第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

心大血管疾患

[PB-2] ポスター:心大血管疾患 2

2022年9月17日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PB-2-5] ポスター:心大血管疾患 2心疾患症例に対する至適運動強度に基づいた自己管理支援と1年後の経過について

阿部 真理奈1渡部 喬之2,3宮澤 僚1長尾 美咲1礒 良崇4 (1昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンター,2昭和大学横浜市北部病院リハビリテーション室,3昭和大学保健医療部作業療法学科,4藤が丘病院循環器内科)

【はじめに】
心不全診療において心臓リハビリテーション(以下,心リハ)は,心不全の増悪による再入院・QOL低下を予防するために必要な介入である.心リハでは,生活での作業や行為における運動強度を含めた自己管理の指導を中心とした運動指導・生活指導を行っている.我々は,心不全症例に対して,当院入院中から退院後まで自己管理支援を含めた生活指導を行った.退院後1年間のフォローアップができたため,その介入と経過を報告する.
【症例紹介】
70歳代男性.下壁の陳旧性心筋梗塞に伴う慢性心不全があり,左室駆出率(LVEF)は34%まで心機能低下を認めていた.3年前に初発心不全で入院した際に当院でのリハビリテーション歴あり.今回,慢性心不全急性増悪にて入院となり,さらなる心機能低下(LVEF23%)と頻発する心室性不整脈を認めた.突然死のリスクがあり,両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の適応であったが,手術の希望はなく,内服加療と自己管理支援および生活指導を目的に回復期心リハを導入する運びとなった.今回の入院前は,食事管理は徹底し,スクワットやウォーキングなどの運動習慣があり,週2回のボランティア活動を通して友人と交流していた.一方,運動習慣はあるもの心負荷を考慮した運動指導はなされていなかった.なお,本発表に際し,本人から口頭にて同意を得た.
【介入方法】
OT介入の目的:不整脈の再発リスクを軽減するために,生活動作における至適運動強度の理解と自己管理支援を実施した.OT介入の方法は,活動の負荷を見える化した症例専用活動表とカレンダー式自己管理表を作成した.入院前の活動をMETs表から選択し,必要項目のみで構成された活動表を作成した.心肺運動負荷試験の嫌気性代謝閾値(以下,AT)に基づいた至適運動強度を活動表に記載し,不整脈の再発リスクを考慮し,至適運動強度以下で生活するように指導した.自己管理支援では,至適運動強度を活動の上限とした活動時の時間と脈拍と1日の活動量を記録するように指導した.自己管理表では,介入時には,そのカレンダーを確認しながら指導した.心リハの期間と回数は,入院(17日)26回と外来(155日)の2回で,そのうち,OTの介入は入院:12回,外来1回であった.調査項目は,入院から退院後1年間の心機能,ADL自立度,活動量(歩数),運動耐容能および1年間の再入院の有無を調査した.
【結果】
退院1年後もFIMは維持され,社会参加としてのボランティア活動も継続できていた.また,入院中に指導した自己管理表を使用し,活動制限を遵守しながら1日5436±2876歩の活動量を維持していた.1年後の心機能悪化はなく(LVEF:25%),増悪による再入院は認めなかった.退院時と退院1年後の運動耐容能評価ではATの改善を認め,心不全も良好にコントロールされていた.
【考察】
本症例は低心機能であり,CRT-Dの適応であったが,手術を希望しなかった.そのため,突然死および心不全増悪を予防するために厳重な自己管理が必要であった.患者自身が至適運動強度を認識し,日常生活が過負荷にならないよう自己管理することで,QOLにも考慮した自立生活を継続しても退院後の心不全増悪を予防することに寄与したと考える.また,心不全症例において,日常生活の作業や行為が過負荷にならないような自己管理の指導に加えて,継続的支援は心不全増悪および再入院を予防する一助となる可能性がある.