[PD-5-2] ポスター:運動器疾患 5大腿骨転子部骨折後にせん妄を呈した事例に対する急性期作業療法の役割
【はじめに】今回,大腿骨転子部骨折後にせん妄を呈した事例を担当する機会を得た.急性期から事例の訴えを傾聴し,病前生活の活動を踏まえて座位での整容や作業活動を行ったことで,せん妄と廃用の予防,事例の強い希望であるトイレでの排泄につながったので報告する.発表に際し,家族に書面にて同意を得た.
【症例】90歳代の女性,受傷前は要介護2で長男夫婦と3人暮らし,既往歴にアルツハイマー型認知症があり,独歩で入浴以外自立していた.責任感が強く,トイレの処理は自分で行っていた.トイレに行く途中で転倒したことがあり,家族がポータブルトイレを用意したが使用せず,這ってトイレまで行っていた.普段から作業をしていないと落ち着かず,家にある絵本やジグソーパズルに興味を持ち,デイサービスでは塗り絵などの活動を楽しんでいた.Z日,屋外で転倒し,当院緊急搬送され,左大腿骨転子部骨折と診断された.入院初期はトイレに行きたいと大声を出し,起き上がるなど,過活動型せん妄状態であった.Z+2日に手術予定であったが肺炎を発症したため,Z+4日に骨接合術を施行した.Z+5日,リハビリテーション開始した.
【初期評価】介入当初は炎症値が高く,低栄養と貧血を認めた.JCSⅡ-20,血圧86/39mmHg,左下肢運動時に苦痛表情があり,端座位保持に介助を要した.FIMは23点で食事は覚醒不良のため介助を要しており,膀胱留置カテーテルを使用していた.日本語版NEECHAM混乱/錯乱スケール(J-NCS)は7/30点,中等度から重度の混乱・錯乱状態で日中は覚醒不良,会話のやり取りが困難であり,夜間は多弁で辻褄の合わない発言が聞かれた.
【介入方針】急性期では,座位での整容や作業活動を通してせん妄と廃用の予防を行いながら,事例の強い希望であるトイレでの早期排泄が行えることを目標とした.
【経過】術後,貧血や血圧低値が続いたため,補液や輸血を実施し,作業療法(OT)で整容や座位で感覚入力刺激を与え,覚醒度の改善を図った.Z+9日にJ-NCS22点で簡単な会話や座位で塗り絵活動など自発的に取り組む様子を認めた.Z+11日,会話中に喘鳴や酸素飽和度の低下があり,酸素3L投与された.採血で低カリウム,造影CTで肺塞栓,胸水があり,薬物療法が開始された.再び安静度がベッド上となり, J-NCSは10点と覚醒不良,著しく反応が低下したがZ+15日に離床許可され,端座位で塗り絵に取り組む様子を認めた.Z+20日,J-NCSは23点で疼痛なく自ら起き上がり,整容を行う様子を認めた.また,病前に行っていた作業活動を提示すると,自発的に行う作業種目を選択した.完成した絵を病室に飾ると職員から賞賛を受けるなど,OTは作業を通して達成感と有能感が得られるように環境調整を行った. Z+33日,両手支持で立位保持可能となり,病棟看護師と情報共有しながら病棟トイレで排泄を実施した.尿意を感じると自ら起き,看護師の介助のもと病棟トイレで排泄が出来るようになったことで膀胱留置カテーテルを抜去し,Z+38日からトイレでの排泄を開始した. Z+41日のCTで肺血栓消失し,酸素投与終了,46日に回復期リハビリテーション病棟に転棟した.
【考察】先行研究において,せん妄事例であっても日常生活を取り戻すような関わりが重要であること,廃用症候群予防の為に患者の習慣,役割などの心理・社会面も考慮した関わり方が重要視されると報告されている.今回,急性期から事例の訴えを傾聴し,病前生活の活動を踏まえた上で作業療法を実施した結果,せん妄と廃用の予防,事例の強い希望であるトイレでの排泄につながる貴重な経験を得ることができた.
【症例】90歳代の女性,受傷前は要介護2で長男夫婦と3人暮らし,既往歴にアルツハイマー型認知症があり,独歩で入浴以外自立していた.責任感が強く,トイレの処理は自分で行っていた.トイレに行く途中で転倒したことがあり,家族がポータブルトイレを用意したが使用せず,這ってトイレまで行っていた.普段から作業をしていないと落ち着かず,家にある絵本やジグソーパズルに興味を持ち,デイサービスでは塗り絵などの活動を楽しんでいた.Z日,屋外で転倒し,当院緊急搬送され,左大腿骨転子部骨折と診断された.入院初期はトイレに行きたいと大声を出し,起き上がるなど,過活動型せん妄状態であった.Z+2日に手術予定であったが肺炎を発症したため,Z+4日に骨接合術を施行した.Z+5日,リハビリテーション開始した.
【初期評価】介入当初は炎症値が高く,低栄養と貧血を認めた.JCSⅡ-20,血圧86/39mmHg,左下肢運動時に苦痛表情があり,端座位保持に介助を要した.FIMは23点で食事は覚醒不良のため介助を要しており,膀胱留置カテーテルを使用していた.日本語版NEECHAM混乱/錯乱スケール(J-NCS)は7/30点,中等度から重度の混乱・錯乱状態で日中は覚醒不良,会話のやり取りが困難であり,夜間は多弁で辻褄の合わない発言が聞かれた.
【介入方針】急性期では,座位での整容や作業活動を通してせん妄と廃用の予防を行いながら,事例の強い希望であるトイレでの早期排泄が行えることを目標とした.
【経過】術後,貧血や血圧低値が続いたため,補液や輸血を実施し,作業療法(OT)で整容や座位で感覚入力刺激を与え,覚醒度の改善を図った.Z+9日にJ-NCS22点で簡単な会話や座位で塗り絵活動など自発的に取り組む様子を認めた.Z+11日,会話中に喘鳴や酸素飽和度の低下があり,酸素3L投与された.採血で低カリウム,造影CTで肺塞栓,胸水があり,薬物療法が開始された.再び安静度がベッド上となり, J-NCSは10点と覚醒不良,著しく反応が低下したがZ+15日に離床許可され,端座位で塗り絵に取り組む様子を認めた.Z+20日,J-NCSは23点で疼痛なく自ら起き上がり,整容を行う様子を認めた.また,病前に行っていた作業活動を提示すると,自発的に行う作業種目を選択した.完成した絵を病室に飾ると職員から賞賛を受けるなど,OTは作業を通して達成感と有能感が得られるように環境調整を行った. Z+33日,両手支持で立位保持可能となり,病棟看護師と情報共有しながら病棟トイレで排泄を実施した.尿意を感じると自ら起き,看護師の介助のもと病棟トイレで排泄が出来るようになったことで膀胱留置カテーテルを抜去し,Z+38日からトイレでの排泄を開始した. Z+41日のCTで肺血栓消失し,酸素投与終了,46日に回復期リハビリテーション病棟に転棟した.
【考察】先行研究において,せん妄事例であっても日常生活を取り戻すような関わりが重要であること,廃用症候群予防の為に患者の習慣,役割などの心理・社会面も考慮した関わり方が重要視されると報告されている.今回,急性期から事例の訴えを傾聴し,病前生活の活動を踏まえた上で作業療法を実施した結果,せん妄と廃用の予防,事例の強い希望であるトイレでの排泄につながる貴重な経験を得ることができた.