[PD-8-2] ポスター:運動器疾患 8慢性疼痛のある手指外傷患者に対しミラーセラピーを実施した症例報告
【序論】ミラーセラピー(以下MT)は脳卒中の機能障害や幻肢痛に対する治療として確立されてきたが,近年手の外傷やCRPSに対しても有効であるという報告がある.しかしMTを実施した手の外傷患者に対し,具体的な疼痛の評価や日常生活動作の獲得状況との関連についてはあまり示唆されていない.今回,手指外傷後の慢性疼痛を主訴として日常生活への支障が大きく,仕事への復帰も長期間困難であった症例に対し,MTを実施し,主に痛みの認知度・性質の変化や手指の実用性獲得までの経過について検証した.本研究に関し,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【症例紹介】40代女性,右利き,獣医を仕事とし,既往に線維筋痛症がある.馬を誘導中に右手を挟まれ,右中指~小指の疼痛と知覚過敏が持続し,特に環指PIP関節の疼痛を強く訴えた.画像所見は右環指中節骨近位掌側にPIP関節面に達する骨折線があったが目立った転位は認めず保存治療となり,受傷から2カ月が経過し当院紹介となりリハビリ開始となった.尚,本発表に際し症例より情報提供において同意を得ている.
【作業療法介入】受傷から2カ月経過し,外来リハビリ導入(週2回介入)となり,はじめ2週間は関節可動域訓練を実施したが,著明な疼痛が持続しCRPSの診断を受け,MTを導入した.受傷から4カ月が経過した頃に復職訓練等の応用訓練も実施し外来リハビリは計4カ月間実施した.
【評価項目】機能評価として関節可動域(自動):環指PIP関節(屈曲・伸展),知覚:触覚・痛覚,ピンチ力,握力を実施.疼痛評価として程度:NRS,性質:SF‐MPQJ‐2,思考:PSEQ‐J(自己効力感),PCS(破局的思考)を使用.ADL評価としてTHE Quick DASHを使用.
【結果】受傷から2カ月が経過したリハビリ介入当初から患部における疼痛,知覚過敏,関節可動域制限が目立ち,特徴としてCRPSに当てはまる状態であった.MT実施後は疼痛や知覚過敏の程度は軽減し,それに伴い関節可動域制限の拡大や握力・ピンチ力の改善が認められた.また疼痛の性質として,リハビリ開始時は持続的痛み・神経障害性の痛み・感情的表現に当てはまる項目が多くMT実施後はどの項目も徐々に緩和された.しかし持続的痛みは受傷後5カ月を経ても他の項目に比べやや多い結果となった.また疼痛に対する思考として,MT開始直後は大幅に破局的思考が減少,自己効力感が上昇したが,経過としては変動があった.また実用性獲得は,THE Quick DASHの結果としてMT実施後より機能障害スコア・仕事スコアともに改善を示したが,仕事の獲得にはやや遅延を要した.
【考察】最終的に手指の運動制限が緩和され,通常の仕事業務の復帰までに至るには受傷から時間を要したが,導入直後から,その効果とされる外傷手に対する運動イメージが徐々に改善され,破局的思考の減少に伴い自己効力感が回復し,疼痛への認知的な対処能力が安定し,実用手獲得へ繋がったと考えられる.またCRPSの特徴である慢性疼痛に類似する持続的痛みが長期的に残存したのは,MTは特に自己受容感覚改善に対して有効とされる報告があり,持続的痛みより感情的表現などの主観的な疼痛感覚の緩和に対し優位に貢献したと考えられるほか,既往である線維筋痛症が疼痛の慢性化に影響したとも考えられる.今回はシングルケースの経過を追ったが,他の手の外傷におけるMT介入効果や疼痛の種類による改善状況の経過の違いを検証することや,CRPSは身体機能のみならず心理機能や認知的側面による影響を含むとされており,実用性獲得が困難とされる症例に対して多様な面からのアプローチ法についても,今後の取り組みとして考察していきたい.
【症例紹介】40代女性,右利き,獣医を仕事とし,既往に線維筋痛症がある.馬を誘導中に右手を挟まれ,右中指~小指の疼痛と知覚過敏が持続し,特に環指PIP関節の疼痛を強く訴えた.画像所見は右環指中節骨近位掌側にPIP関節面に達する骨折線があったが目立った転位は認めず保存治療となり,受傷から2カ月が経過し当院紹介となりリハビリ開始となった.尚,本発表に際し症例より情報提供において同意を得ている.
【作業療法介入】受傷から2カ月経過し,外来リハビリ導入(週2回介入)となり,はじめ2週間は関節可動域訓練を実施したが,著明な疼痛が持続しCRPSの診断を受け,MTを導入した.受傷から4カ月が経過した頃に復職訓練等の応用訓練も実施し外来リハビリは計4カ月間実施した.
【評価項目】機能評価として関節可動域(自動):環指PIP関節(屈曲・伸展),知覚:触覚・痛覚,ピンチ力,握力を実施.疼痛評価として程度:NRS,性質:SF‐MPQJ‐2,思考:PSEQ‐J(自己効力感),PCS(破局的思考)を使用.ADL評価としてTHE Quick DASHを使用.
【結果】受傷から2カ月が経過したリハビリ介入当初から患部における疼痛,知覚過敏,関節可動域制限が目立ち,特徴としてCRPSに当てはまる状態であった.MT実施後は疼痛や知覚過敏の程度は軽減し,それに伴い関節可動域制限の拡大や握力・ピンチ力の改善が認められた.また疼痛の性質として,リハビリ開始時は持続的痛み・神経障害性の痛み・感情的表現に当てはまる項目が多くMT実施後はどの項目も徐々に緩和された.しかし持続的痛みは受傷後5カ月を経ても他の項目に比べやや多い結果となった.また疼痛に対する思考として,MT開始直後は大幅に破局的思考が減少,自己効力感が上昇したが,経過としては変動があった.また実用性獲得は,THE Quick DASHの結果としてMT実施後より機能障害スコア・仕事スコアともに改善を示したが,仕事の獲得にはやや遅延を要した.
【考察】最終的に手指の運動制限が緩和され,通常の仕事業務の復帰までに至るには受傷から時間を要したが,導入直後から,その効果とされる外傷手に対する運動イメージが徐々に改善され,破局的思考の減少に伴い自己効力感が回復し,疼痛への認知的な対処能力が安定し,実用手獲得へ繋がったと考えられる.またCRPSの特徴である慢性疼痛に類似する持続的痛みが長期的に残存したのは,MTは特に自己受容感覚改善に対して有効とされる報告があり,持続的痛みより感情的表現などの主観的な疼痛感覚の緩和に対し優位に貢献したと考えられるほか,既往である線維筋痛症が疼痛の慢性化に影響したとも考えられる.今回はシングルケースの経過を追ったが,他の手の外傷におけるMT介入効果や疼痛の種類による改善状況の経過の違いを検証することや,CRPSは身体機能のみならず心理機能や認知的側面による影響を含むとされており,実用性獲得が困難とされる症例に対して多様な面からのアプローチ法についても,今後の取り組みとして考察していきたい.