[PB-1-5] ポスター:心大血管疾患 1活動量の管理が自宅退院への一助になった心不全患者
【はじめに】慢性心不全(CHF)で入退院を繰り返す女性を担当した.過去の入院時の様子から精一杯頑張る傾向にあったため,それを抑制しつつ身体に負担がかからないような活動量の管理が重要と思われ,そこに重点を置き介入したので以下に報告する.発表に際しご本人から同意を得ている.
【症例紹介】80歳代女性,身長144cm,体重50kg.診断名:CHF増悪,徐脈頻脈症候群.現病歴:2~3日前から呼吸苦を訴え救急要請,搬送時の心電図にて頻脈性心房細動HR140bpmでHRコントロールを目的に入院.既往歴:HT,心房頻脈,非弁膜症性心房細動,CHF,肺癌.在宅では酸素療法を行い,要支援2でヘルパーと訪問看護を利用.独居で長男夫婦が同一敷地内に居住.HOPE:身体に負担をかけないようにして暮らしたい.
【医学的治療経過】入院時の胸部レントゲンで心肥大,胸水貯留を認め,下腿浮腫があった.NYHA分類:Ⅲ度,Nohria Stevenson分類:profile B.検査データはNT-pro BNP:12963,BUN:18.7,CRE:1.21 , e-GFR:32.5 , CRP:0.379 , 心エコ ー 検査は左房径 :45mm , LVDd/LVDs:49/39mm,EF:42%,AR:moderate,E/E’:12.5であった.入院後も数日間頻脈性心房細動と洞停止を繰り返していた.14病日目に呼吸状態が悪化しBiPAP装着,25病日目に症状改善し酸素4Lとなった.入院翌日からリハビリを開始したが,症状の改善が少なくベッドや車椅子上での軽運動が主だった.治療方針のHRコントロールは菌血症によりペースメーカーから薬剤に変更となった.
【作業療法評価】初期評価時ADLを阻害する神経症状やROM制限や痛みはなし.床上動作は自立していたが,息切れや頻脈によりM-FIMは21点(食事7,排便管理3),C-FIMは35点.MOCA-J:27点.25病日目の再評価は床上動作に介助を要したが,M-FIMは36点(変化項目:清拭3,整容4,移乗ベッド6,移乗トイレ6).HOPEと治療方針の変更を考慮しリハビリでは「CHFの増悪なく,毎日のセルフケア・活動量の自己管理ができる」を目標とした.
【作業療法】頑張り屋の症例に対し心不全の運動療法のモニタリング¹⁾の中から,特に倦怠感の持続・前日の疲労の残存の管理が重要と思われ,それに繋がる活動量の管理を症例と一緒に行った.そこでその日やりたいことの優先順位を決めて活動したり,自宅での生活の様子や間取りを教えてもらい,必要な動作の確認や目標歩行距離などを決めた.運動負荷を予め決め1回40分のPT・OTを午前と午後に分け実施した.動けるようになると病棟での活動が増えるため,運動負荷は維持もしくは減少させADLを阻害しないよう留意した.翌日に倦怠感や疲労の残存がないことを確認した後に運動負荷を漸増した.疲労が残存した時は過負荷と説明し,原因を一緒に考え繰り返さないようにした.これらを継続したことで「午後お風呂に入ると疲れるから,リハビリは午前中だけ」や「午前中お風呂でリハビリできなかったけど,午後2回できると思う」などの声が聞かれるようになった.
【結果】25病日目以降CHFの増悪なく,床上動作自立,M-FIMは83点(変化項目:清拭7,整容7,上衣更衣7,下衣更衣7,トイレ動作7,排尿管理7,排便管理7,移乗ベッド7,移乗トイレ7,移乗風呂7,移動5),自身の活動量の管理ができるようになり51病日目に自宅退院となった.
【考察】CHFは再入院率が高く,様々な自己管理が重要になる.その一環として活動量の管理を行った.症例は認知機能低下がなく理解が良いこと,精一杯頑張ることをやめたことや疲労の具合などからそれができるようになった.
