[PD-8-3] ポスター:運動器疾患 8浮腫の遷延により関節可動域改善に難渋した橈骨遠位端骨折の1症例
【はじめに】今回,橈骨手根関節脱臼を合併した橈骨遠位端骨折術後の作業療法を経験し,浮腫の遷<延により可動域の改善に難渋する機会を得たため,以下に報告する.尚,本報告は症例の同意を得ている.
【症例】40代男性.飲食店勤務.X日,軽自動車運転中に脇見運転をし,ポールに衝突したことで左手関節の疼痛が出現し,X+1日に当院受診し,左橈骨遠位端骨折,左橈骨手根関節脱臼骨折と診断され,X+7日,観血的整復固定術を施行された.術後は手関節軽度掌屈位にて手関節装具装着となった.術翌日に作業療法開始となり,術後3日で退院,術後5日より外来開始,術後2週で外固定除去,仕事は患側を使わないという条件付きで軽作業から開始した.
【評価】術後2週で,ROM(自動/他動)は手関節掌屈20/30度,背屈10/20度,前腕回内55/70度,回外50/65度であり,手指にも屈曲制限が自動,他動ともにあった.手関節には熱感と他動運動時の疼痛があった.8の字周径は42.5cm(健側38.8cm)で,Quick-DASHは機能障害/症状スコア45.5点,仕事スコア56.3点であった.
【介入】目標を「仕事で支障なく使用できる手の獲得」とし,介入頻度・期間は,入院中は1日1~2回・3日間,外来では週は2~4回・10週間,1回20分とした.訓練は「固定期」「固定除去期」「骨癒合期」に分けて実施した.「固定期」は術後翌日より作業療法時のみ外固定を除去し,手関節と手指の自動運動,アイシングと高位挙上を開始した.術後5日のROMは自動で手関節掌屈15度,背屈0度であった.
術後2週からの「固定除去期」では,手関節他動運動を開始し,紐巻き法を実施,指導した.術後4週のROM(自動/他動)は手関節掌屈25/30度,背屈15/25度,前腕回内60/70度,回外50/65度,8の字周径は39.8cmであり,この時期より副運動を開始した.術後5週より手関節の熱感が取れたため,過流浴を開始し,術後6週より手根間靭帯・関節包の伸長目的に重錘を用いた牽引を手関節長軸方向に開始した.また,就業上,前腕回外の改善が必要であったため,重錘による前腕回外方向への持続伸長を実施した.この時,ROM(自動/他動)は,環指MP屈曲50/75度,小指MP屈曲35/70度と手指MP関節にも制限があったため,弾性包帯による屈曲方向への持続伸長を開始した.術後7週より手関節の他動運動時の疼痛が軽減し,掌背屈板とリストラウンダーを開始した.
術後8週より「骨癒合期」に入り,体重支持による他動運動と,筋力訓練として抵抗運動を開始した.この時,握力は右37.3kg,左6.8kg,8の字周径は39.9cmであり,浮腫は遷延していたため,各浮腫対策を継続し,自動運動や患側の使用など本症例は能動的な姿勢を呈していた.
【結果】術後11週で,ROM(自動/他動)は手関節掌屈40/50度,背屈35/50度,前腕回内90/90度,回外80/90度,環指MP屈曲65/80度,小指MP屈曲60/80度,8の字周径は39.0cm,握力は右31.8kg,左10.3kgであった.Quick-DASHは機能障害/症状スコア25点,仕事スコア18.8点であり,初期より仕事での患側使用時の困難さが軽減した.
【考察】手関節掌背屈と環指,小指のMP屈曲のROMは十分な改善が得られなかったが,これは,術後に遷延した浮腫に含まれるフィブリンが手関節掌背側の橈骨手根靭帯や関節包,MP関節の側副靭帯に沈着し,それらの組織の線維化や癒着,短縮が生じ,拘縮へと発展したことが考えられる.浮腫が遷延した理由として,腫れの指標である炎症症状の推移の確認や浮腫対策が不十分かつ,不足していたことが考えられる.浮腫対策としては交代浴も適応になるため,今後は炎症症状の推移を確認しながら,交代浴を導入するなど浮腫対策を更に徹底する必要があると考える.
