[PB-2-4] ポスター:心大血管疾患 2大腿義足の装着動作の再獲得に至った胸部大動脈瘤術後に心停止を呈した1症例
【はじめに】日常生活活動(以下 ADL)の中でも移乗・移動動作は,トイレ・入浴等の動作獲得に必要不可欠な基本動作である.下肢切断者は移動に何らかの障害を有しており,義足は移動を補完し,ADLを取り戻すための役割を担っている.ADL獲得は作業療法士にとって重要な課題であるが,作業療法士による下肢切断者の義足着脱に関する報告は少ないのが現状である.
今回,右片麻痺が既往にある解離性大動脈瘤術後の症例を担当し,大腿義足の着脱動作にアプローチし,動作の再獲得に至ったため経過を報告する.本発表に際し症例に口頭で説明を行い書面で同意を得ている.
【症例紹介】50歳代の男性,右利き,BMI 27.3,術前ADLは自立.既往に慢性腎不全(透析導入),左被殻出血,多発脳梗塞,解離性大動脈瘤(胸部・胸腹部・腹部)など複数疾患を有していた.X-8年に右大腿動脈バイパス術が施行されたが血管閉塞による壊死に至り大腿切断となった.X年Y月Z日に胸部大動脈瘤に対する手術目的で当院入院し,Z+7日に弓部大動脈置換術,冠状動脈バイパス術(RCA#3)が施行され術後8日目に抜管となった. 15日目にOT開始となったが,18日目に肺塞栓症による心停止を来たし,人工呼吸器,体外式膜型人工心肺が装着となった.34日目に抜管したが,38日目に肺炎による無気肺を発症し気管切開術が施行され人工呼吸器再装着となった.39日目にOT再開,75日目に呼吸器離脱,101日目に気管カニューレ抜去となり,171日目に他院転院となった.
【OT評価】右大腿義足はシリコンライナー,断端袋(最厚),坐骨支持四辺形ソケット(懸垂用ベルト)を装着していた.
初期評価(術後15日目)は,意識清明,右上肢はBrunnstrom recovery stageⅤ-Ⅴ,MMT1~2レベル,握力13kg,左上肢は運動麻痺を認めず,MMT4~ 5レベル,握力15kgであった.再開時(39日目)は鎮静スケール(RASS)-1~-2,右上肢に筋力低下を認めた(MMT1~2レベル,握力<3kg).
義足の着脱練習を開始した101日目は,意識レベルGCS E4V5M6,右上肢の筋力低下は軽度改善を認めた(MMT3レベル,握力5kg).Barthel Index(以下 BI) 20点で食事,整容動作は左手で実施していた.
【経過】ベッド上での座位保持が自立し,右上肢の筋力,握力改善が得られた101日目より義足着脱の練習を開始した.右上肢の筋力低下,手指の巧緻性低下が残存していたため右手の機能訓練は継続し,同時に直接訓練を実施した.まずは,シリコンライナー,断端袋,ソケット着脱の動作手順を確認し,動作工程に分けて失敗箇所を分析し,工程が少なかった義足を外す動作から開始した.装着動作は工程数,難易度を考慮しシリコンライナー,ソケット,断端袋の順に実施した.動作練習は,動作手順を統一するとともに誤りなし学習を進め,難渋する工程は反復的に練習した.
111日目に義足を外す動作が自立し,130日目にシリコンライナー,ソケットの装着が自立となった.しかし,断端袋の装着に難渋したため,139日目に補助具(ステップイン®)を導入し,145日目に全動作が自立となった.145日目の評価は,意識清明,右上肢の筋力低下は改善し(MMT4~5レベル,握力16.0kg),立ち上がり・立位・移乗は見守りとなり,BIは45点に改善を認めた.
【考察】義足の着脱動作は工程が多く複雑であり,種類により難易度が異なるが,本症例では着脱動作における工程分析と難易度の段階的な調整,補助具の検討により獲得に至ったと考えられる.移動を補完する義足の着脱動作の自立はADL動作の獲得において重要であり,作業療法士が積極的に介入する必要があると考える.
今回,右片麻痺が既往にある解離性大動脈瘤術後の症例を担当し,大腿義足の着脱動作にアプローチし,動作の再獲得に至ったため経過を報告する.本発表に際し症例に口頭で説明を行い書面で同意を得ている.
【症例紹介】50歳代の男性,右利き,BMI 27.3,術前ADLは自立.既往に慢性腎不全(透析導入),左被殻出血,多発脳梗塞,解離性大動脈瘤(胸部・胸腹部・腹部)など複数疾患を有していた.X-8年に右大腿動脈バイパス術が施行されたが血管閉塞による壊死に至り大腿切断となった.X年Y月Z日に胸部大動脈瘤に対する手術目的で当院入院し,Z+7日に弓部大動脈置換術,冠状動脈バイパス術(RCA#3)が施行され術後8日目に抜管となった. 15日目にOT開始となったが,18日目に肺塞栓症による心停止を来たし,人工呼吸器,体外式膜型人工心肺が装着となった.34日目に抜管したが,38日目に肺炎による無気肺を発症し気管切開術が施行され人工呼吸器再装着となった.39日目にOT再開,75日目に呼吸器離脱,101日目に気管カニューレ抜去となり,171日目に他院転院となった.
【OT評価】右大腿義足はシリコンライナー,断端袋(最厚),坐骨支持四辺形ソケット(懸垂用ベルト)を装着していた.
初期評価(術後15日目)は,意識清明,右上肢はBrunnstrom recovery stageⅤ-Ⅴ,MMT1~2レベル,握力13kg,左上肢は運動麻痺を認めず,MMT4~ 5レベル,握力15kgであった.再開時(39日目)は鎮静スケール(RASS)-1~-2,右上肢に筋力低下を認めた(MMT1~2レベル,握力<3kg).
義足の着脱練習を開始した101日目は,意識レベルGCS E4V5M6,右上肢の筋力低下は軽度改善を認めた(MMT3レベル,握力5kg).Barthel Index(以下 BI) 20点で食事,整容動作は左手で実施していた.
【経過】ベッド上での座位保持が自立し,右上肢の筋力,握力改善が得られた101日目より義足着脱の練習を開始した.右上肢の筋力低下,手指の巧緻性低下が残存していたため右手の機能訓練は継続し,同時に直接訓練を実施した.まずは,シリコンライナー,断端袋,ソケット着脱の動作手順を確認し,動作工程に分けて失敗箇所を分析し,工程が少なかった義足を外す動作から開始した.装着動作は工程数,難易度を考慮しシリコンライナー,ソケット,断端袋の順に実施した.動作練習は,動作手順を統一するとともに誤りなし学習を進め,難渋する工程は反復的に練習した.
111日目に義足を外す動作が自立し,130日目にシリコンライナー,ソケットの装着が自立となった.しかし,断端袋の装着に難渋したため,139日目に補助具(ステップイン®)を導入し,145日目に全動作が自立となった.145日目の評価は,意識清明,右上肢の筋力低下は改善し(MMT4~5レベル,握力16.0kg),立ち上がり・立位・移乗は見守りとなり,BIは45点に改善を認めた.
【考察】義足の着脱動作は工程が多く複雑であり,種類により難易度が異なるが,本症例では着脱動作における工程分析と難易度の段階的な調整,補助具の検討により獲得に至ったと考えられる.移動を補完する義足の着脱動作の自立はADL動作の獲得において重要であり,作業療法士が積極的に介入する必要があると考える.