[PE-1-3] ポスター:神経難病 1ギラン・バレー症候群を呈し全介助の状態から巧緻動作獲得まで至った事例
【はじめに】
ギランバレー症候群(以外GBS)は一般的に予後良好な疾患と言われているが回復が遅延したり上肢に後遺症が残る患者もいる.現在上肢の治療はバイオフィードバック訓練を用いた報告(L P Inceら1986)はされているが,上肢機能と活動量を関連させた報告はない.今回,発症後2ヶ月間ADL上上肢使用困難な状態で回復期病棟へ転棟しその後適切な活動量の増加を図ることで巧緻動作まで獲得した1例の臨床経験を報告する.尚今回の報告にあたり症例の同意は得ている.
【症例紹介】
26歳女性,2021年9月下旬に下肢のつっぱり感を自覚,その後四肢の痺れ,下肢の筋力低下を感じ歩行障害が進行した為近医を受診し翌日GBSの疑いで当院へ転院となった.入院時に神経伝達速度検査(以下NCS )と腰椎穿刺を施行しGBSと診断され,ヴェノグロブリン療法が開始される(この時2日間投与,その後入院13日目から5日間投与).入院3日目に完全四肢麻痺状態となり,同時に人工呼吸器管理(6日で抜管)となる.入院4日目から血漿交換療法(10日間)を実施した.
【経過と介入方法】
本症例は回復期病棟へ入院後55日で入棟し,入棟時のNCSでは左右共尺骨神経,正中神経の感覚神経が導出できず運動神経の著明な伝導速度の低下を認めていた.ADLは全介助で,身体状況は上肢のROM制限は手関節が左右共掌屈65°と軽度の制限,両手握力500g,MMTが肩関節4,肘関節3,手関節2,手指1で,感覚は10点法で上腕10,前腕7〜8,手掌3〜4,手指先端2で,手関節以遠は振動覚,重量覚共に軽度,立体覚は重度低下,2点識別覚は右9mm,左10mm,NRS7〜8の痺れが断続的に手指先端に生じていた.リハビリは1日9単位介入を行い作業療法士は上肢機能訓練,ADL訓練を中心に介入,手関節や手指の機能を代償する為にスプリントの導入やテーピングを実施し疼痛自制内で筋力トレーニングや物品操作練習を行った.食事は全介助の状態であった為,上肢機能の廃用防止と代償動作による運動の誤学習防止を目的に介助皿や太柄にしたスプーン等身体状況に合わせた物品の導入を行い自身で摂取できる環境にした.また転棟前はリハビリが1日2回で平均し4〜6単位の提供,離床時間は昼食時とリハビリ介入時のみでその他の時間はベッド上で過ごしていた.そこで全身の耐久性向上を目的にリハビリ以外で3食の食事で離床し,ペン等物品の調整を行い本人の趣味(描画)をリハビリ時間外に導入して上肢の訓練と離床時間の確保を図った.最終的に退院前(入院後132日)にはROMは手関節掌屈が左右共80°まで改善,肩関節から末梢の手指までMMT 4,握力は右12.5kg,左11kg,STEFで右91点,左95点,感覚は10点法で上腕〜前腕10,手掌9,手指先端8で,振動覚,重量覚,立体覚は改善,2点識別覚は左右とも2mm,手指先端の痺れも物品を強く把持した時のみの出現となった.NCSでは左右尺骨神経,正中神経の感覚神経が導出可能となり運動神経の伝導速度も軽度改善が認められた.ADL,屋内外歩行自立,箸の使用,パソコン操作,調理動作,趣味である描画がスムーズに可能となった.
【考察】
GBS患者は易疲労的であり損傷後の末梢神経に対し強い負荷をかけると回復を阻害する為リハビリ介入では過負荷に留意する必要がある.しかし廃用等の二次的障害の予防も重要であり,また末梢神経損傷後は安静よりも直後から軽い運動負荷を与える事が機能改善を早めると言われている(Meeteren NLUら,1997).今回スプリントや自助具等で環境を調整しADL上や余暇活動で上肢の活動を積極的に取り入れられた事が過負荷となる事なく急性期期間の廃用を改善し巧緻動作を獲得できるまでに回復を促進する事が出来たのではないかと考える.
