[PD-4-1] ポスター:運動器疾患 4目標活動の明確化により在宅生活に至った多発性末梢神経障害の症例~全身筋力低下・症状進行・不安への対応~
【はじめに】多発性末梢神経障害による四肢頸体幹筋力低下,不安,ADL障害を来たした症例に,身体・精神・環境を念頭に目標活動の明確化・共有を徹底してアプローチし,在宅生活に至ったので報告する.尚,発表に際し本人に説明し同意を得た.
【症例】女性60代,主婦.右顔面神経麻痺発症,2ヵ月後筋力低下・感覚障害・ADL障害にてA病院入院,運動神経優位の軸索型ニューロパチー所見あり多発性末梢神経障害とされたが確定診断には至らなかった.不安が強く18日後精神科に入院したが環境や極力介助しない対応に不安が増強し5日後退院,B病院入院しPT1ヵ月実施後OTに変更したが,在宅へのリハビリテーション希望し発症約6ヵ月後当院に入院した.医師は治療での症状改善困難や進行の可能性,自宅は階段(昇降機設置不可)のため生活の場の検討が必要と家族に説明した.
評価)筋力:MMT上肢1-3⁺頸体幹1-2下肢2-3⁺,握力右/左3.0/2.0kg,感覚:手掌足底鈍麻,精神:日常の出来事等の想起可能,不安による入院生活等への支障はないが介助依頼について病棟職員に依存的と捉えられることがあった.ADL:食事・整容準備にて可,他介助,端座位:僅かな傾きでも保持不可.日中独居・居住2階のため排泄自立と移動手段獲得必須,料理可能も要望された.
【方法】筋力強化・基本動作訓練:開始~)著明な筋力低下,強化の要望とそれによるADL改善の期待や病前と異なる方法への躊躇を考慮し,筋力強化と排泄の基本動作訓練から実施した.
ADL訓練:37日~)地域包括ケア病棟転棟・再評価にて筋力・基本動作の改善が僅かのため,これまでの訓練に加え現状でのADL訓練も必要と説明し同意を得た.排泄:基本動作・姿勢保持の状態と症状進行を考慮し,臥位と立位の2種の方法で下衣操作の習得を目指した.各々について手順を活動分析と試行により明確化し,教示による遂行,自己教示での習得をシングルシステムデザイン基準移動型に準じて行った.病棟実践には,習得に合わせ病棟職員の対応法を実演と口頭で説明し書面を自室に貼付,さらに不安や介助依頼等による困難さの把握とそれに合わせた説明を継続した.更衣:自助具作製・紹介と使用訓練,車椅子操作:自宅環境に合わせた駆動・方向転換等,調理:机上での調理及び用具紹介・試用,自宅環境での実施のため介護支援専門員に訪問OTを依頼した.
訪問指導:50,88日)排泄習得の経過から在宅生活への可能性が出てきた時点で,ADL・移動等に環境に合わせたアプローチ計画・福祉用具検討と確認を行った.そして再度退院前に福祉用具試用による指導・確認とさらに外泊での確認により,改修及び用具購入・レンタルや介助法等を決定した.
【結果】MMT上肢1-3⁺頸体幹2下肢2⁺-5,握力2.5/2.5,感覚:鈍麻軽減,精神:本人の想定と異なることへの不安の発言減少やADLの病棟実践や介助依頼が習得に相応して可能,前医までの抗うつ薬も内服されなかった.ADL:排泄・更衣・車椅子操作自立,入浴(シャワー)・階段1人介助,料理一部介助可となり,これらについて情報提供書を作成し自宅退院となった.
【考察】原因が明確でなく確定診断や改善困難,症状進行,さらに在宅生活を望みながらもその可能性を実感できない状態において,不安が生じることは容易に推測される.今回,機能や予後・精神状態を考慮し,まず本人の要望を主体としたアプローチから行い関係作りに努めた.その上で在宅に必要な活動目標の共有,方法の明確化による活動獲得がなされ要望に応えられた.そして,このような成功体験の蓄積が不安軽減につながったと考えられた.このことは「状態を把握し,作業活動を分析し,目標とし,共有・協同する」という作業療法・リハビリテーションの基本的な実践によるものと考えられる.
