[PF-5-2] ポスター:がん 5終末期がん患者に対し,チームにて寄り添った支援~ SROT-TC による振り返りにより,チームアプローチに繋がった一症例~
【緒言】
終末期リハビリテーション(リハ)では,患者のQOL改善を目的に,「最期までその人らしく」を支援していくが,患者の社会的背景が多様化しその支援の在り方は一様ではない.
今回,作業療法士(OTR)が自らの実践の振り返りを通じて,多職種協働にて患者に寄り添う作業療法(OT)の経験を得たので報告する.本報告に際し,患者の同意を得ている.
【事例紹介,経過】
A氏,40代,女性.夫とは離別し,特別支援学級に通う自閉症の息子と二人暮らしであった.性格は明るく社交的な性格で交友関係は広く,仕事はブティックの店長をしていた.
X年左乳房腫瘤を自覚し,左乳がんの診断を受け全摘出術とリンパ郭清術が施行された.以降,自宅療養していたが,X+5年に転移性脳腫瘍が見つかった.放射線治療や化学療法を受けたが,腫瘍は増大し脳浮腫が著明となったため開頭腫瘍摘出術が施行された.致死的合併は回避されたものの,今後,治療の奏功は低いと判断されBest Supportive Careとなり当院ホスピスへ転院となった.キーパーソンである母親とは,折り合いが悪く今まで頼ることは無かったが,今回を機に連絡を取り,息子は母親と同居をすることとなった.
OT介入時評価は,Functional Independence Measure(FIM)67点(運動32点,認知35点),カナダ作業遂行測定(COPM)は①トイレで排泄したい(重要度:10遂行度:1満足度:1)②車椅子自走して移動したい(重要度:8遂行度:1満足度:1),がん患者の病気に対する効力感尺度(SEAC)は65.05点だった.リハの必要性を理解され意欲的に取り組まれる反面, OTRの声かけに急に泣きだしたり,OTにて獲得した動作が生活に汎化されない状況にあった.そこでOTRは終末期がん患者に対する作業療法士の実践自己評価尺度(SROT-TC)にて振り返りを行い,自らの役割がどの程度果たせているか確認した.結果,家族への情報提供の在り方やA氏のライフレビューを大切にしながら,A氏自身が意思決定ができるよう支援を行う必要があることが分かった.多職種とリハ状況を共有し,家族への情報提供をタイムリーに行えるようにした.また,OTRはA氏が今までのような生活が出来なくなったことへの喪失感や母親としての役割への重圧,治療が終わり今後の自らの人生についてなど実存的不安を抱えていたことが分かった.OTRは支持的な介入を継続しながら,A氏の想いについて多職種と共有し,チームで協働しA氏の心理的サポートを充実させることに繋げた.
最終評価(OT介入29日目)では,FIM84点,COPM①トイレで排泄したい(10:7:6)②車椅子自走して移動したい(9:5:5),SEACは71.67点と改善した.さらに「歩きたい」と新たな希望を持ち日々練習に励んでいる.
【考察】
A氏は自身の病気だけでなく,障害児の母親として役割が遂行できないこと,今後の人生に対する漠然とした不安など全人的苦痛を抱えていた.そのため日々,心身が動揺し,OT 中に泣き出したり,獲得した動作が生活に汎化できなかったのだろう.
今回,SROT-TCにてOT介入を振り返ることで,OTR自身が果たすべき役割の不足を認識するとともに,他職種と互いに補完的役割を担い,チームとしてA氏を支援するきっかけとなった.各職種と統一してA氏の思いに寄り添える支援が可能となり,結果,A氏のADLや作業に対する満足度,遂行度,自己効力感等の改善に繋がったものと考える.
終末期リハビリテーション(リハ)では,患者のQOL改善を目的に,「最期までその人らしく」を支援していくが,患者の社会的背景が多様化しその支援の在り方は一様ではない.
今回,作業療法士(OTR)が自らの実践の振り返りを通じて,多職種協働にて患者に寄り添う作業療法(OT)の経験を得たので報告する.本報告に際し,患者の同意を得ている.
【事例紹介,経過】
A氏,40代,女性.夫とは離別し,特別支援学級に通う自閉症の息子と二人暮らしであった.性格は明るく社交的な性格で交友関係は広く,仕事はブティックの店長をしていた.
X年左乳房腫瘤を自覚し,左乳がんの診断を受け全摘出術とリンパ郭清術が施行された.以降,自宅療養していたが,X+5年に転移性脳腫瘍が見つかった.放射線治療や化学療法を受けたが,腫瘍は増大し脳浮腫が著明となったため開頭腫瘍摘出術が施行された.致死的合併は回避されたものの,今後,治療の奏功は低いと判断されBest Supportive Careとなり当院ホスピスへ転院となった.キーパーソンである母親とは,折り合いが悪く今まで頼ることは無かったが,今回を機に連絡を取り,息子は母親と同居をすることとなった.
OT介入時評価は,Functional Independence Measure(FIM)67点(運動32点,認知35点),カナダ作業遂行測定(COPM)は①トイレで排泄したい(重要度:10遂行度:1満足度:1)②車椅子自走して移動したい(重要度:8遂行度:1満足度:1),がん患者の病気に対する効力感尺度(SEAC)は65.05点だった.リハの必要性を理解され意欲的に取り組まれる反面, OTRの声かけに急に泣きだしたり,OTにて獲得した動作が生活に汎化されない状況にあった.そこでOTRは終末期がん患者に対する作業療法士の実践自己評価尺度(SROT-TC)にて振り返りを行い,自らの役割がどの程度果たせているか確認した.結果,家族への情報提供の在り方やA氏のライフレビューを大切にしながら,A氏自身が意思決定ができるよう支援を行う必要があることが分かった.多職種とリハ状況を共有し,家族への情報提供をタイムリーに行えるようにした.また,OTRはA氏が今までのような生活が出来なくなったことへの喪失感や母親としての役割への重圧,治療が終わり今後の自らの人生についてなど実存的不安を抱えていたことが分かった.OTRは支持的な介入を継続しながら,A氏の想いについて多職種と共有し,チームで協働しA氏の心理的サポートを充実させることに繋げた.
最終評価(OT介入29日目)では,FIM84点,COPM①トイレで排泄したい(10:7:6)②車椅子自走して移動したい(9:5:5),SEACは71.67点と改善した.さらに「歩きたい」と新たな希望を持ち日々練習に励んでいる.
【考察】
A氏は自身の病気だけでなく,障害児の母親として役割が遂行できないこと,今後の人生に対する漠然とした不安など全人的苦痛を抱えていた.そのため日々,心身が動揺し,OT 中に泣き出したり,獲得した動作が生活に汎化できなかったのだろう.
今回,SROT-TCにてOT介入を振り返ることで,OTR自身が果たすべき役割の不足を認識するとともに,他職種と互いに補完的役割を担い,チームとしてA氏を支援するきっかけとなった.各職種と統一してA氏の思いに寄り添える支援が可能となり,結果,A氏のADLや作業に対する満足度,遂行度,自己効力感等の改善に繋がったものと考える.