[PE-4-2] ポスター:神経難病 4孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病患者の作業療法経験
【はじめに】
国指定難病であるクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:以下CJD)は,感染性を有するプリオン蛋白の中枢神経系への蓄積にて発症し,急速に病状が進行する致死的疾患である.本疾患に関する作業療法報告は少ないため,今後の作業療法の参考にすべく以下に報告する.
【対象】
50歳台女性.実父が経営する会社にて事務員をしていた.仕事上での計算が困難となり当院脳神経内科を受診し,CJDの疑いと診断され入院加療となる.病前生活は自立していた.両親と同居し趣味は運動と数独であった.本人は今後も自宅で生活したいと希望された.以下の期間,入退院を繰り返す中でOTを実施した. 全体を4期に分けて記載する.
【第1期】入院OTを23日間 (2~27病日) 【第2期】外来OTを3日間 (61~75病日)
【第3期】入院OTを4日間 (125~128病日) 【第4期】外来OTを1日間 (197病日)
【方法】
カルテよりFIM・握力・Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)・HDS-R・MMSE・SDSうつ性自己評価尺度(以下SDS)の結果と,本人や家族の発言や主観的情報を収集した.
なお本研究は本人の同意および当院倫理審査の承認を得ている.(承認番号:MR3-15)
【経過】
第1期:表情は明るく意思疎通可能で,作業療法全般に意欲的である.FIMは124/126点とADLは概ね自立にある.握力は右が35.9kgで左が36.0kgで,BRSは上肢・手指・下肢VIであった.これらより,身体機能面での著明な低下は認めなかった.HDS-Rは26/30点でMMSEは27/30点であり,見当識や計算項目で減点を認めた.SDSは35/80点と抑うつは疑われなかった.
第2期:表情が明るく歩行にて通院する.自宅内ADLは自立も,単独での外出が困難と家族から情報あり.FIMは110/126点で認知項目を中心に減点された.HDS-Rは18/30点でMMSEが20/30点で,第1期と比較し見当識・記憶項目で減点を認めた.SDSは36/80点で著明な変化なし.
第3期:落ち着かず日中に病棟を徘徊する姿も見られる.簡単な会話は可能で,作業療法は落ち着いて行えた.FIMは79/126点(運動項目:63/91点,認知項目:16/35点)となる.握力は右が31.0kgで左が28.7kgで第1期と比較し低下を認めた.BRSは上肢・手指・下肢でVIであり,錐体路障害は認めなかった.HDS-Rが6/30点でMMSEが10/30点となり,第2期から更に見当識・記憶で低下を認め,注意機能の低下も認めた.
第4期:車椅子にて通院し十分な指示理解が困難であった. FIMは全般的に介助を要すると家族より情報あり.HDS-Rは4/30点でMMSEが7/30点と,第3期から更に減点された.
家族へ移乗などの介助方法を指導し,自宅での生活継続に好影響を与えた.
380病日,他院にて息を引き取った.
【考察】
病状の進行に併せた作業療法プログラムや生活指導が求められた.転倒事故なく入院生活や自宅療養ができたことはOTが介入した利点と言える.今回の症例は,CJDによる高次脳機能障害を主体としたADL低下を呈していたが,プリオン蛋白の蓄積部位によって錐体路障害や小脳症状が主体となる症例も見られる.病状の進行の速さを念頭に置いた評価や訓練,指導などを柔軟に取り入れることの重要性が示唆された.また評価に際しては,プリオン病自然調査研究に用いられるMedical Research Council Prion Disease Rating Scale(MRC Scale)などの使用も考慮すべきであった.
国指定難病であるクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:以下CJD)は,感染性を有するプリオン蛋白の中枢神経系への蓄積にて発症し,急速に病状が進行する致死的疾患である.本疾患に関する作業療法報告は少ないため,今後の作業療法の参考にすべく以下に報告する.
【対象】
50歳台女性.実父が経営する会社にて事務員をしていた.仕事上での計算が困難となり当院脳神経内科を受診し,CJDの疑いと診断され入院加療となる.病前生活は自立していた.両親と同居し趣味は運動と数独であった.本人は今後も自宅で生活したいと希望された.以下の期間,入退院を繰り返す中でOTを実施した. 全体を4期に分けて記載する.
【第1期】入院OTを23日間 (2~27病日) 【第2期】外来OTを3日間 (61~75病日)
【第3期】入院OTを4日間 (125~128病日) 【第4期】外来OTを1日間 (197病日)
【方法】
カルテよりFIM・握力・Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)・HDS-R・MMSE・SDSうつ性自己評価尺度(以下SDS)の結果と,本人や家族の発言や主観的情報を収集した.
なお本研究は本人の同意および当院倫理審査の承認を得ている.(承認番号:MR3-15)
【経過】
第1期:表情は明るく意思疎通可能で,作業療法全般に意欲的である.FIMは124/126点とADLは概ね自立にある.握力は右が35.9kgで左が36.0kgで,BRSは上肢・手指・下肢VIであった.これらより,身体機能面での著明な低下は認めなかった.HDS-Rは26/30点でMMSEは27/30点であり,見当識や計算項目で減点を認めた.SDSは35/80点と抑うつは疑われなかった.
第2期:表情が明るく歩行にて通院する.自宅内ADLは自立も,単独での外出が困難と家族から情報あり.FIMは110/126点で認知項目を中心に減点された.HDS-Rは18/30点でMMSEが20/30点で,第1期と比較し見当識・記憶項目で減点を認めた.SDSは36/80点で著明な変化なし.
第3期:落ち着かず日中に病棟を徘徊する姿も見られる.簡単な会話は可能で,作業療法は落ち着いて行えた.FIMは79/126点(運動項目:63/91点,認知項目:16/35点)となる.握力は右が31.0kgで左が28.7kgで第1期と比較し低下を認めた.BRSは上肢・手指・下肢でVIであり,錐体路障害は認めなかった.HDS-Rが6/30点でMMSEが10/30点となり,第2期から更に見当識・記憶で低下を認め,注意機能の低下も認めた.
第4期:車椅子にて通院し十分な指示理解が困難であった. FIMは全般的に介助を要すると家族より情報あり.HDS-Rは4/30点でMMSEが7/30点と,第3期から更に減点された.
家族へ移乗などの介助方法を指導し,自宅での生活継続に好影響を与えた.
380病日,他院にて息を引き取った.
【考察】
病状の進行に併せた作業療法プログラムや生活指導が求められた.転倒事故なく入院生活や自宅療養ができたことはOTが介入した利点と言える.今回の症例は,CJDによる高次脳機能障害を主体としたADL低下を呈していたが,プリオン蛋白の蓄積部位によって錐体路障害や小脳症状が主体となる症例も見られる.病状の進行の速さを念頭に置いた評価や訓練,指導などを柔軟に取り入れることの重要性が示唆された.また評価に際しては,プリオン病自然調査研究に用いられるMedical Research Council Prion Disease Rating Scale(MRC Scale)などの使用も考慮すべきであった.