1)後藤葉一:慢性心不全.江藤文夫,他(編):呼吸・循環障害のリハビリテーション.医歯薬出版,p278-285,2008
【症例紹介】80歳代女性,身長144cm,体重50kg.診断名:CHF増悪,徐脈頻脈症候群.現病歴:2~3日前から呼吸苦を訴え救急要請,搬送時の心電図にて頻脈性心房細動HR140bpmでHRコントロールを目的に入院.既往歴:HT,心房頻脈,非弁膜症性心房細動,CHF,肺癌.在宅では酸素療法を行い,要支援2でヘルパーと訪問看護を利用.独居で長男夫婦が同一敷地内に居住.HOPE:身体に負担をかけないようにして暮らしたい.
【医学的治療経過】入院時の胸部レントゲンで心肥大,胸水貯留を認め,下腿浮腫があった.NYHA分類:Ⅲ度,Nohria Stevenson分類:profile B.検査データはNT-pro BNP:12963,BUN:18.7,CRE:1.21 , e-GFR:32.5 , CRP:0.379 , 心エコ ー 検査は左房径 :45mm , LVDd/LVDs:49/39mm,EF:42%,AR:moderate,E/E’:12.5であった.入院後も数日間頻脈性心房細動と洞停止を繰り返していた.14病日目に呼吸状態が悪化しBiPAP装着,25病日目に症状改善し酸素4Lとなった.入院翌日からリハビリを開始したが,症状の改善が少なくベッドや車椅子上での軽運動が主だった.治療方針のHRコントロールは菌血症によりペースメーカーから薬剤に変更となった.
【作業療法評価】初期評価時ADLを阻害する神経症状やROM制限や痛みはなし.床上動作は自立していたが,息切れや頻脈によりM-FIMは21点(食事7,排便管理3),C-FIMは35点.MOCA-J:27点.25病日目の再評価は床上動作に介助を要したが,M-FIMは36点(変化項目:清拭3,整容4,移乗ベッド6,移乗トイレ6).HOPEと治療方針の変更を考慮しリハビリでは「CHFの増悪なく,毎日のセルフケア・活動量の自己管理ができる」を目標とした.
【作業療法】頑張り屋の症例に対し心不全の運動療法のモニタリング¹⁾の中から,特に倦怠感の持続・前日の疲労の残存の管理が重要と思われ,それに繋がる活動量の管理を症例と一緒に行った.そこでその日やりたいことの優先順位を決めて活動したり,自宅での生活の様子や間取りを教えてもらい,必要な動作の確認や目標歩行距離などを決めた.運動負荷を予め決め1回40分のPT・OTを午前と午後に分け実施した.動けるようになると病棟での活動が増えるため,運動負荷は維持もしくは減少させADLを阻害しないよう留意した.翌日に倦怠感や疲労の残存がないことを確認した後に運動負荷を漸増した.疲労が残存した時は過負荷と説明し,原因を一緒に考え繰り返さないようにした.これらを継続したことで「午後お風呂に入ると疲れるから,リハビリは午前中だけ」や「午前中お風呂でリハビリできなかったけど,午後2回できると思う」などの声が聞かれるようになった.
【結果】25病日目以降CHFの増悪なく,床上動作自立,M-FIMは83点(変化項目:清拭7,整容7,上衣更衣7,下衣更衣7,トイレ動作7,排尿管理7,排便管理7,移乗ベッド7,移乗トイレ7,移乗風呂7,移動5),自身の活動量の管理ができるようになり51病日目に自宅退院となった.
【考察】CHFは再入院率が高く,様々な自己管理が重要になる.その一環として活動量の管理を行った.症例は認知機能低下がなく理解が良いこと,精一杯頑張ることをやめたことや疲労の具合などからそれができるようになった.
1)後藤葉一:慢性心不全.江藤文夫,他(編):呼吸・循環障害のリハビリテーション.医歯薬出版,p278-285,2008