[PD-3-6] ポスター:運動器疾患 3整形外科疾患患者における公共交通機関利用に必要な諸動作の難易度
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)を退院後,地域で生活する者にとって公共交通機関の利用は生活範囲の拡大をもたらす.公共交通機関の利用自立を目指した練習は有効であると考えられており(澤田ら,2014),本邦の57%の回復期病棟で実施されている(小川ら,2014).当院では,独自に開発したPublic Transportation use Assessment Form(PTAF)を利用して,患者の公共交通機関を利用する能力を評価している.我々は当院で過去に行われた公共交通機関利用練習におけるPTAFの評価結果を分析し,脳卒中者が公共交通機関を利用する際に難易度が高い項目を明らかにした(Kitamura et al, 2019).しかし,回復期病棟において脳卒中に次ぐ主要な疾患である整形外科疾患患者では,難易度は明らかになっていない.
【目的】本研究では,整形外科疾患患者が公共交通機関を利用する際にどのような動作工程が困難であるかを明らかにすることを目的とする.
【対象・方法】2016年12月〜2020年1月の間に回復期病棟である当院へ入院し,入院中に公共交通機関の利用練習を実施した整形外科疾患患者を対象にPTAFの評価結果を後方視的に分析した.当院の公共交通機関の利用練習は,①電車とバスを利用する(電車とバス),②電車のみを利用する(電車のみ),③バスのみを利用する,の3種類が設定されている.患者ごとの退院後の必要性や希望に応じて1つのコースを選択し,療法士が付き添いのもと実施している.PTAFは公共交通機関を利用する際の動作工程を14項目に細分化して評価するツールであり,各工程の自立度を「3:自立」,「2:監視・声かけ」,「1:介助」の3段階で評価し,練習の際に必要のない工程は「N:必要がない」と評価する.本研究では,各項目において「3:自立」と判定された患者の割合が低い項目を難易度が高いと定義した.本研究は当院倫理審査会の承認を得て実施した(承認番号271-2).
【結果】本研究の基準を満たした整形外科疾患患者72名を分析対象とした.対象の内訳は男性18名,女性54名,平均年齢74.4歳(標準偏差:11.7歳),Functional Independence Measureの中央値(四分位範囲)は運動項目85(7)点,認知項目35(3.2)点,Mini-Mental State Examinationは29(2)点,Berg Balance Scaleは53(5)点,10m歩行テストの平均値は10.4秒(標準偏差:2.1秒)だった.疾患の内訳は大腿骨近位部骨折は43名,胸・腰椎圧迫骨折は15名,人工膝関節置換手術後は4名,骨盤骨折は3名,その他は7名だった.実施したコースの内訳は「電車とバス」が60名,「電車のみ」が11名,「バスのみ」が1名だった.公共交通機関を利用する際に最も難易度が高かった動作項目は「人混みの歩行」であり,「3:自立」と判定された者の割合は61.6%であった.次いで,難易度が高い項目は「電車内の移動」で74.7%,「長時間の移動」で76.7%,「バス内の移動」で78.7%,「電車の乗降車」で80.3%であった.
【考察】整形外科疾患患者が公共交通機関を利用する際に最も難易度の高い項目は「人混みの歩行」であり,この結果は脳卒中患者を対象とした分析(Kitamura et al, 2019)と共通していた.「人混みの歩行」は周囲の環境への依存が強く,環境が限定される病院内のリハビリテーションでは評価や介入が不十分な可能性がある.一方で,「電車内の移動」や「バス内の移動」,「長時間の移動」などの歩行関連動作は,脳卒中患者においては比較的難易度は低く(Kitamura et al, 2019),本研究とは異なる結果であった.疾患で共通して難易度が高い動作と,疾患ごとに異なる難易度を有する動作を明らかにしたうえで,介入の戦略を立案することが重要であると考える.
【目的】本研究では,整形外科疾患患者が公共交通機関を利用する際にどのような動作工程が困難であるかを明らかにすることを目的とする.
【対象・方法】2016年12月〜2020年1月の間に回復期病棟である当院へ入院し,入院中に公共交通機関の利用練習を実施した整形外科疾患患者を対象にPTAFの評価結果を後方視的に分析した.当院の公共交通機関の利用練習は,①電車とバスを利用する(電車とバス),②電車のみを利用する(電車のみ),③バスのみを利用する,の3種類が設定されている.患者ごとの退院後の必要性や希望に応じて1つのコースを選択し,療法士が付き添いのもと実施している.PTAFは公共交通機関を利用する際の動作工程を14項目に細分化して評価するツールであり,各工程の自立度を「3:自立」,「2:監視・声かけ」,「1:介助」の3段階で評価し,練習の際に必要のない工程は「N:必要がない」と評価する.本研究では,各項目において「3:自立」と判定された患者の割合が低い項目を難易度が高いと定義した.本研究は当院倫理審査会の承認を得て実施した(承認番号271-2).
【結果】本研究の基準を満たした整形外科疾患患者72名を分析対象とした.対象の内訳は男性18名,女性54名,平均年齢74.4歳(標準偏差:11.7歳),Functional Independence Measureの中央値(四分位範囲)は運動項目85(7)点,認知項目35(3.2)点,Mini-Mental State Examinationは29(2)点,Berg Balance Scaleは53(5)点,10m歩行テストの平均値は10.4秒(標準偏差:2.1秒)だった.疾患の内訳は大腿骨近位部骨折は43名,胸・腰椎圧迫骨折は15名,人工膝関節置換手術後は4名,骨盤骨折は3名,その他は7名だった.実施したコースの内訳は「電車とバス」が60名,「電車のみ」が11名,「バスのみ」が1名だった.公共交通機関を利用する際に最も難易度が高かった動作項目は「人混みの歩行」であり,「3:自立」と判定された者の割合は61.6%であった.次いで,難易度が高い項目は「電車内の移動」で74.7%,「長時間の移動」で76.7%,「バス内の移動」で78.7%,「電車の乗降車」で80.3%であった.
【考察】整形外科疾患患者が公共交通機関を利用する際に最も難易度の高い項目は「人混みの歩行」であり,この結果は脳卒中患者を対象とした分析(Kitamura et al, 2019)と共通していた.「人混みの歩行」は周囲の環境への依存が強く,環境が限定される病院内のリハビリテーションでは評価や介入が不十分な可能性がある.一方で,「電車内の移動」や「バス内の移動」,「長時間の移動」などの歩行関連動作は,脳卒中患者においては比較的難易度は低く(Kitamura et al, 2019),本研究とは異なる結果であった.疾患で共通して難易度が高い動作と,疾患ごとに異なる難易度を有する動作を明らかにしたうえで,介入の戦略を立案することが重要であると考える.