[PF-5-4] ポスター:がん 5右前頭側頭葉腫瘍摘出術後の意欲低下に対するアプローチで日中の活動性が一時的に向上した一例
【はじめに】
右前頭側頭葉膠芽腫と診断され,腫瘍摘出術後に意欲低下や前頭葉症状を呈した60代前半の女性に対し,日中の活動性の向上や認知機能改善のため日記を導入する作業療法を行ったところ,一定期間ではあるが改善がみられたため報告する.なお,報告にあたっては患者から同意を得ている.
【現病歴・初期評価】
頭痛や食欲不振が増悪したため前医を受診し,脳腫瘍を指摘された.7日後に当院へ転院となり,入院4日後に腫瘍摘出術が施行された.リハビリテーションは術後3日目に開始となった.Mini Mental State Examinationは22点で減点項目は見当識,計算,理解であった.Trail Making Test 日本版はPart A練習が37秒,Part A本番が65秒,Part B練習が69秒,Part B本番は実施不可能であった.前頭葉機能検査(Frontal Assessment Battery: FAB)は12点で減点項目は知的柔軟性,反応の選択,GO/NO-GOであった.握力は右19.5㎏,左16.5㎏,徒手筋力テストは左肩関節屈曲と外転のみGでその他はNであった.明らかな運動麻痺は認められなかった.頭痛や嘔気が著明で,日中はベッドに臥床して過ごしていることがほとんどであった.
【作業療法実施計画】
初めは病棟にて離床を進め,その後は持続性・選択性注意機能の向上のため認知機能賦活課題や,身体機能維持のための耐久性向上を目標に筋力訓練を行うこととした.加えて,日中の活動性を向上させるため,覚醒を促すための声掛けをこまめに行うこととした.
【経過・結果】
1回20~40分の作業療法を週5回実施した.病棟から開始したが頭痛や嘔気,意欲低下によりリハビリテーションを拒否する日が続いた.日中は臥床傾向であったため離床が進んだのちに,作業療法室でのリハビリテーションに加え,日中の活動性向上や認知機能の改善のために病棟で日記を書いてもらい持参してもらうこととした.作業療法においては,多弁さや選択性・持続性注意機能の低下が目立っていた.また,認知機能や注意機能の低下により,日付や記入する用紙を間違えたりする失敗が続いたため,その都度日記の書式を改善し理解しやすいように工夫し,日付を確認する頻度や声掛けを増やした.また,意欲低下の評価を追加し,目標の確認や,やりたいことを引き出すことを目的にADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice)を使用した.その後,病棟では一人でトイレに行けるようになるなど日常生活動作(ADL)が自立し,日中は端座位になって過ごすなど活動性が向上した.また,作業療法では認知機能賦活課題に取り組む際に多弁さや選択性注意機能が改善し,集中して取り組むことができた.
リハビリテーション治療開始から39日頃から脱抑制などの前頭葉症状が増悪し,認知機能,注意機能や筋力も初期評価時より低下したが,他の身体機能や活動性,病棟内ADLは自立していた.リハビリテーション治療開始から64日後に回復期病院へ転院となった.
【考察】
膠芽腫の予後は1年程度であり,短期間で最大の生活の質を目指す必要がある.日記を導入した作業療法は,転院前は脱抑制症状の増悪がみられ病状の悪化が考えられたが,それまでは一時的に活動性を向上させた.病状に合わせて難易度を変更できる日記は,変化する病状の中でも継続することができ,生活の質を維持することにつながったと考える.
また,覚醒の機会を作るために作業療法士もこまめに訪室し,声掛けをすることにより,日中の活動性を向上させ,生活リズムを整えることにつながったと考える.
右前頭側頭葉膠芽腫と診断され,腫瘍摘出術後に意欲低下や前頭葉症状を呈した60代前半の女性に対し,日中の活動性の向上や認知機能改善のため日記を導入する作業療法を行ったところ,一定期間ではあるが改善がみられたため報告する.なお,報告にあたっては患者から同意を得ている.
【現病歴・初期評価】
頭痛や食欲不振が増悪したため前医を受診し,脳腫瘍を指摘された.7日後に当院へ転院となり,入院4日後に腫瘍摘出術が施行された.リハビリテーションは術後3日目に開始となった.Mini Mental State Examinationは22点で減点項目は見当識,計算,理解であった.Trail Making Test 日本版はPart A練習が37秒,Part A本番が65秒,Part B練習が69秒,Part B本番は実施不可能であった.前頭葉機能検査(Frontal Assessment Battery: FAB)は12点で減点項目は知的柔軟性,反応の選択,GO/NO-GOであった.握力は右19.5㎏,左16.5㎏,徒手筋力テストは左肩関節屈曲と外転のみGでその他はNであった.明らかな運動麻痺は認められなかった.頭痛や嘔気が著明で,日中はベッドに臥床して過ごしていることがほとんどであった.
【作業療法実施計画】
初めは病棟にて離床を進め,その後は持続性・選択性注意機能の向上のため認知機能賦活課題や,身体機能維持のための耐久性向上を目標に筋力訓練を行うこととした.加えて,日中の活動性を向上させるため,覚醒を促すための声掛けをこまめに行うこととした.
【経過・結果】
1回20~40分の作業療法を週5回実施した.病棟から開始したが頭痛や嘔気,意欲低下によりリハビリテーションを拒否する日が続いた.日中は臥床傾向であったため離床が進んだのちに,作業療法室でのリハビリテーションに加え,日中の活動性向上や認知機能の改善のために病棟で日記を書いてもらい持参してもらうこととした.作業療法においては,多弁さや選択性・持続性注意機能の低下が目立っていた.また,認知機能や注意機能の低下により,日付や記入する用紙を間違えたりする失敗が続いたため,その都度日記の書式を改善し理解しやすいように工夫し,日付を確認する頻度や声掛けを増やした.また,意欲低下の評価を追加し,目標の確認や,やりたいことを引き出すことを目的にADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice)を使用した.その後,病棟では一人でトイレに行けるようになるなど日常生活動作(ADL)が自立し,日中は端座位になって過ごすなど活動性が向上した.また,作業療法では認知機能賦活課題に取り組む際に多弁さや選択性注意機能が改善し,集中して取り組むことができた.
リハビリテーション治療開始から39日頃から脱抑制などの前頭葉症状が増悪し,認知機能,注意機能や筋力も初期評価時より低下したが,他の身体機能や活動性,病棟内ADLは自立していた.リハビリテーション治療開始から64日後に回復期病院へ転院となった.
【考察】
膠芽腫の予後は1年程度であり,短期間で最大の生活の質を目指す必要がある.日記を導入した作業療法は,転院前は脱抑制症状の増悪がみられ病状の悪化が考えられたが,それまでは一時的に活動性を向上させた.病状に合わせて難易度を変更できる日記は,変化する病状の中でも継続することができ,生活の質を維持することにつながったと考える.
また,覚醒の機会を作るために作業療法士もこまめに訪室し,声掛けをすることにより,日中の活動性を向上させ,生活リズムを整えることにつながったと考える.