[PB-2-2] ポスター:心大血管疾患 2心臓大血管手術後高齢者の術前フレイルと術後ADL能力の改善が予後に及ぼす影響
【序論・目的】
心臓大血管手術が施行される高齢者数は増加の一途を辿っており,当該患者の術後リハビリテーションに作業療法士が参画する機会が増えている.術後リハビリテーションのアウトカムとして,患者の再発・再入院・死亡を減少させ,快適で活動的な生活を支援することが求められている.当該患者の再入院や死亡といった予後に関連する要因として,近年,術前のフレイルや患者のADL能力に関する報告が散見される.しかしながら,術前フレイルと術後ADL能力の両者の関係性と患者予後との関連性を検討した報告は少ない.これらの関連性を明らかにすることで当該患者のアウトカム改善に寄与する作業療法介入立案の一助となると考えられる.そこで,本研究は心臓大血管手術後高齢患者の術前フレイルと術後ADL能力の改善が患者の予後に及ぼす影響を検討することを目的に実施した.
【方法】
当院で心臓大血管手術が施行された65歳以上の患者181例を対象とした.対象者の術前患者属性として,年齢,性別,併存疾患(Charlson comorbidity index;CCI)およびフレイルの評価指標であるClinical Frailty Scale(CFS)を調査した.CFSは患者の臨床像に基づき9段階で虚弱性の程度を判定する指標である.先行研究(Sunaga et al,2021)に基づき,CFS≤3を非フレイル,CFS≥4をフレイルと定義した.術中・術後経過として,人工心肺使用時間,ICU入室時の患者重症度(APACHE-Ⅱスコア),術後せん妄,在院日数およびADL能力の評価指標として退院時のBarthelIndex(BI)を調査した.先行研究(Sato et al,2021)に基づき,BI≥85をADL良好,BI<85をADL低下と定義した.当院退院後の追跡調査として,退院後の全要因に伴う死亡または予定外再入院の発生をイベントと定義し,患者の予後を調査した.統計解析は術前CFSと術後BIのスコアに基づき,Ⅰ群(術前非フレイル,術後ADL良好),Ⅱ群(術前非フレイル,術後ADL低下),Ⅲ群(術前フレイル,術後ADL良好),Ⅳ群(術前フレイル,術後ADL低下)の4群に患者を分類し,イベントの発生に関するカプランマイヤー曲線を描いた.また,Cox比例ハザードモデルによる多変量解析を行い,Ⅰ群~Ⅳ群のイベント発生に関するハザード比(HR)を算出した.解析は危険率0.05 未満を統計学的に有意とした.なお,本研究は当該施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者181例(年齢75.6±6.2歳)の退院後の追跡期間は平均553日であり,期間中に発生したイベント総数は60であった.カプランマイヤー曲線を描くと退院後の時間経過に伴うイベント発生の割合はⅣ群>Ⅱ群>Ⅲ群>Ⅰ群の順に高かった(p<0.001).年齢,性別,術前CCI,術後APACHE-Ⅱスコア,在院日数を調整因子としたCox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果,Ⅰ群をReference(対比)とした場合に,Ⅱ群はHR=3.5(P<0.001),Ⅲ群はHR=1.7(P=0.257),Ⅳ群はHR=3.1(P=0.016)であった.
【考察】
当院の心臓大血管手術後高齢患者において,術前非フレイル・術後ADL良好な患者(Ⅰ群)と比較して,術後ADLが低下している患者(Ⅱ群とⅣ群)はイベント発生のHRが有意に高かった.このことから,術前からADL能力の低下を認める患者や術後の合併症等によりADL能力の改善が十分に得られない患者はイベント発生のリスクが高いと考えられる.一方で,術前フレイル・術後ADL良好な患者(Ⅲ群)はⅠ群と比較してイベント発生のHRに有意差を認めなかった.したがって,術前フレイルと判定される患者も術後のリハビリテーションによりADLが改善することでイベント発生リスクを低減させる可能性があると考えられる.
