[PD-4-3] ポスター:運動器疾患 4良好なROMが獲得された肘関節Terrible triad injuryの一例
【はじめに】
肘関節の安定性は内外側側副靭帯と腕尺関節の骨性構造,および動的制御機構である関節周囲筋によって保たれる.肘関節terrible triad injury(以下:TTI)は,肘関節後方脱臼に橈骨頭骨折・尺骨鉤状突起骨折を伴う再建の難しい不安定型損傷である.手術治療とリハビリテーション介入により,比較的良好な肘関節機能を獲得できたため報告する.なお,発表に際し,患者より同意を得ている.
【症例・現病歴】
80歳代女性,右利き,主婦.屋外で段差に躓き転倒し受傷.右肘関節後方脱臼,右尺骨近位端骨折,右尺骨鉤状突起骨折(Regan-Morry分類typeⅠ),右橈骨頭粉砕骨折(Mason分類typeⅣ),右肘関節外側側副靭帯損傷と診断.受傷4日後に,尺骨近位端骨折,鉤状突起骨折に対して骨接合術,外側側副靭帯損傷に対して靭帯縫合術,橈骨頭粉砕骨折に対して人工骨頭挿入術が施行された.術中ROMは肘関節屈曲130°,伸展0°での脱臼や,内反・外反ストレスでの動揺性は無く安定していた.
【治療】
術後翌日から主治医より肘関節伸展-30°,前腕回内・回外制限指示のもと作業療法を開始した.疼痛は,肘関節周囲に安静時NRS1,運動時NRS2であり,神経症状は認めなかった.肘関節周囲に腫脹を生じており,ROM(Rt/Lt)は肘関節屈曲110°/140°,伸展-60°/0°であった.対浮腫療法として挙上,クーリング,手指自動運動を徹底し,ROMexは肘関節の内外反に注意し前腕中間位で自動介助運動を行った.また,手関節・肩関節といった患部外の拘縮予防目的での自動運動を行った.術後1週で渦流浴を追加,肘関節周囲の腫脹が軽減したため,肘関節保護用splintを作成し,肘関節の自動介助運動を自主訓練として指導した.自主訓練には意欲的であり,注意点を遵守できていた.リハビリテーション介入を含めて,1日3-4セット実施した.術後3週で自宅退院し,外来リハビリテーションを開始した.肘関節伸展,前腕回内・回外制限を解除し,splintは屋内フリー,移動時・夜間のみ使用とした.段階的に肘関節・前腕筋群の筋力訓練を開始した.術後8週より持続伸張を追加し,splintは屋外で人と衝突する危険がある場合のみ使用とした.術後12週よりADL制限が解除となり,強度な他動運動や運動負荷を上げた訓練を開始した.外来リハビリテーション開始後も,自主練習を1日3回実施できていた.
【結果】
OT終了時(術後18週),疼痛は安静時NRS0,動作時NRS2であり,ROM(患側)は肘関節屈曲135°,伸展-5°,前腕回内80°,回外85°,握力(Rt/Lt)は13.0kg/20.0kgであった.経過中に異所性骨化など二次的合併症は認めなかった.ニーズである家事動作は自立した.
【考察】
TTIでは,組織の修復過程で高度な腫脹が術後に生じ,周辺組織の癒着・瘢痕化により拘縮に陥りやすく,Papatheodorouらは,術後の肘関節の動揺性について,術後3〜4週間は肘関節の伸展と前腕回外を同時に行う肢位では亜脱臼に注意が必要と述べている.術後平均ROMは肘関節屈曲133°,伸展-10°とする報告がある.
本症例は,術後早期から腫脹軽減に努めるとともに,肘関節の安定性を考慮し,内外反に注意してROMexを開始したこと,動的制御機構である前腕筋群を含む肘関節周囲筋の筋力訓練を行うことで肘関節の安定性が向上し,良好な治療成績を得られたと推察する.また,患者のコンプライアンスが良好で,自主練習に意欲的であり,高頻度のROMexを継続できたことが治療成績に反映されたと推察する.
