第56回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-2] ポスター:運動器疾患 2

Fri. Sep 16, 2022 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PD-2-3] ポスター:運動器疾患 2トイレ動作に対する恐怖心と羞恥心の消失により失禁が改善した症例~清拭動作を通した関わり~

幸野 聡1 (1蒲田リハビリテーション病院リハビリテーション科)

【はじめに】
中途障害を呈した対象者との関わりで,トイレ動作の獲得を望む声は多く聞かれ,在宅復帰を目指す上ではトイレ動作が大きく影響すると報告されている.今回,入院経過の中でトイレに対する,恐怖心と羞恥心により,排泄を我慢した結果,失禁を繰り返す症例を担当した.関わりの中で,清拭動作に着目したことで,段階的にできる動作の増加を認め,失禁消失とトイレ動作獲得に至ったため,ここに報告する.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき,本報告に対して説明と同意を行い,個人情報の取り扱いには配慮した.
【症例紹介】
A氏:80歳代(女性) 疾患名:胸髄症(Th9/10)後脊髄後方矯正固定術,右足関節骨折
既往歴:脊髄後側弯症矯正術,アルツハイマー型認知症 介護保険:要介護4
【初期評価】
MMT:上肢(R4L4) 下肢(R2L1) FIM:運動項目34点 認知項目18点 MMSE:19点 移動:平
行棒棒内両腋窩介助 トイレ動作:移乗2人介助,ズボンの上げ下ろし2人介助,清拭介助
COPM:遂行度3 重要度10 満足度3,主訴「トイレは怖くて誰かいないとダメなの何もできない」
【介入経過】
1. 恐怖心が強い時期(入院~1カ月)
①問題点:トイレ2人介助,恐怖心強く介護者に依存的 ②訓練内容:座位バランスex,起立ex,立位ex③変化点:座位保持・移乗・下衣引き下げ自立,恐怖心軽減,主訴「トイレが行けるようになりたい」
2.羞恥心が出現した時期(1カ月~2か月)
①問題点:下衣引き上げ・清拭介助,男性へのトイレ介助拒否出現,失禁増加 ②訓練内容:体幹機能,立位での上肢リーチex,長柄ブラシでの清拭動作定着 ③変化点:下衣引け上げ自立,清拭時左臀部の挙上可能,男性への介助拒否増加,失禁パット隠蔽,主訴「トイレが見られるの恥ずかしい」
3.恐怖心,羞恥心が軽減した時期(2カ月~2.5カ月)
①問題点:清拭時に左臀部挙上するも左手が陰部に届かない ②訓練内容:左肩関節のROMex,不平地で座位上肢リーチex ③変化点:清拭自立によるトイレ内動作自立,男性へのトイレ介助拒否減少,失禁減少,パットの隠蔽消失,主訴「トイレ自分で行ける」,「もう付いて来なくても大丈夫よ」
4.恐怖心,羞恥心が消失した時期(2.5カ月~退院)
①問題点:トイレ移動見守り ②訓練内容:立位バランスex,Pick up walkerでのトイレドア開閉ex③変化点:移動Pick up walker自立,男性へのトイレ介助拒否消失,失禁消失,活動量向上
【最終評価】
MMT:上肢(R4L4) 下肢(R2L3) FIM:運動項目66点 認知項目22点 MMSE20点 移動:Pickup walker自立 トイレ動作:手すり使用し自立 COPM:遂行度10 重要度10 満足8,主訴「トイレはもう何も使わずに行けるよ」
【考察】
A氏は清拭に強い羞恥心を感じ,トイレを我慢していたことが失禁に繋がっていた.排泄という行為に対し,羞恥心の対象と成り得るものは,①排泄している姿を見られること, ②排泄に際して露出される性器および肛門を見られること,③排泄された物を見られることの3つであると報告している.今回,トイレに対して清拭時の羞恥心の減少,身体機能改善によるできる動作の増加が,失禁消失や活動量の増加に至ったと考える.