[PD-8-5] ポスター:運動器疾患 8Hybrid suspensionplastyを施行後に6か月間の作業療法を実施した母指CM関節症患者におけるDASH scoreの検討
【序論】母指CM関節症の手術には様々な手法が存在する.近年,Hybrid suspensionplasty (Ligament reconstruction with tendon interposition arthroplasty: LRTIとSuture button: SBを併用した方法;以下Hybrid法)の有用性が報告されている(川崎ら,2018).当院では,Hybrid法と6か月間の作業療法を併用したプロトコールを用いて,母指CM関節症患者へ介入しており,その評価指標はDASH scoreを使用している.本研究は,当院 母指CM関節症患者における,性別,利き手または非利き手,年齢の違いによる術前,術後6か月のDASH scoreとその変化率に違いがあるかを明らかにすることとした.
【対象と方法】2018年1月から2021年12月末までに,当院で母指CM関節症に対しHybrid法を施行した45例50手(平均年齢;68.3±9.1歳,性別;男性10例,女性40例,利き手25手,非利き手25手)を対象とした.Hybrid法は,FCR腱を用いたLRTIを基本とし,最後にSBを追加することで外固定期間は1週間と短い.また,SBの糸にのみ依存する訳ではなく,長期的な安定化も期待できる手法である.当院のプロトコールは,術前日に作業療法士による評価を行い,Hybrid法を施行,術翌日から1週間はシーネ固定とし,固定外の可動域訓練を施行する.シーネ除去時に作業療法士が夜間用の短対立装具を作製,日中の注意点を指導した後退院となる.外来作業療法は術後6か月まで継続し,疼痛に合わせた可動域訓練,筋力強化,日常生活指導を行っている.特に生活での使用状況は都度聞き取りを行い,過負荷とならないような指導を行っている.患者を性別,利き手または非利き手で群別し,術前,術後6か月のDASH score(Disability/symptom)とその変化率を統計処理にて比較した.変化率は,術前/術後6か月×100の計算式で算出し,数値が高いほど改善度が高いことを意味する.加えて,年齢と上記のDASH scoreの相関を検討した.解析ソフトはJMP Pro Version16を使用し,有意水準は5%未満に設定した.本研究は所属施設倫理委員会の承認を得て行われた.
【結果】患者のDASH scoreは,術前35.9±18.4,術後6か月18.1±15.3であり,有意に改善した(p<0.01).性別,利き手または非利き手での群別による比較では,術前,術後6か月のDASH score,変化率に有意差を認めなかった.年齢と DASH scoreの相関は,術前,術後6か月のscoreとの相関は無かったが,変化率とは負の相関を認め,年齢が若いほどDASH scoreの改善度が高い傾向にあった(r=-0.40,p<0.01).
【考察】本研究の結果,Hybrid法と6か月間の作業療法を併用した介入は,DASH scoreを有意に改善させることが明らかになった. Hybrid法は従来の手術に比べて固定期間が短く,早期から患肢の使用が可能となることが利点であるが(久保田ら,2020),一方で使用状況によっては過負荷となり,疼痛の増強や長期化してしまうリスクが生じる.そのため,作業療法介入毎に使用状況を聴取し,具体性を持たせた生活指導を行い,疼痛が増強しないよう関わることが重要である.また,年齢が若いほど変化率が高い傾向にあったことから,本介入は若年者で適格性が高いものであると考える.今後はDASH scoreの項目を細分化し検討することに加え,術前後での疼痛VAS値,握力やピンチ力の健側比,母指の関節可動域,Eaton stage分類などを分析することで,生活上どのような場面で支障が生じ,長期的な困難さを呈するのか,詳細な調査を行っていきたい.これらを明らかにすることで,患者に適切に予後予測を伝え,術後の患肢管理や自主トレーニング指導,生活指導などの助言をより正確に行うことができると考える.
【対象と方法】2018年1月から2021年12月末までに,当院で母指CM関節症に対しHybrid法を施行した45例50手(平均年齢;68.3±9.1歳,性別;男性10例,女性40例,利き手25手,非利き手25手)を対象とした.Hybrid法は,FCR腱を用いたLRTIを基本とし,最後にSBを追加することで外固定期間は1週間と短い.また,SBの糸にのみ依存する訳ではなく,長期的な安定化も期待できる手法である.当院のプロトコールは,術前日に作業療法士による評価を行い,Hybrid法を施行,術翌日から1週間はシーネ固定とし,固定外の可動域訓練を施行する.シーネ除去時に作業療法士が夜間用の短対立装具を作製,日中の注意点を指導した後退院となる.外来作業療法は術後6か月まで継続し,疼痛に合わせた可動域訓練,筋力強化,日常生活指導を行っている.特に生活での使用状況は都度聞き取りを行い,過負荷とならないような指導を行っている.患者を性別,利き手または非利き手で群別し,術前,術後6か月のDASH score(Disability/symptom)とその変化率を統計処理にて比較した.変化率は,術前/術後6か月×100の計算式で算出し,数値が高いほど改善度が高いことを意味する.加えて,年齢と上記のDASH scoreの相関を検討した.解析ソフトはJMP Pro Version16を使用し,有意水準は5%未満に設定した.本研究は所属施設倫理委員会の承認を得て行われた.
【結果】患者のDASH scoreは,術前35.9±18.4,術後6か月18.1±15.3であり,有意に改善した(p<0.01).性別,利き手または非利き手での群別による比較では,術前,術後6か月のDASH score,変化率に有意差を認めなかった.年齢と DASH scoreの相関は,術前,術後6か月のscoreとの相関は無かったが,変化率とは負の相関を認め,年齢が若いほどDASH scoreの改善度が高い傾向にあった(r=-0.40,p<0.01).
【考察】本研究の結果,Hybrid法と6か月間の作業療法を併用した介入は,DASH scoreを有意に改善させることが明らかになった. Hybrid法は従来の手術に比べて固定期間が短く,早期から患肢の使用が可能となることが利点であるが(久保田ら,2020),一方で使用状況によっては過負荷となり,疼痛の増強や長期化してしまうリスクが生じる.そのため,作業療法介入毎に使用状況を聴取し,具体性を持たせた生活指導を行い,疼痛が増強しないよう関わることが重要である.また,年齢が若いほど変化率が高い傾向にあったことから,本介入は若年者で適格性が高いものであると考える.今後はDASH scoreの項目を細分化し検討することに加え,術前後での疼痛VAS値,握力やピンチ力の健側比,母指の関節可動域,Eaton stage分類などを分析することで,生活上どのような場面で支障が生じ,長期的な困難さを呈するのか,詳細な調査を行っていきたい.これらを明らかにすることで,患者に適切に予後予測を伝え,術後の患肢管理や自主トレーニング指導,生活指導などの助言をより正確に行うことができると考える.