[PC-2-4] ポスター:呼吸器疾患 2長期集中治療後,積極的作業療法介入によって日常生活動作自立に至った重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後患者の一例
【序論】新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)患者に対し,リハビリテーション専門職が機能維持・改善に関わることが推奨されているが,作業療法(以下,OT)介入における報告は少ない.今回,長期集中治療後の重症COVID-19後患者を担当し,日常生活動作(以下,ADL)全介助から自立へ至った症例を経験したため介入経過を報告する.報告にあたり,対象者本人に同意を取得した.
【事例紹介】60代女性,病前ADLは全自立.発熱を認めPCR検査にて陽性を確認.COVID-19と診断され前医へ入院後,当院へ転院搬送.転院後,呼吸状態の増悪を認め,第14病日に挿管・人工呼吸器管理となり,第16病日に理学療法介入が開始.第17病日に体外式膜型人工肺(以下,ECMO)装着,第36病日に気管切開を施行.第39病日にECMO離脱,第54病日に隔離解除.第60病日に人工呼吸器離脱し,第62病日より上肢機能・ADL改善目的にOT介入が開始.
【介入時評価】意識清明で簡易従命可能,せん妄・認知機能低下なし.胸部CT・レントゲン画像上,両側肺野陰影あり.安静時は酸素6L mask(33%AQP)で経皮的動脈血酸素飽和度(以下,SpO2)98%で安定.車椅子乗車での上肢軽労作時にSpO2 90%まで低下.身体機能はMedical Research Council (以下,MRC)スコア28点(上肢12点,下肢16点)でICU-acquired Weakness(以下,ICU-AW)の状態を呈していた.上肢機能は ROM(右/左)肩関節屈曲95°/110°,肘関節屈曲95°/125°,指腹手掌間距離6cm/6cmと制限あり.握力測定や巧緻動作の評価は困難で,食事動作や書字動作では振戦を認め非実用的であった.排尿は尿管管理,排便はベッド上.入浴は困難で清拭対応,更衣は全介助であり,ADLはBarthelIndex(以下,BI)0点.
【問題点とリスク管理】問題点として,①COVID-19発症後,肺実質の器質的または機能的変化,②ICUAW,③労作時の酸素化低下,④上肢機能低下,⑤食事動作能力の低下,⑥排泄動作能力の低下,⑦更衣・入浴動作能力の低下を挙げた.リスク管理として,労作による肺や筋への過負荷を避けるため,安静時・運動時のSpO2や心拍,血圧変動に注意した.
【介入経過】問題点①,②に対し上肢ROM訓練,低負荷の筋力強化訓練より開始. リスク管理と身体機能改善を両立するため,介入時間を1回20分とし,1日に複数回介入するよう工夫した.①,②の改善に伴い,筋力強化訓練は徐々に負荷量を増加し,筋力・筋持久力向上を促した.さらに,③,④,⑤に対し,机上での上肢機能訓練,食事・書字動作訓練を追加し,第66病日に食事動作が自立.机上レベルでのADLが改善後,⑥に対し立位耐久性向上訓練,立位バランス訓練,トイレ動作訓練を追加.しかし, 動作時に酸素1-3LnasalでSpO2 90%以上保持可能だが,呼吸困難を生じやすく,そのため呼吸同調性の動作方法やいきみ動作を防止した呼吸法を指導し,第74病日にトイレ動作が自立.⑦に対しては肩関節のROM訓練を強化し,第113病日に更衣動作・洗体動作が自立.
【最終評価】両側肺野陰影の改善あり. MRCスコア 52点(上肢28点,下肢24点)でICU-AW は改善.ROM(右/左)肩関節屈曲145°/135°,肘関節屈曲130°/145°, 指腹手掌間距離0cm/0cm.握力(右/左)10kg/8.6kg,巧緻動作は9Hole peg test(右/左) 20,80秒/22,57秒で筋力低下は残存するが実用手に改善した.ADLは労作時酸素1L nasal, SpO2 92-96%で呼吸苦なく,BI 100点へ向上.その後,手段的日常生活動作改善目的に第126病日に他院へ転院した.