【症例】女性60代,主婦.右顔面神経麻痺発症,2ヵ月後筋力低下・感覚障害・ADL障害にてA病院入院,運動神経優位の軸索型ニューロパチー所見あり多発性末梢神経障害とされたが確定診断には至らなかった.不安が強く18日後精神科に入院したが環境や極力介助しない対応に不安が増強し5日後退院,B病院入院しPT1ヵ月実施後OTに変更したが,在宅へのリハビリテーション希望し発症約6ヵ月後当院に入院した.医師は治療での症状改善困難や進行の可能性,自宅は階段(昇降機設置不可)のため生活の場の検討が必要と家族に説明した.
評価)筋力:MMT上肢1-3⁺頸体幹1-2下肢2-3⁺,握力右/左3.0/2.0kg,感覚:手掌足底鈍麻,精神:日常の出来事等の想起可能,不安による入院生活等への支障はないが介助依頼について病棟職員に依存的と捉えられることがあった.ADL:食事・整容準備にて可,他介助,端座位:僅かな傾きでも保持不可.日中独居・居住2階のため排泄自立と移動手段獲得必須,料理可能も要望された.
【方法】筋力強化・基本動作訓練:開始~)著明な筋力低下,強化の要望とそれによるADL改善の期待や病前と異なる方法への躊躇を考慮し,筋力強化と排泄の基本動作訓練から実施した.
ADL訓練:37日~)地域包括ケア病棟転棟・再評価にて筋力・基本動作の改善が僅かのため,これまでの訓練に加え現状でのADL訓練も必要と説明し同意を得た.排泄:基本動作・姿勢保持の状態と症状進行を考慮し,臥位と立位の2種の方法で下衣操作の習得を目指した.各々について手順を活動分析と試行により明確化し,教示による遂行,自己教示での習得をシングルシステムデザイン基準移動型に準じて行った.病棟実践には,習得に合わせ病棟職員の対応法を実演と口頭で説明し書面を自室に貼付,さらに不安や介助依頼等による困難さの把握とそれに合わせた説明を継続した.更衣:自助具作製・紹介と使用訓練,車椅子操作:自宅環境に合わせた駆動・方向転換等,調理:机上での調理及び用具紹介・試用,自宅環境での実施のため介護支援専門員に訪問OTを依頼した.
訪問指導:50,88日)排泄習得の経過から在宅生活への可能性が出てきた時点で,ADL・移動等に環境に合わせたアプローチ計画・福祉用具検討と確認を行った.そして再度退院前に福祉用具試用による指導・確認とさらに外泊での確認により,改修及び用具購入・レンタルや介助法等を決定した.
【結果】MMT上肢1-3⁺頸体幹2下肢2⁺-5,握力2.5/2.5,感覚:鈍麻軽減,精神:本人の想定と異なることへの不安の発言減少やADLの病棟実践や介助依頼が習得に相応して可能,前医までの抗うつ薬も内服されなかった.ADL:排泄・更衣・車椅子操作自立,入浴(シャワー)・階段1人介助,料理一部介助可となり,これらについて情報提供書を作成し自宅退院となった.
【考察】原因が明確でなく確定診断や改善困難,症状進行,さらに在宅生活を望みながらもその可能性を実感できない状態において,不安が生じることは容易に推測される.今回,機能や予後・精神状態を考慮し,まず本人の要望を主体としたアプローチから行い関係作りに努めた.その上で在宅に必要な活動目標の共有,方法の明確化による活動獲得がなされ要望に応えられた.そして,このような成功体験の蓄積が不安軽減につながったと考えられた.このことは「状態を把握し,作業活動を分析し,目標とし,共有・協同する」という作業療法・リハビリテーションの基本的な実践によるものと考えられる.