【症例】40代男性.飲食店勤務.X日,軽自動車運転中に脇見運転をし,ポールに衝突したことで左手関節の疼痛が出現し,X+1日に当院受診し,左橈骨遠位端骨折,左橈骨手根関節脱臼骨折と診断され,X+7日,観血的整復固定術を施行された.術後は手関節軽度掌屈位にて手関節装具装着となった.術翌日に作業療法開始となり,術後3日で退院,術後5日より外来開始,術後2週で外固定除去,仕事は患側を使わないという条件付きで軽作業から開始した.
【評価】術後2週で,ROM(自動/他動)は手関節掌屈20/30度,背屈10/20度,前腕回内55/70度,回外50/65度であり,手指にも屈曲制限が自動,他動ともにあった.手関節には熱感と他動運動時の疼痛があった.8の字周径は42.5cm(健側38.8cm)で,Quick-DASHは機能障害/症状スコア45.5点,仕事スコア56.3点であった.
【介入】目標を「仕事で支障なく使用できる手の獲得」とし,介入頻度・期間は,入院中は1日1~2回・3日間,外来では週は2~4回・10週間,1回20分とした.訓練は「固定期」「固定除去期」「骨癒合期」に分けて実施した.「固定期」は術後翌日より作業療法時のみ外固定を除去し,手関節と手指の自動運動,アイシングと高位挙上を開始した.術後5日のROMは自動で手関節掌屈15度,背屈0度であった.
術後2週からの「固定除去期」では,手関節他動運動を開始し,紐巻き法を実施,指導した.術後4週のROM(自動/他動)は手関節掌屈25/30度,背屈15/25度,前腕回内60/70度,回外50/65度,8の字周径は39.8cmであり,この時期より副運動を開始した.術後5週より手関節の熱感が取れたため,過流浴を開始し,術後6週より手根間靭帯・関節包の伸長目的に重錘を用いた牽引を手関節長軸方向に開始した.また,就業上,前腕回外の改善が必要であったため,重錘による前腕回外方向への持続伸長を実施した.この時,ROM(自動/他動)は,環指MP屈曲50/75度,小指MP屈曲35/70度と手指MP関節にも制限があったため,弾性包帯による屈曲方向への持続伸長を開始した.術後7週より手関節の他動運動時の疼痛が軽減し,掌背屈板とリストラウンダーを開始した.
術後8週より「骨癒合期」に入り,体重支持による他動運動と,筋力訓練として抵抗運動を開始した.この時,握力は右37.3kg,左6.8kg,8の字周径は39.9cmであり,浮腫は遷延していたため,各浮腫対策を継続し,自動運動や患側の使用など本症例は能動的な姿勢を呈していた.
【結果】術後11週で,ROM(自動/他動)は手関節掌屈40/50度,背屈35/50度,前腕回内90/90度,回外80/90度,環指MP屈曲65/80度,小指MP屈曲60/80度,8の字周径は39.0cm,握力は右31.8kg,左10.3kgであった.Quick-DASHは機能障害/症状スコア25点,仕事スコア18.8点であり,初期より仕事での患側使用時の困難さが軽減した.
【考察】手関節掌背屈と環指,小指のMP屈曲のROMは十分な改善が得られなかったが,これは,術後に遷延した浮腫に含まれるフィブリンが手関節掌背側の橈骨手根靭帯や関節包,MP関節の側副靭帯に沈着し,それらの組織の線維化や癒着,短縮が生じ,拘縮へと発展したことが考えられる.浮腫が遷延した理由として,腫れの指標である炎症症状の推移の確認や浮腫対策が不十分かつ,不足していたことが考えられる.浮腫対策としては交代浴も適応になるため,今後は炎症症状の推移を確認しながら,交代浴を導入するなど浮腫対策を更に徹底する必要があると考える.