第56回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-3] ポスター:がん 3

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PF-3-1] ポスター:がん 3化学療法を行った造血器腫瘍患者におけるサルコペニアの影響

三谷 真由美1北条 達郎1平尾 芹奈1松岡 亮仁2 (1坂出市立病院リハビリテーション科,2坂出市立病院内科)

【はじめに】
化学療法を完遂するために必要な日常生活動作(ADL)の維持を阻害する要因にサルコペニアがあり,転倒や骨折だけでなく生存率低下との関連も報告されている.化学療法中の患者において原疾患,治療の副作用および不適切な安静など様々なサルコペニアの要因があるが,リハビリ介入によってサルコペニアの進行を抑制することが化学療法を完遂する体力やモチベーションの維持に寄与すると考える.今回我々は化学療法中の造血器悪性腫瘍患者のサルコペニアの実態と治療完遂との関連について検討した.
【対象と方法】
積極的入院化学療法を行った造血器悪性腫瘍患者39例(男/女:20/19,年齢中央値:69.7歳)を対象にリハビリ開始時,化学療法終了時にAWGS2019の基準を用いてサルコペニアを評価し,骨格筋指数(SMI)の測定にはInbody770を用いた.さらにBody Mass Index (BMI),Barthel Index(BI),Performance Status (PS)も同時に評価した.本研究では化学療法開始前後におけるBMIとサルコペニアの関連,治療完遂に関連する因子を解析した.統計解析にはwindows版のR2.8.1(CRAN, freeware)を用いて平均値の比較にstudentのt検定を行い,有意水準は5%とした.対象症例には本発表について口頭にて十分説明し,同意を得た.
【結果】
化学療法開始前ではBMIが18.5未満,18.5-24.9,25.0以上においてサルコペニアはそれぞれ100%,32%,0%で認められ,化学療法終了時ではそれぞれ89%,40%,0%で認められた.化学療法完遂26例,未治療完遂13例において,SMIは化学療法前でそれぞれ6.4±1.1, 5.5±1.4(P =0.054),化学療法後で6.7±1.2, 5.4±1.4(P < 0.05)と有意に治療完遂群で高値を認めたが,年齢,BMI,PS,握力,BIについては有意差を認めなかった.未治療完遂の理由は化学療法による血球減少が9%,ADL低下が27%,本人の希望による中止が27%,化学療法無効もしくは病態進行が37%だった.
【考察】
原疾患の影響もあり,化学療法前にBMIが低い例においてサルコペニアが多く認められたが,原疾患の影響が薄くなる治療終了後で,標準体重例でもサルコペニアが40%認められた.未治療完遂が13例であったが,その理由にADL低下と本人の希望が半数を超えたことは現在のリハビリ介入に課題を残した.しかし治療完遂群ではSMIが有意に高いことが示されたことから,今後リハビリ方法を工夫することで筋肉量の低下を予防できれば,患者の予後向上に寄与できる可能性があると考える.