[PG-1-4] ポスター:内科疾患 1残存機能を活かした介入が大切な作業の再開に繋がった一事例
また好きな占いができる
【はじめに】今回,疾病に起因する能力障害から「占い」という大切な作業が行えなくなり,家に閉じこもる生活へと変化していた事例を担当した.残存機能を活かした作業方法の工夫・福祉用具の使用・実際に経験する場を作った介入により在宅復帰だけでなく,本人が諦めていた大切な作業の再開に繋がった.その関わりについて報告する. 尚,発表に際し書面にて事例の同意を得た.
【事例紹介】A氏,50歳代,女性,前職占い師. BMI29.21.左足首捻挫し1ヶ月間の自宅療養中に歩行困難となりX年Y月Z日に当院入院.2型糖尿病の診断を受ける.認知機能とコミュニケーションは問題なかった.表在感覚は両手指と足底が中等度鈍麻,全身の筋力低下があり特に両膝関節伸展と両手指伸展がMMT2であった.手指の巧緻性は低下し紙をめくる,ちぎることは出来なかった.基本動作は起座と端座位保持は軽介助で行えたが,起立と移乗は重度介助で膝折れによる転倒のリスクがあった. 食事と整容以外のセルフケアに介助が必要でFIM56点(運動21点,認知35点 )であった.
【経過】第Ⅰ期:「トイレをなんとかしたい」との訴えからトイレ動作獲得を目標に介入した. Z+14日, ポータブルトイレでの排泄が高座位からの起立・膝関節伸展位での移乗・下衣操作介助下で可能となった.Z+18日,「占いはカードを持てなくなって辞めた.家に閉じこもることが増えたのが良くなかった」との発言があった.カードを取る,切る時に手から滑り落ちることがあったがゴム手袋を着用するとカードを落とすことなく行えた.A氏に「作業療法実習生を占ってもらえないか」と依頼すると,約1時間学生を占いと相談にのりアドバイスを行う様子があった.実施後に「諦めなくてもいいのかも」と前向きな発言があった.第Ⅱ期:Z+40日,片手支持物把持での立位動作が安定してきたが,屈んでの動作は膝折れのリスクがあった.そのためトイレでのリハビリパンツと下衣の引き上げは,腹部が凸体型であること, 下衣類を把持しにくいことが影響し,衣類が落下してしまい自力では困難であった.そこで,座位で安全ピン型のストール留めでリハビリパンツと肌着, 上衣と下衣を固定し,立位で落下してしまうことを防止し,把持ではなく拳を入れながら引き上げることを提案し可能となった.Z+46日,自宅内移動は転倒リスクが高く歩行の実用性がないと考えベラ・チェアの使用と,屋外は電動車椅子を使用することを検討した.第Ⅲ期:Z+56日,家屋評価を実施し福祉用具の提案と設置を行った.ベラ・チェアを使用した移動やトイレ動作は安全に行えた.入浴は動線含め困難であり,退院後に訪問リハビリテーションで検討することとなりZ+60日に自宅退院となった.
【結果】退院後,入浴以外のセルフケアは自立しFIM92点(運動57点,認知35点)に改善.Z+180日,自宅での入浴,家族との外出,SNSを利用した占いができているとの情報を得た.
【考察】今回,A氏の占いへの想いを知った時に,残存している認知機能とコミュニケーションという強みを活かし,感覚障害と筋力低下により巧緻作業が行えないことを補うためゴム手袋着用の提案を行った.そして,占い師時代と同じ客層の作業療法学生に実際に占うというA氏にとって大切な作業を経験する場を作った. これらの経験はA氏の自己効力感を高め,その後のトイレ下衣操作など初めて行う方法も受け入れやすくさせ,退院後の大切な作業の再開への一助となった. 残存機能を活かし「工夫すれば今の私にもできる」という経験は, 本事例のように早期に身体機能の回復が期待できない場合有効である.対象者の生活を短期間で変化させることができ,作業療法に必要な介入であると考える.
【事例紹介】A氏,50歳代,女性,前職占い師. BMI29.21.左足首捻挫し1ヶ月間の自宅療養中に歩行困難となりX年Y月Z日に当院入院.2型糖尿病の診断を受ける.認知機能とコミュニケーションは問題なかった.表在感覚は両手指と足底が中等度鈍麻,全身の筋力低下があり特に両膝関節伸展と両手指伸展がMMT2であった.手指の巧緻性は低下し紙をめくる,ちぎることは出来なかった.基本動作は起座と端座位保持は軽介助で行えたが,起立と移乗は重度介助で膝折れによる転倒のリスクがあった. 食事と整容以外のセルフケアに介助が必要でFIM56点(運動21点,認知35点 )であった.
【経過】第Ⅰ期:「トイレをなんとかしたい」との訴えからトイレ動作獲得を目標に介入した. Z+14日, ポータブルトイレでの排泄が高座位からの起立・膝関節伸展位での移乗・下衣操作介助下で可能となった.Z+18日,「占いはカードを持てなくなって辞めた.家に閉じこもることが増えたのが良くなかった」との発言があった.カードを取る,切る時に手から滑り落ちることがあったがゴム手袋を着用するとカードを落とすことなく行えた.A氏に「作業療法実習生を占ってもらえないか」と依頼すると,約1時間学生を占いと相談にのりアドバイスを行う様子があった.実施後に「諦めなくてもいいのかも」と前向きな発言があった.第Ⅱ期:Z+40日,片手支持物把持での立位動作が安定してきたが,屈んでの動作は膝折れのリスクがあった.そのためトイレでのリハビリパンツと下衣の引き上げは,腹部が凸体型であること, 下衣類を把持しにくいことが影響し,衣類が落下してしまい自力では困難であった.そこで,座位で安全ピン型のストール留めでリハビリパンツと肌着, 上衣と下衣を固定し,立位で落下してしまうことを防止し,把持ではなく拳を入れながら引き上げることを提案し可能となった.Z+46日,自宅内移動は転倒リスクが高く歩行の実用性がないと考えベラ・チェアの使用と,屋外は電動車椅子を使用することを検討した.第Ⅲ期:Z+56日,家屋評価を実施し福祉用具の提案と設置を行った.ベラ・チェアを使用した移動やトイレ動作は安全に行えた.入浴は動線含め困難であり,退院後に訪問リハビリテーションで検討することとなりZ+60日に自宅退院となった.
【結果】退院後,入浴以外のセルフケアは自立しFIM92点(運動57点,認知35点)に改善.Z+180日,自宅での入浴,家族との外出,SNSを利用した占いができているとの情報を得た.
【考察】今回,A氏の占いへの想いを知った時に,残存している認知機能とコミュニケーションという強みを活かし,感覚障害と筋力低下により巧緻作業が行えないことを補うためゴム手袋着用の提案を行った.そして,占い師時代と同じ客層の作業療法学生に実際に占うというA氏にとって大切な作業を経験する場を作った. これらの経験はA氏の自己効力感を高め,その後のトイレ下衣操作など初めて行う方法も受け入れやすくさせ,退院後の大切な作業の再開への一助となった. 残存機能を活かし「工夫すれば今の私にもできる」という経験は, 本事例のように早期に身体機能の回復が期待できない場合有効である.対象者の生活を短期間で変化させることができ,作業療法に必要な介入であると考える.