以外の病棟内ADL自立.112病日目:入浴動作訓練実施.118病日目: 有害事象発生無く転院.
【結果】最終評価時は,BP:70/41,HR:66,SpO2:98%, BNP:240.5,四肢GMT: 3,握力:16.6kg/13.4kg,SPPB:6点(閉脚・セミタンデム・タンデム立位:3点,歩行:3点,起立動作:0点), 基本動作・歩行器歩行:自立,6分間歩行:210m(minSpO2:93%,maxHR:86),MMSE:30点,FAB:18点,TMT-A:37.61秒,TMT-B:41.6秒, FIM:108点,入浴以外の病棟内ADL自立. Borg scaleは病棟内生活:11-13,入浴時のみ:12-14,コンビニまで買い物に行く事が出来た.
【考察】本症例は介入当初から強い復職希望があった為,復職に向けて達成可能な合意目標を設定した. ICU在室時から本人の希望や合意目標を他職種で共有し支援した事で,人工呼吸器離脱,ADL改善,参加の拡大に繋がったと考える. 人工呼吸器離脱だけではなく,退院後の日常生活機能を早期より予測し支援する為にICUからの作業療法介入は重要である.