第56回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-4] ポスター:運動器疾患 4

Fri. Sep 16, 2022 3:00 PM - 4:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PD-4-2] ポスター:運動器疾患 4「何もできない」と消極的な事例が作業活動を通して意欲向上し新たな目標の構築ができた一例

越後 有希那1高橋 智昭1 (1登別すずらん病院リハビリテーション科)

【はじめに】今回,既往に関節リウマチを呈した事例を担当.「こんな体だから何もできない」と消極的な事例に対し,病前より得意としていた掃除を訓練場面に取り入れ介入.活動の導入後から意欲向上し,新たな目標に向けた作業療法介入に至ったため介入経過及び考察を以下に報告する.
【事例紹介】80歳代女性.間質性肺炎により経鼻カニューレ安静時1.0L,動作時2.0Lで酸素管理中.SpO2は安静時98%,動作後92~94%まで低下するが休息約2分でリカバリーする.既往の関節リウマチは約30年前から罹患しており,両肘関節人口関節置換術,左手関節固定術施行済み.右手指第4~5指PIP屈曲拘縮,左手指第2~5指で尺側変形している.下肢は右膝関節人口置換術,左足関節固定術実施済み.在宅HOT導入し夫と生活していたが,介助量の増加により在宅生活困難となり転帰先検討のため当院入院となる.尚,本報告に際し本人に説明行い同意得られている.
【作業療法評価】スタインブロッカー分類はstageⅣ.左肩関節屈曲20°,外転55°で疼痛あり.右肩関節は屈曲,外転115°自動運動可能で,右上肢リーチは頭頂部から後頭部までリーチ動作可能.FIMは69/126点.起居移乗動作は軽介助レベル.移動手段は車椅子全介助.歩行器歩行軽介助で約20m移動可能.初回面接時より「こんな体だから何もできない」と消極的な発言が頻回.Vitalite Index6/10点.興味関心チェックリストでは家事の項目で「してみたい」と回答.特に掃除が得意という語りが聞かれ,在宅生活時はテーブル拭きの役割があった.
【介入経過・結果】興味関心チェックリストの結果から本人の得意な掃除に着目し導入.介入当初は訓練で使用した物品やテーブルの拭き取りを依頼していたが「できないと思う.」と消極的な発言聞かれた.無理のない範囲で本人と一緒に掃除に取り組み,介入時は感謝や肯定的な声掛けを意識した.介入中期では,事例の掃除場面を見た他スタッフからの賞賛をきっかけに,徐々に「次は何をやる?」と自発的な発言が聞かれるようになった.残存する左肩関節疼痛のため定期的な掃除は実施できていないが,介入後期では一部訓練室やスタッフルームの掃除が本人の役割となりVitalite Indexは10/10点.さらにこの時期本人より「トイレに歩いて行きたい.」と新たな目標が語られ,本人との合意目標として作業療法介入することとなった.
【考察】関節リウマチを呈する患者の多くは「趣味・娯楽の制限」「病気の悪化・進行」「日常生活動作の低下」に対する不安を抱えているとされている.事例は日常生活動作の制限や介助量増加の背景から,消極的な発言に繋がっていたと考えられる.作業療法介入では諦めていた掃除の活動に取り組み,他者からの賞賛を得られた経験を通して意欲向上が認められ,役割の獲得や新たな目標に向けた介入に結び付けることができた.
【引用文献】堀川 新二:壮年期以降の関節リウマチ患者の生きがい感に影響を及ぼす要因に関する研究.日本看護運動器学会誌,Vol.9,p30-37.2014