[PD-4-5] ポスター:運動器疾患 4手指切断患者への作業療法―義指の動作練習による目的動作を獲得した一例―
【緒言】2006年の厚生労働省の調査によると上肢切断者は約8万人で,そのうち78%が指切断者である.(池田,2012).また,上肢切断者に作成された義手の88%が装飾用であった(中島,1997).義指においても同様で数多く作製されている装飾用義指は,完成時点でフォローアップ終了となることが多く,有効に使用できているかは不明である.今回,他院にて複合損傷後に示指の中節骨レベルでの完全切断となり,その後当院で作業療法を実施し,装飾用義指を作製したのち,指導という立場で職場復帰できた症例を経験したので報告する.発表に際して症例より口頭および書面で同意を得て実施した.
【症例紹介】70歳代男性,右利き,職業:大工,診断名:右示指完全断裂,右環指切断,右小指切断.現病歴:X年,仕事中に電動鋸で受傷.示指は中節骨レベルで完全断裂.中指は基節骨骨折,動脈神経損傷,深指屈筋腱完全断裂,浅指屈筋腱不全断裂.環指・小指は一部の皮膚のみ連続の不全断裂.同日他院で緊急再接着術施行したが,X+2週後,示指は生着せずデブリードマン施行.X+8週後自宅退院.X+9週後作業療法と義指の作製目的に当院受診,同日OT介入開始した.
【初回評価】腫脹:断端部に軽度あり,感覚障害:示指断端部にしびれあり幻肢痛も軽度認められた.中指・環指・小指の指腹部に軽度低下あり.関節可動域(ROM)制限(屈曲/伸展)は,手関節50/60,示指MP関節(60/−60),%TAMでは,中指4%,環指10%,小指18%と関節拘縮と知覚障害が著明であった.
ADL面では,更衣動作時,両手動作での小さなボタン操作が困難で,右手での書字・箸動作は不可能であった.心理面では,大工への職場復帰を強く望んでいた.
【治療経過と再評価】作業療法では,ROM訓練を積極的に実施した.関節拘縮の改善後,示指MP関節の皮膚性拘縮が著明であったため,前医と相談し,X+44週に皮膚形成術を施行した.術後再び当院にて作業療法を継続したが,右手の機能上,大工への現職復帰は困難と判断し,後進の指導を目標とすることを患者と共有した.再評価(X+26ヶ月後)では,幻肢痛は消失したが,中指・環指・小指にしびれ,中指・環指に感覚鈍麻残存.ROM制限(屈曲/伸展)は,手関節50/60,示指MP関節(80/−30),%TAMでは,中指35%,環指36%,小指38%と改善は見られた.握力は,右側11.0㎏と健側比29%と改善し,上肢障害評価表(DASH‐JSSH)は61点となった. ADLでは,右手を用いて,自助箸の使用が可能となった.仕事上の動作では,右手でペンキ塗りが行えるようになった.義指は,生活用にキャップ式を作製し,仕事用に手袋式義指を作製した.手袋式義指の装着にて金槌動作練習を実施し,留め金の調整や操作訓練により改善が認められ,作業療法終了となった.心理面でも復職して後進の指導ができそうだと満足度が得られた.
【考察】症例は,基節骨レベルの示指切断であったが,複合組織損傷により中指から小指に関節拘縮と知覚障害が著明であり,右手の機能低下が著しかった.作業療法当初より職場復帰は困難であると判断していたが,患者の現場復帰の意欲は強かった.右手の機能改善や自助具の使用により日常生活で使用できるようになった.さらに義指の作製と義指を使用した動作練習により仕事のイメージができると,徐々に後進の指導の希望や具体的な動作場面が聞かれるようになった.新たな目標設定ができたことにより,満足度の高い作業療法を提供することができたと考える.
【症例紹介】70歳代男性,右利き,職業:大工,診断名:右示指完全断裂,右環指切断,右小指切断.現病歴:X年,仕事中に電動鋸で受傷.示指は中節骨レベルで完全断裂.中指は基節骨骨折,動脈神経損傷,深指屈筋腱完全断裂,浅指屈筋腱不全断裂.環指・小指は一部の皮膚のみ連続の不全断裂.同日他院で緊急再接着術施行したが,X+2週後,示指は生着せずデブリードマン施行.X+8週後自宅退院.X+9週後作業療法と義指の作製目的に当院受診,同日OT介入開始した.
【初回評価】腫脹:断端部に軽度あり,感覚障害:示指断端部にしびれあり幻肢痛も軽度認められた.中指・環指・小指の指腹部に軽度低下あり.関節可動域(ROM)制限(屈曲/伸展)は,手関節50/60,示指MP関節(60/−60),%TAMでは,中指4%,環指10%,小指18%と関節拘縮と知覚障害が著明であった.
ADL面では,更衣動作時,両手動作での小さなボタン操作が困難で,右手での書字・箸動作は不可能であった.心理面では,大工への職場復帰を強く望んでいた.
【治療経過と再評価】作業療法では,ROM訓練を積極的に実施した.関節拘縮の改善後,示指MP関節の皮膚性拘縮が著明であったため,前医と相談し,X+44週に皮膚形成術を施行した.術後再び当院にて作業療法を継続したが,右手の機能上,大工への現職復帰は困難と判断し,後進の指導を目標とすることを患者と共有した.再評価(X+26ヶ月後)では,幻肢痛は消失したが,中指・環指・小指にしびれ,中指・環指に感覚鈍麻残存.ROM制限(屈曲/伸展)は,手関節50/60,示指MP関節(80/−30),%TAMでは,中指35%,環指36%,小指38%と改善は見られた.握力は,右側11.0㎏と健側比29%と改善し,上肢障害評価表(DASH‐JSSH)は61点となった. ADLでは,右手を用いて,自助箸の使用が可能となった.仕事上の動作では,右手でペンキ塗りが行えるようになった.義指は,生活用にキャップ式を作製し,仕事用に手袋式義指を作製した.手袋式義指の装着にて金槌動作練習を実施し,留め金の調整や操作訓練により改善が認められ,作業療法終了となった.心理面でも復職して後進の指導ができそうだと満足度が得られた.
【考察】症例は,基節骨レベルの示指切断であったが,複合組織損傷により中指から小指に関節拘縮と知覚障害が著明であり,右手の機能低下が著しかった.作業療法当初より職場復帰は困難であると判断していたが,患者の現場復帰の意欲は強かった.右手の機能改善や自助具の使用により日常生活で使用できるようになった.さらに義指の作製と義指を使用した動作練習により仕事のイメージができると,徐々に後進の指導の希望や具体的な動作場面が聞かれるようになった.新たな目標設定ができたことにより,満足度の高い作業療法を提供することができたと考える.