[PD-10-1] ポスター:運動器疾患 10重度の橈骨遠位端開放骨折を受傷したのち,復職まで至った事例の介入経過
【序論】今回,高エネルギー外傷により右橈骨遠位端開放骨折,右尺骨頭開放性脱臼,右尺骨茎状突起骨折を呈した症例に介入し仕事復帰まで至ったため,その介入経過を報告する.報告するにあたり,患者からは口頭にて同意を得た.
【症例】50代男性,地質検査の仕事をしており仕事中に機械に右上肢を巻き込み受傷した.ドクターヘリにて前院の救急病院に搬送され,受傷部位がGustilo分類のタイプ3Aであり同日に創外固定を施行した.翌週にプレート固定を行った.術後のプロトコルは2週間後から回外位で手関節の可動域訓練開始.4週目から制限無し.Push up,重量物の把持は骨癒合まで禁止であった.術後4週後に当院の外来リハビリテーションが開始した.介入頻度は週1回であった.
【評価】可動域は手関節掌屈30°背屈15°橈屈10°尺骨25°,前腕回内45°回外45°,示指屈曲MP関節60°PIP関節45°DIP関節20°であった.指尖手掌間距離(TPD)4cmだった.前腕〜手指に浮腫が観られ,8の字法で測定すると患側44cm健側41.5cmであった.前腕遠位掌側の術部と示指中手骨創外固定設置部では浅指屈筋腱・総指伸筋腱と皮膚の癒着がみられた.
【経過】初回介入時に,手関節可動域訓練と浮腫軽減のためにsix-Pack Exercisesを指導した.介入1週後では,手関節掌屈35°背屈35°でTPDが2cmまで変化したが,浮腫の程度に変化はみられなかった.そのため手背〜手指の浮腫改善を目的に交代浴の指導をした.また,軟部組織の柔軟性向上を目的にホットパックでの温熱療法を徒手療法介入前に実施した.介入2週後では,手関節掌屈40°背屈35°でTPDは2cm,8の字法では43cmであった.手関節背屈時に浅指屈筋腱の滑走不全が,示指屈曲時に総指伸筋腱の滑走不全がそれぞれみられたため,テーピングを用いての自動運動を自主トレーニングに追加した.介入4週後では,手関節掌屈50°背屈55°橈屈15°尺骨35°,前腕回内70°回外85°でTPDが1cmまで改善した.8の字法では42.5cmであった.握力は患側が12.5kgで健側比33%だった.上肢機能の評価として,Disabilities of the Arm,Shoulder and Hand:上肢障害評価表(DASH)を使用し40.5点であった.創部周囲の癒着に対して超音波治療を3MHz•1W/cm2の設定で開始した.介入8週後では,手関節掌屈50°背屈60°橈屈15°尺骨35°,前腕回内80°回外85°でTPDが0cmとなった.8の字法では42cmであった.握力は14.8kgで健側比44%だった.日常生活では大きな制限は無くなったため,復職に向け握力向上を目標に介入を継続した.
【結果】介入20週目で可動域は手関節掌屈55°背屈65°橈屈15°尺屈35°,前腕回内90°回外90°,示指屈曲MP関節70°PIP関節90°DIP関節40°で,TPDは0cmとなった.右手の浮腫も8の字法で41.7cmまで改善した.握力は患側が24.9kgで健側比71%まで向上した.DASHは7.7点まで改善した.復職も可能となり外来リハビリテーションを終了した.
【考察】本事例の手関節の機能制限因子として,手背の浮腫と創周囲の癒着が挙げられる.浮腫により手背と手指の皮膚が伸張され,手指の屈曲制限に影響したと考えた.また,創周囲の癒着により腱の滑走不全が生じていたと予想した.交代浴には血管の収縮と拡張の作用があり,循環障害の改善に作用し浮腫の軽減が図れたと考える.創周囲の癒着に関しては,テーピングを創の周囲を囲うように貼り付け関節の自動運動を行なう自主トレーニングを取り入れた.デビロービング損傷で用いる治療方法を癒着部の腱滑走に利用した.これら介入により手関節および手指の機能改善に至ったと考えた.