【考察】本症例はCOVID-19発症後,呼吸器・ECMO管理による長期集中治療を余儀なくされ,OT介入時点ではICU-AWの状態にあった.肺や身体の病態に配慮し,適切にプログラムを展開したことで安全なADLの自立へ至ったと考えられる.
【事例紹介】60代女性,病前ADLは全自立.発熱を認めPCR検査にて陽性を確認.COVID-19と診断され前医へ入院後,当院へ転院搬送.転院後,呼吸状態の増悪を認め,第14病日に挿管・人工呼吸器管理となり,第16病日に理学療法介入が開始.第17病日に体外式膜型人工肺(以下,ECMO)装着,第36病日に気管切開を施行.第39病日にECMO離脱,第54病日に隔離解除.第60病日に人工呼吸器離脱し,第62病日より上肢機能・ADL改善目的にOT介入が開始.
【介入時評価】意識清明で簡易従命可能,せん妄・認知機能低下なし.胸部CT・レントゲン画像上,両側肺野陰影あり.安静時は酸素6L mask(33%AQP)で経皮的動脈血酸素飽和度(以下,SpO2)98%で安定.車椅子乗車での上肢軽労作時にSpO2 90%まで低下.身体機能はMedical Research Council (以下,MRC)スコア28点(上肢12点,下肢16点)でICU-acquired Weakness(以下,ICU-AW)の状態を呈していた.上肢機能は ROM(右/左)肩関節屈曲95°/110°,肘関節屈曲95°/125°,指腹手掌間距離6cm/6cmと制限あり.握力測定や巧緻動作の評価は困難で,食事動作や書字動作では振戦を認め非実用的であった.排尿は尿管管理,排便はベッド上.入浴は困難で清拭対応,更衣は全介助であり,ADLはBarthelIndex(以下,BI)0点.
【問題点とリスク管理】問題点として,①COVID-19発症後,肺実質の器質的または機能的変化,②ICUAW,③労作時の酸素化低下,④上肢機能低下,⑤食事動作能力の低下,⑥排泄動作能力の低下,⑦更衣・入浴動作能力の低下を挙げた.リスク管理として,労作による肺や筋への過負荷を避けるため,安静時・運動時のSpO2や心拍,血圧変動に注意した.
【介入経過】問題点①,②に対し上肢ROM訓練,低負荷の筋力強化訓練より開始. リスク管理と身体機能改善を両立するため,介入時間を1回20分とし,1日に複数回介入するよう工夫した.①,②の改善に伴い,筋力強化訓練は徐々に負荷量を増加し,筋力・筋持久力向上を促した.さらに,③,④,⑤に対し,机上での上肢機能訓練,食事・書字動作訓練を追加し,第66病日に食事動作が自立.机上レベルでのADLが改善後,⑥に対し立位耐久性向上訓練,立位バランス訓練,トイレ動作訓練を追加.しかし, 動作時に酸素1-3LnasalでSpO2 90%以上保持可能だが,呼吸困難を生じやすく,そのため呼吸同調性の動作方法やいきみ動作を防止した呼吸法を指導し,第74病日にトイレ動作が自立.⑦に対しては肩関節のROM訓練を強化し,第113病日に更衣動作・洗体動作が自立.
【最終評価】両側肺野陰影の改善あり. MRCスコア 52点(上肢28点,下肢24点)でICU-AW は改善.ROM(右/左)肩関節屈曲145°/135°,肘関節屈曲130°/145°, 指腹手掌間距離0cm/0cm.握力(右/左)10kg/8.6kg,巧緻動作は9Hole peg test(右/左) 20,80秒/22,57秒で筋力低下は残存するが実用手に改善した.ADLは労作時酸素1L nasal, SpO2 92-96%で呼吸苦なく,BI 100点へ向上.その後,手段的日常生活動作改善目的に第126病日に他院へ転院した.
【考察】本症例はCOVID-19発症後,呼吸器・ECMO管理による長期集中治療を余儀なくされ,OT介入時点ではICU-AWの状態にあった.肺や身体の病態に配慮し,適切にプログラムを展開したことで安全なADLの自立へ至ったと考えられる.