[PD-2-5] ポスター:運動器疾患 2当院における母指CM関節症第一中手骨楔状骨切り術後ハンドセラピィプロトコルの検討と課題
【緒言】母指CM関節症は病期が進むと中手骨が内転変形を来たし,靱帯再建術,関節固定術,大菱形骨切除術,そして骨切り術等が年齢や活動性,病期を考慮された上で選択される.第一中手骨基部外転対立楔状骨切り術(abduction-opposition wedge osteotomy;AOO)は楔状骨切りしたのち,30度外転・対立位で固定するという簡便な術式である.本邦では1991年にFutamiらにより報告され,追試および変法含め良好な成績を残すとされているが,術後セラピィに関する報告は我々が渉猟する限り少ない.本研究の目的は,当院における母指CM関節症のAOOによる術後成績をまとめ,当院プロトコルの効果と課題を検討することである.
【対象・方法】対象は2020年4月以降に当院にてAOOが施行された10例10指とした.平均年齢64.14(50-80)歳,男性4例女性6例,術側は右手3例左手7例,Eaton stageはStageⅡが4例,Ⅲが6例であった.楔状骨切り後の固定には全例Tension Band wiringが行われた.術後プロトコルは,術後シーネ装着,術後10日程度までに長母指対立Splintを作成ののち終日装着,MP/IP関節の可動域訓練を開始した.術後3週経過で短母指対立Splintへ変更して適宜装着とし,母指CM関節可動域訓練を開始.重作業は術後3ヶ月程度より許可とした.調査項目は術前およびセラピィ終了時のKey pinch力,握力,疼痛(VAS),Quick-DASH機能障害/症状スコア,可動域(欠損が多いため終了時のみ),セラピィ期間,術後合併症とした.各項目を手術前後で対応のあるt検定もしくはウィルコクソン検定にて比較した.統計処理にはR4.0.2(CRAN,freeware)を使用し,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】本研究の対象者には文書にて説明,同意を得た上で筆頭演者所属施設倫理委員会承認の下行われた.
【 結 果 】 Key pinch 力は術前 4.39±1.40kg/ 終了時 2.76±1.08kg(p=0.02) , 握力は 19.49±6.71kg/18.85±7.05kg(p=0.31),VASは62.22±19.31mm/26.67±10.54mm(p=0.01),Quick DASHは40.63±21.00/38.64±26.63(p=0.69)であった.終了時の母指可動域は,CM関節の掌側外転50.83±11.70°,橈側外転48.33±15.72°,MP関節屈曲42.13±12.00°,IP関節屈曲56.63±10.72°,セラピィ期間は90.6(35-149)日,術後合併症は1例pinのBack outが見られたものの,骨癒合等に影響はなかった.
【考察】本調査の中では,疼痛は有意に改善したもののPinch力は低下していた.また,Quick-DASHにおいて有意な改善は見られず,可動域制限も残存がみられる傾向にあった.これは抜釘までの3から5ヶ月程度で全例がセラピィを終了しており,抜釘後から数年を設けている諸家の報告と比較し観察期間が短いことが要因として考えられ,本研究においても観察期間の長い症例は比較的良好な機能を有していた.当院プロトコルでは癒合不全等の術後合併症を防ぐだけでなく,疼痛をなるべく忌避することを念頭にシーネおよびSplintの装用期間を長く設定している.しかし近年では,固定期間は2週のみでその後はADL上でも制限を設けない報告もあり,固定期間の短縮や,より術後早期からADLを制限なく使用できる様Splintingを工夫し,可動性および筋力の早期回復に努める必要があると思われた.
【結論】AOO術後において疼痛は比較的早期に改善するものの機能回復には一定の期間を要し,術後早期におけるセラピィの工夫が必要である.
【対象・方法】対象は2020年4月以降に当院にてAOOが施行された10例10指とした.平均年齢64.14(50-80)歳,男性4例女性6例,術側は右手3例左手7例,Eaton stageはStageⅡが4例,Ⅲが6例であった.楔状骨切り後の固定には全例Tension Band wiringが行われた.術後プロトコルは,術後シーネ装着,術後10日程度までに長母指対立Splintを作成ののち終日装着,MP/IP関節の可動域訓練を開始した.術後3週経過で短母指対立Splintへ変更して適宜装着とし,母指CM関節可動域訓練を開始.重作業は術後3ヶ月程度より許可とした.調査項目は術前およびセラピィ終了時のKey pinch力,握力,疼痛(VAS),Quick-DASH機能障害/症状スコア,可動域(欠損が多いため終了時のみ),セラピィ期間,術後合併症とした.各項目を手術前後で対応のあるt検定もしくはウィルコクソン検定にて比較した.統計処理にはR4.0.2(CRAN,freeware)を使用し,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】本研究の対象者には文書にて説明,同意を得た上で筆頭演者所属施設倫理委員会承認の下行われた.
【 結 果 】 Key pinch 力は術前 4.39±1.40kg/ 終了時 2.76±1.08kg(p=0.02) , 握力は 19.49±6.71kg/18.85±7.05kg(p=0.31),VASは62.22±19.31mm/26.67±10.54mm(p=0.01),Quick DASHは40.63±21.00/38.64±26.63(p=0.69)であった.終了時の母指可動域は,CM関節の掌側外転50.83±11.70°,橈側外転48.33±15.72°,MP関節屈曲42.13±12.00°,IP関節屈曲56.63±10.72°,セラピィ期間は90.6(35-149)日,術後合併症は1例pinのBack outが見られたものの,骨癒合等に影響はなかった.
【考察】本調査の中では,疼痛は有意に改善したもののPinch力は低下していた.また,Quick-DASHにおいて有意な改善は見られず,可動域制限も残存がみられる傾向にあった.これは抜釘までの3から5ヶ月程度で全例がセラピィを終了しており,抜釘後から数年を設けている諸家の報告と比較し観察期間が短いことが要因として考えられ,本研究においても観察期間の長い症例は比較的良好な機能を有していた.当院プロトコルでは癒合不全等の術後合併症を防ぐだけでなく,疼痛をなるべく忌避することを念頭にシーネおよびSplintの装用期間を長く設定している.しかし近年では,固定期間は2週のみでその後はADL上でも制限を設けない報告もあり,固定期間の短縮や,より術後早期からADLを制限なく使用できる様Splintingを工夫し,可動性および筋力の早期回復に努める必要があると思われた.
【結論】AOO術後において疼痛は比較的早期に改善するものの機能回復には一定の期間を要し,術後早期におけるセラピィの工夫が必要である.