ギランバレー症候群(以外GBS)は一般的に予後良好な疾患と言われているが回復が遅延したり上肢に後遺症が残る患者もいる.現在上肢の治療はバイオフィードバック訓練を用いた報告(L P Inceら1986)はされているが,上肢機能と活動量を関連させた報告はない.今回,発症後2ヶ月間ADL上上肢使用困難な状態で回復期病棟へ転棟しその後適切な活動量の増加を図ることで巧緻動作まで獲得した1例の臨床経験を報告する.尚今回の報告にあたり症例の同意は得ている.
【症例紹介】
26歳女性,2021年9月下旬に下肢のつっぱり感を自覚,その後四肢の痺れ,下肢の筋力低下を感じ歩行障害が進行した為近医を受診し翌日GBSの疑いで当院へ転院となった.入院時に神経伝達速度検査(以下NCS )と腰椎穿刺を施行しGBSと診断され,ヴェノグロブリン療法が開始される(この時2日間投与,その後入院13日目から5日間投与).入院3日目に完全四肢麻痺状態となり,同時に人工呼吸器管理(6日で抜管)となる.入院4日目から血漿交換療法(10日間)を実施した.
【経過と介入方法】
本症例は回復期病棟へ入院後55日で入棟し,入棟時のNCSでは左右共尺骨神経,正中神経の感覚神経が導出できず運動神経の著明な伝導速度の低下を認めていた.ADLは全介助で,身体状況は上肢のROM制限は手関節が左右共掌屈65°と軽度の制限,両手握力500g,MMTが肩関節4,肘関節3,手関節2,手指1で,感覚は10点法で上腕10,前腕7〜8,手掌3〜4,手指先端2で,手関節以遠は振動覚,重量覚共に軽度,立体覚は重度低下,2点識別覚は右9mm,左10mm,NRS7〜8の痺れが断続的に手指先端に生じていた.リハビリは1日9単位介入を行い作業療法士は上肢機能訓練,ADL訓練を中心に介入,手関節や手指の機能を代償する為にスプリントの導入やテーピングを実施し疼痛自制内で筋力トレーニングや物品操作練習を行った.食事は全介助の状態であった為,上肢機能の廃用防止と代償動作による運動の誤学習防止を目的に介助皿や太柄にしたスプーン等身体状況に合わせた物品の導入を行い自身で摂取できる環境にした.また転棟前はリハビリが1日2回で平均し4〜6単位の提供,離床時間は昼食時とリハビリ介入時のみでその他の時間はベッド上で過ごしていた.そこで全身の耐久性向上を目的にリハビリ以外で3食の食事で離床し,ペン等物品の調整を行い本人の趣味(描画)をリハビリ時間外に導入して上肢の訓練と離床時間の確保を図った.最終的に退院前(入院後132日)にはROMは手関節掌屈が左右共80°まで改善,肩関節から末梢の手指までMMT 4,握力は右12.5kg,左11kg,STEFで右91点,左95点,感覚は10点法で上腕〜前腕10,手掌9,手指先端8で,振動覚,重量覚,立体覚は改善,2点識別覚は左右とも2mm,手指先端の痺れも物品を強く把持した時のみの出現となった.NCSでは左右尺骨神経,正中神経の感覚神経が導出可能となり運動神経の伝導速度も軽度改善が認められた.ADL,屋内外歩行自立,箸の使用,パソコン操作,調理動作,趣味である描画がスムーズに可能となった.
【考察】
GBS患者は易疲労的であり損傷後の末梢神経に対し強い負荷をかけると回復を阻害する為リハビリ介入では過負荷に留意する必要がある.しかし廃用等の二次的障害の予防も重要であり,また末梢神経損傷後は安静よりも直後から軽い運動負荷を与える事が機能改善を早めると言われている(Meeteren NLUら,1997).今回スプリントや自助具等で環境を調整しADL上や余暇活動で上肢の活動を積極的に取り入れられた事が過負荷となる事なく急性期期間の廃用を改善し巧緻動作を獲得できるまでに回復を促進する事が出来たのではないかと考える.