[PE-1-4] ポスター:神経難病 1急性期病棟での作業療法の役割
【はじめに】ギラン・バレー症候群(以下GBS)はウイルス感染等に続発し発生する自己免疫性の脱髄疾患とされている.今回,GBSを発症した70歳代男性を担当した急性期病棟での3ヶ月間の経過を振り返り,作業療法(以下OT)の役割について若干の考察を加え報告する.尚,発表にあたり症例より同意を得た.【症例紹介】年齢・利き手・性別:70歳代・右利き・男性.現病歴:X年Y月Z日起床時より両手指の脱力を認め当院受診しGBS疑いで入院となる.入院後も両下肢の脱力が進行し歩行困難となりリハビリ開始となった.主訴:手足が動かしにくい.デマンド:歩行獲得・復職.Hughesのfunctional gradeではⅣに該当.【作業療法評価】意識:清明.脳神経系:問題なし.運動系:四肢麻痺,深部腱反射は消失,筋力は上肢近位筋ではMMT2,遠位筋ではMMT1~2だが左側優位に筋出力低下を認める.握力は精査困難. ROM制限は体幹と四肢末梢で認め,浮腫により他動運動にて疼痛を生じていた.感覚系:表在・深部感覚ともに正常.協調運動系:精査困難.回復への期待が高く,退院後は復職を望まれていた.言語:発話・理解・復唱・呼称ともに問題なし.全般的知的機能:MMSE23/30,RCPM31/36.基本動作:寝返り・起き上がり・座位保持・起立・立位保持は全介助.ADL:食事・整容・更衣は全介助,トイレは2人介助,入浴は機械浴.【介入目標と問題点】介入目標を治療経過による体幹・四肢機能の回復を予測し①全身的な可動域の拡大,特に手関節・手指の浮腫軽減と四肢筋出力向上を図りながら,食事動作等の身の回り動作の拡大を図るとした.②トイレ動作へも早期介入し,自尊心への配慮と病棟生活にも抗重力位を積極的に取り入れ廃用症状の進行を予防し,③生活者としてのモチベーション低下を抑制する.問題点を①四肢末梢の浮腫および不動によるROM制限と近位筋の先行的な回復が予測される為,姿勢筋緊張亢進での安静・運動時痛の助長と②症状による安静臥床が四肢・体幹機能の廃用を進行させること,③長期的な入院加療に伴う抑うつ傾向の形成とし介入を開始した.【介入経過】介入初期はナースコールの使用が困難であった為,コミュニケーションエイドの設定と生活動作によるベッド上ポジショニングの統一を図った.上肢のポジショニングで肩関節の自動運動が可能となり,自助具使用にて食事動作が自立した.電気刺激装置(IVES)を導入し,右上肢の回復が先行され遠位筋はMMT3~4,握力も2kgとなった.ADLでは自助具をせず,食事動作と整容動作が自立した.介入後期には立位安定性が向上し,トイレ動作は見守りとなり,入浴動作も一部介助まで生活拡大が得られた.【考察】GBSの予後予測として発症年齢が40歳代以上で完全四肢麻痺を呈すると,回復遅延群となる可能性が高いとされている.本症例もその群に近似であり,長期的な介入の必要性が示唆された.この様な経過をとる場合,症例と常に中立的な立ち位置にOTがあり,何を目的とするのかを明確に伝え,短期目標の達成を積み重ねていく必要があると考えられる.本症例ではIVESによる運動機能向上が認められADL自立度も改善された.その反面,症状回復期には疾患の特徴として,積極的なADL参加が,末梢神経の回復を遅延させることもある為,自立度回復による症例への教育やコメディカルスタッフとの生活遂行拡大の段階付けは,生活支援者としてのOTの役割として重要と考えられる.