第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-5] ポスター:運動器疾患 5

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PD-5-1] ポスター:運動器疾患 5ADL・IADL介入促進のためのTKA・THA版院内活動表の作成とその実用性

白砂 寛基1川名 龍太郎1平井 大策1熊谷 純久1角田 亘2 (1国際医療福祉大学成田病院リハビリテーション技術部,2国際医療福祉大学医学部リハビリテーション医学教室)

【はじめに】
人工股関節全置換術(Total hip arthroplasty: THA),人工膝関節全置換術(Total knee arthroplasty: TKA)の術後リハビリテーションでは,日常生活動作(Activities of Daily Living: ADL)や手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living; IADL)の訓練が重要となる.しかしながら,IADL訓練は療法士の判断により行われることが多く,具体的なアプローチは確立されていない.また,急性期では心身機能の訓練に偏りがちとなり,IADL訓練は多く行われていない現状がある.我々はADL・IADL訓練を急性期の介入で積極的に用いるためのツール「院内活動表」を作成し,排泄などの自立に向けた繰り返し訓練に加え,さまざまな活動を体験する介入を実践している.今回,下肢整形版院内活動表を作成したので,事例とともに報告する.
【目的】
作業療法実施記録の調査に基づき,TKA・THA術後患者用院内活動表を作成すること,またそれを用いて介入した事例からその実用性を明らかにすることを目的とする.
【方法】
院内活動表の作成:2020年6月~11月に当院整形外科から作業療法処方された大腿骨近位部骨折,変形性股関節症,変形性膝関節症の術後患者25名の作業療法実施記録からADL・IADL訓練内容とその実施日を抽出し,訓練実施一覧を作成した.その一覧から複数の作業療法士で類似した内容の集約,必要性が低いと思われる内容の削除を行い,実施順に訓練内容をまとめた.
事例:院内活動表を参考に作業療法介入した事例から,ADL・IADL訓練実施状況と,介入に対する対象者の主観を面接で評価した.対象者には書面で報告に関する同意を得た.
【結果】
作業療法実施記録から57種類のADL・IADL訓練を抽出し,一覧を作成した.内容は身辺処理から家事動作へと変遷する傾向にあった.整理の例として,風呂掃除とトイレ掃除は同日に実施されていたためまとめ,寝返りや平行棒歩行は理学療法中心の内容であるため削除した.整理により40の活動を抽出した.
事例は,両側変形膝関節症,70代前半の女性で,トイレ動作や浴槽またぎ,床の物拾い等が実施された.対象者の主観評価では,歩行訓練ができると不安が減少し,ADL・IADL訓練で生活に目が向くようになり,回復期で農作業の動作獲得を目指したいという発言が得られた.
【考察】
ADL・IADL訓練を実施順に示すことで,本表は急性期作業療法の具体的介入手段になり得ると考える.また,急性期からADL・IADLを患者が体験することは,対象者の視点を生活に向けることができ,TKA,THAに対する作業療法の介入意義があると考える.
【結語】
TKA・THA術後患者用院内活動表を用いてADL・IADL訓練を行うことは,対象者の視点を生活に向けることができる.