心臓大血管手術が施行される高齢者数は増加の一途を辿っており,当該患者の術後リハビリテーションに作業療法士が参画する機会が増えている.術後リハビリテーションのアウトカムとして,患者の再発・再入院・死亡を減少させ,快適で活動的な生活を支援することが求められている.当該患者の再入院や死亡といった予後に関連する要因として,近年,術前のフレイルや患者のADL能力に関する報告が散見される.しかしながら,術前フレイルと術後ADL能力の両者の関係性と患者予後との関連性を検討した報告は少ない.これらの関連性を明らかにすることで当該患者のアウトカム改善に寄与する作業療法介入立案の一助となると考えられる.そこで,本研究は心臓大血管手術後高齢患者の術前フレイルと術後ADL能力の改善が患者の予後に及ぼす影響を検討することを目的に実施した.
【方法】
当院で心臓大血管手術が施行された65歳以上の患者181例を対象とした.対象者の術前患者属性として,年齢,性別,併存疾患(Charlson comorbidity index;CCI)およびフレイルの評価指標であるClinical Frailty Scale(CFS)を調査した.CFSは患者の臨床像に基づき9段階で虚弱性の程度を判定する指標である.先行研究(Sunaga et al,2021)に基づき,CFS≤3を非フレイル,CFS≥4をフレイルと定義した.術中・術後経過として,人工心肺使用時間,ICU入室時の患者重症度(APACHE-Ⅱスコア),術後せん妄,在院日数およびADL能力の評価指標として退院時のBarthelIndex(BI)を調査した.先行研究(Sato et al,2021)に基づき,BI≥85をADL良好,BI<85をADL低下と定義した.当院退院後の追跡調査として,退院後の全要因に伴う死亡または予定外再入院の発生をイベントと定義し,患者の予後を調査した.統計解析は術前CFSと術後BIのスコアに基づき,Ⅰ群(術前非フレイル,術後ADL良好),Ⅱ群(術前非フレイル,術後ADL低下),Ⅲ群(術前フレイル,術後ADL良好),Ⅳ群(術前フレイル,術後ADL低下)の4群に患者を分類し,イベントの発生に関するカプランマイヤー曲線を描いた.また,Cox比例ハザードモデルによる多変量解析を行い,Ⅰ群~Ⅳ群のイベント発生に関するハザード比(HR)を算出した.解析は危険率0.05 未満を統計学的に有意とした.なお,本研究は当該施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者181例(年齢75.6±6.2歳)の退院後の追跡期間は平均553日であり,期間中に発生したイベント総数は60であった.カプランマイヤー曲線を描くと退院後の時間経過に伴うイベント発生の割合はⅣ群>Ⅱ群>Ⅲ群>Ⅰ群の順に高かった(p<0.001).年齢,性別,術前CCI,術後APACHE-Ⅱスコア,在院日数を調整因子としたCox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果,Ⅰ群をReference(対比)とした場合に,Ⅱ群はHR=3.5(P<0.001),Ⅲ群はHR=1.7(P=0.257),Ⅳ群はHR=3.1(P=0.016)であった.
【考察】
当院の心臓大血管手術後高齢患者において,術前非フレイル・術後ADL良好な患者(Ⅰ群)と比較して,術後ADLが低下している患者(Ⅱ群とⅣ群)はイベント発生のHRが有意に高かった.このことから,術前からADL能力の低下を認める患者や術後の合併症等によりADL能力の改善が十分に得られない患者はイベント発生のリスクが高いと考えられる.一方で,術前フレイル・術後ADL良好な患者(Ⅲ群)はⅠ群と比較してイベント発生のHRに有意差を認めなかった.したがって,術前フレイルと判定される患者も術後のリハビリテーションによりADLが改善することでイベント発生リスクを低減させる可能性があると考えられる.