[PG-2-3] ポスター:内科疾患 2内部障害患者のQOLの身体的側面が影響する生活動作に関する検討
【はじめに】近年,本邦は高齢化に伴い内部障害による入院患者数は増加し,身体障害者の種類別割合でも増加傾向にある(上月:2009).また現在の医療では生命予後の改善のみではなく,生活の質(以下QOL)にも着眼されるようになってきた(久保田:2005).つまり内部障害患者も例外でなくQOLの維持向上が求められる.そして,作業療法で患者の日常生活や社会復帰に関わる上で,このQOLの観点を踏まえた介入は必須である.
QOLに関する報告は脳血管障害や悪性腫瘍を対象としたものが多く,内部障害患者のQOLに関する報告は少なく.QOLの評価として凡用されるSF -36は,身体的側面のQOLと精神的側面のQOLからスコアリングされる.身体的側面のQOLを表すスコアであるPhysical component summary(以下PCS)は身体機能,日常役割機能,身体の痛み,社会生活機能,活力,全体的健康感の項目から算出され,内部障害に対する作業療法介入に関連する項目と思われる.そのため本研究の目的は入院中の内部障害患者のQOLの身体的側面に関連する生活動作を検討することである.なお,本報告に際し当院倫理審査委員会の承認を得ている(2021-25).
【方法】対象は,2021年6月から12月までの期間に内部障害によって当院に入院し,作業療法を行った者とした.評価項目は既報告(山下公平:1996)を参考に,基本属性は年齢,性別とした.健康関連QOL尺度としてSF-36を使用し,PCSを算出した.また生活動作はFIMの運動項目から食事,整容,更衣(上衣),更衣(下衣),排泄,清拭,尿意コントロール,便意コントロール,ベッド移乗,トイレ移乗,歩行,階段昇降の12項目を採用した.そしてSF-36のPCSとFIM運動項目の12項目との相関関係については,SPSSを使用しSpearmanの順位相関係数を用いた相関分析を行い,影響する要因を探索した.
【結果】対象者は29名(男性12名,女性17名)で,平均年齢は81.5±9.8歳であった.SF-36のPCSは25.5±15.8であった.FIM各項目の平均は,食事6.28点,整容5.48点,更衣(上衣)3.28点,更衣(下衣)3.66点,排泄3.93点,清拭4.10点,尿意コントロール4.28点,便意コントロール5.03点,ベッド移乗4.90点,トイレ移乗4.93点,歩行4.17点,階段昇降2.62点であった.
順位相関係数はr>0.2以上を相関があるとみなし,整容を除いたすべての項目で相関があった.さらに順位相関係数の高い順は,尿意コントロール0.41,更衣(下衣)0.40,排泄0.40,清拭0.31,便意コントロール0.31が挙げられた.
【考察】分析の結果から,PCSと関連する項目はFIM運動項目から整容を除くすべての項目で相関があることが示された.つまり生活動作の自立度の低下はPCSに影響を与えると予想される.さらに,高い相関係数を示す項目に着眼すると,尿意コントロール,更衣(下衣),排泄,清拭,便意コントロールといずれもトイレ動作に含まれる項目が上位となった.この点から,生活動作の中でも特に,トイレ動作がPCSに関連する活動であると解釈される.従来,生活動作の介助量軽減を図る上で,トイレ動作に着目し優先的に介入する報告は散見されるが,その理由としては,介護負担の軽減を主たる目的としている場合が多い.今回の結果から,トイレ動作へ介入することの意義としてQOLの維持向上に反映される関わりとしても位置づけられると期待される.
【結語】入院中の内部障害患者のPCSに着目して,FIMの運動項目との関連性を検討した.その結果,整容以外の項目でPCSと相関関係にあることが明らかとなった.また強い相関を示す項目としてはトイレ動作に関連する項目が挙げられ,作業療法介入の優先度を再考する一助となると考えられた.
QOLに関する報告は脳血管障害や悪性腫瘍を対象としたものが多く,内部障害患者のQOLに関する報告は少なく.QOLの評価として凡用されるSF -36は,身体的側面のQOLと精神的側面のQOLからスコアリングされる.身体的側面のQOLを表すスコアであるPhysical component summary(以下PCS)は身体機能,日常役割機能,身体の痛み,社会生活機能,活力,全体的健康感の項目から算出され,内部障害に対する作業療法介入に関連する項目と思われる.そのため本研究の目的は入院中の内部障害患者のQOLの身体的側面に関連する生活動作を検討することである.なお,本報告に際し当院倫理審査委員会の承認を得ている(2021-25).
【方法】対象は,2021年6月から12月までの期間に内部障害によって当院に入院し,作業療法を行った者とした.評価項目は既報告(山下公平:1996)を参考に,基本属性は年齢,性別とした.健康関連QOL尺度としてSF-36を使用し,PCSを算出した.また生活動作はFIMの運動項目から食事,整容,更衣(上衣),更衣(下衣),排泄,清拭,尿意コントロール,便意コントロール,ベッド移乗,トイレ移乗,歩行,階段昇降の12項目を採用した.そしてSF-36のPCSとFIM運動項目の12項目との相関関係については,SPSSを使用しSpearmanの順位相関係数を用いた相関分析を行い,影響する要因を探索した.
【結果】対象者は29名(男性12名,女性17名)で,平均年齢は81.5±9.8歳であった.SF-36のPCSは25.5±15.8であった.FIM各項目の平均は,食事6.28点,整容5.48点,更衣(上衣)3.28点,更衣(下衣)3.66点,排泄3.93点,清拭4.10点,尿意コントロール4.28点,便意コントロール5.03点,ベッド移乗4.90点,トイレ移乗4.93点,歩行4.17点,階段昇降2.62点であった.
順位相関係数はr>0.2以上を相関があるとみなし,整容を除いたすべての項目で相関があった.さらに順位相関係数の高い順は,尿意コントロール0.41,更衣(下衣)0.40,排泄0.40,清拭0.31,便意コントロール0.31が挙げられた.
【考察】分析の結果から,PCSと関連する項目はFIM運動項目から整容を除くすべての項目で相関があることが示された.つまり生活動作の自立度の低下はPCSに影響を与えると予想される.さらに,高い相関係数を示す項目に着眼すると,尿意コントロール,更衣(下衣),排泄,清拭,便意コントロールといずれもトイレ動作に含まれる項目が上位となった.この点から,生活動作の中でも特に,トイレ動作がPCSに関連する活動であると解釈される.従来,生活動作の介助量軽減を図る上で,トイレ動作に着目し優先的に介入する報告は散見されるが,その理由としては,介護負担の軽減を主たる目的としている場合が多い.今回の結果から,トイレ動作へ介入することの意義としてQOLの維持向上に反映される関わりとしても位置づけられると期待される.
【結語】入院中の内部障害患者のPCSに着目して,FIMの運動項目との関連性を検討した.その結果,整容以外の項目でPCSと相関関係にあることが明らかとなった.また強い相関を示す項目としてはトイレ動作に関連する項目が挙げられ,作業療法介入の優先度を再考する一助となると考えられた.