肘関節の安定性は内外側側副靭帯と腕尺関節の骨性構造,および動的制御機構である関節周囲筋によって保たれる.肘関節terrible triad injury(以下:TTI)は,肘関節後方脱臼に橈骨頭骨折・尺骨鉤状突起骨折を伴う再建の難しい不安定型損傷である.手術治療とリハビリテーション介入により,比較的良好な肘関節機能を獲得できたため報告する.なお,発表に際し,患者より同意を得ている.
【症例・現病歴】
80歳代女性,右利き,主婦.屋外で段差に躓き転倒し受傷.右肘関節後方脱臼,右尺骨近位端骨折,右尺骨鉤状突起骨折(Regan-Morry分類typeⅠ),右橈骨頭粉砕骨折(Mason分類typeⅣ),右肘関節外側側副靭帯損傷と診断.受傷4日後に,尺骨近位端骨折,鉤状突起骨折に対して骨接合術,外側側副靭帯損傷に対して靭帯縫合術,橈骨頭粉砕骨折に対して人工骨頭挿入術が施行された.術中ROMは肘関節屈曲130°,伸展0°での脱臼や,内反・外反ストレスでの動揺性は無く安定していた.
【治療】
術後翌日から主治医より肘関節伸展-30°,前腕回内・回外制限指示のもと作業療法を開始した.疼痛は,肘関節周囲に安静時NRS1,運動時NRS2であり,神経症状は認めなかった.肘関節周囲に腫脹を生じており,ROM(Rt/Lt)は肘関節屈曲110°/140°,伸展-60°/0°であった.対浮腫療法として挙上,クーリング,手指自動運動を徹底し,ROMexは肘関節の内外反に注意し前腕中間位で自動介助運動を行った.また,手関節・肩関節といった患部外の拘縮予防目的での自動運動を行った.術後1週で渦流浴を追加,肘関節周囲の腫脹が軽減したため,肘関節保護用splintを作成し,肘関節の自動介助運動を自主訓練として指導した.自主訓練には意欲的であり,注意点を遵守できていた.リハビリテーション介入を含めて,1日3-4セット実施した.術後3週で自宅退院し,外来リハビリテーションを開始した.肘関節伸展,前腕回内・回外制限を解除し,splintは屋内フリー,移動時・夜間のみ使用とした.段階的に肘関節・前腕筋群の筋力訓練を開始した.術後8週より持続伸張を追加し,splintは屋外で人と衝突する危険がある場合のみ使用とした.術後12週よりADL制限が解除となり,強度な他動運動や運動負荷を上げた訓練を開始した.外来リハビリテーション開始後も,自主練習を1日3回実施できていた.
【結果】
OT終了時(術後18週),疼痛は安静時NRS0,動作時NRS2であり,ROM(患側)は肘関節屈曲135°,伸展-5°,前腕回内80°,回外85°,握力(Rt/Lt)は13.0kg/20.0kgであった.経過中に異所性骨化など二次的合併症は認めなかった.ニーズである家事動作は自立した.
【考察】
TTIでは,組織の修復過程で高度な腫脹が術後に生じ,周辺組織の癒着・瘢痕化により拘縮に陥りやすく,Papatheodorouらは,術後の肘関節の動揺性について,術後3〜4週間は肘関節の伸展と前腕回外を同時に行う肢位では亜脱臼に注意が必要と述べている.術後平均ROMは肘関節屈曲133°,伸展-10°とする報告がある.
本症例は,術後早期から腫脹軽減に努めるとともに,肘関節の安定性を考慮し,内外反に注意してROMexを開始したこと,動的制御機構である前腕筋群を含む肘関節周囲筋の筋力訓練を行うことで肘関節の安定性が向上し,良好な治療成績を得られたと推察する.また,患者のコンプライアンスが良好で,自主練習に意欲的であり,高頻度のROMexを継続できたことが治療成績に反映されたと推察する.