【症例】50代男性,地質検査の仕事をしており仕事中に機械に右上肢を巻き込み受傷した.ドクターヘリにて前院の救急病院に搬送され,受傷部位がGustilo分類のタイプ3Aであり同日に創外固定を施行した.翌週にプレート固定を行った.術後のプロトコルは2週間後から回外位で手関節の可動域訓練開始.4週目から制限無し.Push up,重量物の把持は骨癒合まで禁止であった.術後4週後に当院の外来リハビリテーションが開始した.介入頻度は週1回であった.
【評価】可動域は手関節掌屈30°背屈15°橈屈10°尺骨25°,前腕回内45°回外45°,示指屈曲MP関節60°PIP関節45°DIP関節20°であった.指尖手掌間距離(TPD)4cmだった.前腕〜手指に浮腫が観られ,8の字法で測定すると患側44cm健側41.5cmであった.前腕遠位掌側の術部と示指中手骨創外固定設置部では浅指屈筋腱・総指伸筋腱と皮膚の癒着がみられた.
【経過】初回介入時に,手関節可動域訓練と浮腫軽減のためにsix-Pack Exercisesを指導した.介入1週後では,手関節掌屈35°背屈35°でTPDが2cmまで変化したが,浮腫の程度に変化はみられなかった.そのため手背〜手指の浮腫改善を目的に交代浴の指導をした.また,軟部組織の柔軟性向上を目的にホットパックでの温熱療法を徒手療法介入前に実施した.介入2週後では,手関節掌屈40°背屈35°でTPDは2cm,8の字法では43cmであった.手関節背屈時に浅指屈筋腱の滑走不全が,示指屈曲時に総指伸筋腱の滑走不全がそれぞれみられたため,テーピングを用いての自動運動を自主トレーニングに追加した.介入4週後では,手関節掌屈50°背屈55°橈屈15°尺骨35°,前腕回内70°回外85°でTPDが1cmまで改善した.8の字法では42.5cmであった.握力は患側が12.5kgで健側比33%だった.上肢機能の評価として,Disabilities of the Arm,Shoulder and Hand:上肢障害評価表(DASH)を使用し40.5点であった.創部周囲の癒着に対して超音波治療を3MHz•1W/cm2の設定で開始した.介入8週後では,手関節掌屈50°背屈60°橈屈15°尺骨35°,前腕回内80°回外85°でTPDが0cmとなった.8の字法では42cmであった.握力は14.8kgで健側比44%だった.日常生活では大きな制限は無くなったため,復職に向け握力向上を目標に介入を継続した.
【結果】介入20週目で可動域は手関節掌屈55°背屈65°橈屈15°尺屈35°,前腕回内90°回外90°,示指屈曲MP関節70°PIP関節90°DIP関節40°で,TPDは0cmとなった.右手の浮腫も8の字法で41.7cmまで改善した.握力は患側が24.9kgで健側比71%まで向上した.DASHは7.7点まで改善した.復職も可能となり外来リハビリテーションを終了した.
【考察】本事例の手関節の機能制限因子として,手背の浮腫と創周囲の癒着が挙げられる.浮腫により手背と手指の皮膚が伸張され,手指の屈曲制限に影響したと考えた.また,創周囲の癒着により腱の滑走不全が生じていたと予想した.交代浴には血管の収縮と拡張の作用があり,循環障害の改善に作用し浮腫の軽減が図れたと考える.創周囲の癒着に関しては,テーピングを創の周囲を囲うように貼り付け関節の自動運動を行なう自主トレーニングを取り入れた.デビロービング損傷で用いる治療方法を癒着部の腱滑走に利用した.これら介入により手関節および手指の機能改善に至ったと考えた.