[PF-5-3] ポスター:がん 5終末期がん患者の意味のある作業を支えることとQOL変化に関する研究
【はじめに】
終末期がん患者(患者)は,痛み,倦怠感,不安など様々な苦痛を伴うが,患者が何らかの希望を持つ事は,困難な状況の打開や自己存在を肯定できる原動力となる.希望は実現可能か不可能かに関わらず,患者の安らぎや幸福を求める思いであるとされている.また,意味のある作業とはその人独自のものであり,その作業を行う事は人生の質に貢献すると言われている.今回患者の希望する活動を支える事がQOLの改善につながるか,McGill Quality of Life Questionnaire日本語版(MQOL)を使用して調査した.MQOLは終末期がん患者のQOL評価で,スピリチュアル面などを含めた全体的なOverall QOL(O.QOL)と,身体面,心理面,実存面,サポート面の4側面と4側面合計の評価が可能である.
【対象と方法】
2017年1月から2021年12月までに当院へ入院し,調査に協力を得られた患者(平均年齢72.9歳±13.0,男性13名女性6名)を対象とした.リハビリテーション(リハ)介入時に,希望する活動を聴取し,希望する活動あり(活動あり群)と希望する活動なし(活動なし群)にわけて,入院中のQOL変化を調査した.QOLはMQOLを使用して評価し,希望する活動の有無と評価時期の2要因で二元配置分散分析を行った.QOLは患者への負担を考慮して,リハ介入1週間以内(初期)と初期評価から2週間後(最終)に評価を行った.年齢,Palliative Prognostic Index(PPI),入院時Performance status(PS),在院日数についてt検定を行った.脳転移,認知症などで意思疎通困難な患者は除外した.統計解析はEZR ver1.41を用し有意水準を5%とした.本研究は当院の医療倫理委員会の承認を得た.
【結果】
活動あり群は平均年齢71.7歳±16.2,男性8名,女性5名,PPI3.7±2.0,PS3.3±0.8,在院日数56.5日±22.7であった.活動の内容は,「家族との時間を大切にしたい」「愛犬に会いたい」など生活環境と対人関係の希望が7例,「楽器の演奏をしたい/教えたい」「手芸を続ける/教えたい」など趣味活動の希望が4例,「話せるようになりたい」「入浴」などセルフケアの希望が2例であった.活動なし群は平均年齢75.5歳±1.6,男性5名,女性1名,PPI5.0±1.6,PS3.5±0.5,在院日数43.0日±15.3であった.t検定の結果,年齢,PS,PPI,在院日数に有意差は認めなかった.MQOLはO.QOLの活動あり群で初期5.2点±2.7,最終6.6点±2.1,活動なし群で初期6.6点±1.9,最終4.3点±2.7で交互作用を認めた(P=0.03,η2=0.12).心理面は活動あり群で初期5.0点±2.4,最終6.4 点± 2.5 , 活動なし群で初期6.4 点± 1.1 , 最終4.7 点± 1.6 で交互作用は認めなかった(P=0.05,η2=0.10).合計は活動あり群で初期5.4点±1.8,最終6.3点±1.3,活動なし群で初期5.8点±0.9,最終5.1点±0.2交互作用は認めなかった(P=0.11,η2 =0.07).
【考察】
O.QOLは心身機能だけではなく,スピリチュアル面なども含めた全体的な生活の質を問う項目である.MQOLのその他の側面では有意差は認めなかったものの,活動あり群で改善傾向にあったため,これらがO.QOLの改善に寄与したと考えられた.趣味活動の継続は自ら行うだけではなく,他者に教える,演奏を聴いてもらうなど,活動を通した役割や存在価値といった対人関係に関する内容も含まれていた.本調査において,セルフケアはもとより生活環境と対人関係,趣味活動などの希望はいずれも患者個人が大切にしている活動で,これらは意味のある作業といえる.患者にとって意味のある作業を継続する事,また,病状が進行して完遂困難の状況であっても部分的に何らかの形で携われるように支える事は,QOLの改善に寄与すると考えた.
