第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

がん

[PF-2] ポスター:がん 2

2022年9月16日(金) 14:00 〜 15:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PF-2-4] ポスター:がん 2当院におけるがん作業療法介入等の枠組みの作成

野村 真弓1金子 美鈴1岩尾 武宜1早坂 早紀1並木 幹子1 (1労働者健康安全機構 関東労災病院中央リハビリテーション部)

【はじめに】
当院は地域がん診療拠点病院に指定された急性期総合病院であり,がんリハビリテーション(以下がんリハ)では,疾患,病期共に様々で,幅広い対応が求められる.しかし,作業療法(以下OT)分野での急性期病院におけるがんリハビリテーションの目標および介入をまとめた報告は少なく,当院においても各OTRにおける臨床経験をもとに実施されていた.OT部門では,介入等の共有を目的に毎週がんリハカンファレンス(以下カンファ)を実施している.今回,カンファ内容を後方視的に調査し,当院OTの介入等の指針(以下介入指針)を作成し,介入の統一化を図ったので報告する.
【目的】
急性期総合病院である当院OTのがんリハ介入指針を作成すること.
【方法】
対象者は,2020年7月から12月までに実施した患者216名とした.プロトコールのある乳がん患者とOT介入が少なかった患者は除外している.患者属性データとカンファ記録シート(以下カンファシート)の集計,介入等指針の作成をした.患者属性データは,カンファ開始時のものをカルテから抽出,評価,目標,介入内容及びOT視点は,カンファシートに記録された文言を筆者がラベル化し,集計した.その集計内容を,がんリハ経験を複数年有する作業療法士(以下OTR)5名にて,内容の検討と再分類を行い,三木恵美ら(2011)を参考に視点の整理と追加,「作業に関する自己評価」から,環境,連携項目を追加し,OT介入指針を作成した.患者情報の取り扱いについては,がんリハ介入時に患者より同意を得ている.
【結果】
(1)対象者データ集計:回復期97名,維持期83名,緩和期(維持期から緩和期に移行した者を含む)36名の計216名(男性132名,女性84名),平均年齢は74.4±11.9歳であった.(2)カンファ記録集計:主なものについて記載する.評価は11項目345件.身体機能評価197件,ADL評価51件,認知機能評価34件であった.目標は,16項目496件で,機能維持・改善127件,ADL・IADL維持改善107件,運動習慣定着53件,生活リズム獲得23件,退院支援等45件であった.介入は,13項目385件,機能訓練154件,ADL訓練84件,活動提供25件,ニーズ聴取23件であった.OT視点は14項目343件,心理的アプローチ62件,ADL維持54件,機能維持48件,課題・活動機会提供31件であった.目標,介入,視点とも身体機能やADL維持改善が中心となっていた.(3)介入指針作成:評価は,心身機能,認知機能,ADL,ニーズ,心理・不安,生活歴,疼痛副作用とした.目標は,心理機能維持・向上,認知機能の維持・改善,感覚障害改善・対応方法,ADL・IADL維持・向上,退院支援,疼痛コントロール,ライフスタイル見直し・調整,活動・参加支援とした.介入は身体機能訓練,認知機能訓練,感覚訓練,ADL・IADL訓練,退院支援,疼痛対処,生活リズム獲得,外出・余暇活動支援,心理的支援,家族支援・指導,情報共有とした.OT視点は患者とその生活を知るための関わり,自己イメージの向上,安全で安心な生活の支援,余暇・役割・社会的活動の遂行支援,人生の肯定感振り返りの支援,医療職との協業,家族の絆再確認の支援,安定した家族介護の支援,グリーフケア,環境の利用(人),環境の利用(場所)とした.連携は医療職と家族とした.
【考察】
介入指針作成により,臨床で使用する文言の統一化,目標,介入,OT視点の明確化が図れた.急性期病院は必然的に身体機能維持を目的とした役割が求められている.OTは多面的な関わりが必要とされ,今後,病期別の介入,作業を通した関わり,心理的支援等の介入や,他職種への説明の方法など検討していく必要がある.