終末期がん患者(患者)は,痛み,倦怠感,不安など様々な苦痛を伴うが,患者が何らかの希望を持つ事は,困難な状況の打開や自己存在を肯定できる原動力となる.希望は実現可能か不可能かに関わらず,患者の安らぎや幸福を求める思いであるとされている.また,意味のある作業とはその人独自のものであり,その作業を行う事は人生の質に貢献すると言われている.今回患者の希望する活動を支える事がQOLの改善につながるか,McGill Quality of Life Questionnaire日本語版(MQOL)を使用して調査した.MQOLは終末期がん患者のQOL評価で,スピリチュアル面などを含めた全体的なOverall QOL(O.QOL)と,身体面,心理面,実存面,サポート面の4側面と4側面合計の評価が可能である.
【対象と方法】
2017年1月から2021年12月までに当院へ入院し,調査に協力を得られた患者(平均年齢72.9歳±13.0,男性13名女性6名)を対象とした.リハビリテーション(リハ)介入時に,希望する活動を聴取し,希望する活動あり(活動あり群)と希望する活動なし(活動なし群)にわけて,入院中のQOL変化を調査した.QOLはMQOLを使用して評価し,希望する活動の有無と評価時期の2要因で二元配置分散分析を行った.QOLは患者への負担を考慮して,リハ介入1週間以内(初期)と初期評価から2週間後(最終)に評価を行った.年齢,Palliative Prognostic Index(PPI),入院時Performance status(PS),在院日数についてt検定を行った.脳転移,認知症などで意思疎通困難な患者は除外した.統計解析はEZR ver1.41を用し有意水準を5%とした.本研究は当院の医療倫理委員会の承認を得た.
【結果】
活動あり群は平均年齢71.7歳±16.2,男性8名,女性5名,PPI3.7±2.0,PS3.3±0.8,在院日数56.5日±22.7であった.活動の内容は,「家族との時間を大切にしたい」「愛犬に会いたい」など生活環境と対人関係の希望が7例,「楽器の演奏をしたい/教えたい」「手芸を続ける/教えたい」など趣味活動の希望が4例,「話せるようになりたい」「入浴」などセルフケアの希望が2例であった.活動なし群は平均年齢75.5歳±1.6,男性5名,女性1名,PPI5.0±1.6,PS3.5±0.5,在院日数43.0日±15.3であった.t検定の結果,年齢,PS,PPI,在院日数に有意差は認めなかった.MQOLはO.QOLの活動あり群で初期5.2点±2.7,最終6.6点±2.1,活動なし群で初期6.6点±1.9,最終4.3点±2.7で交互作用を認めた(P=0.03,η2=0.12).心理面は活動あり群で初期5.0点±2.4,最終6.4 点± 2.5 , 活動なし群で初期6.4 点± 1.1 , 最終4.7 点± 1.6 で交互作用は認めなかった(P=0.05,η2=0.10).合計は活動あり群で初期5.4点±1.8,最終6.3点±1.3,活動なし群で初期5.8点±0.9,最終5.1点±0.2交互作用は認めなかった(P=0.11,η2 =0.07).
【考察】
O.QOLは心身機能だけではなく,スピリチュアル面なども含めた全体的な生活の質を問う項目である.MQOLのその他の側面では有意差は認めなかったものの,活動あり群で改善傾向にあったため,これらがO.QOLの改善に寄与したと考えられた.趣味活動の継続は自ら行うだけではなく,他者に教える,演奏を聴いてもらうなど,活動を通した役割や存在価値といった対人関係に関する内容も含まれていた.本調査において,セルフケアはもとより生活環境と対人関係,趣味活動などの希望はいずれも患者個人が大切にしている活動で,これらは意味のある作業といえる.患者にとって意味のある作業を継続する事,また,病状が進行して完遂困難の状況であっても部分的に何らかの形で携われるように支える事は,QOLの改善に寄与すると考えた.