[PH-2-3] ポスター:精神障害 2長期期在院中の統合失調症者への回想コラージュブック制作の心理社会的効果を検証する無作為化比較試験
<はじめに>
日本の精神科病院では未だに多くの長期入院患者を抱えており,その多くは統合失調症患者である.このような対象者では,長期の入院の中で人生も目標を見失ってしまっていることも多く,作業療法を実践する上でも対象者の希望を引き出し支援することが困難な場合が多くある.そのような対象者に対して,回想コラージュブック作り(ラ>イフレビューのインタビュー内容をもとにコラージュ活動を行い,その作品を1冊の本にまとめる)を用いた個別作業療法は,作業療法士が対象者のこれまでの人生経験や役割,それに対する感情や思いを理解すると同時に対象者自身も人生の目標や希望を取り戻す手段として有用ではないかと考えた. そこで,本研究では,長期入院の統合失調症患者における回想コラージュブック作成の心理社会的効果を検証することを目的として調査を実施した.
<方法>
対象は,1)年齢は20歳以上 2)統合失調症者と診断されている 3)精神科病院に1年以上入院している 4)精神症状が安定し言語的なコミュニケーションがとれる5)主治医から研究参加の許可が得られる者を適格条件とし,これらの条件を満たした者のうち,本人から文書にて研究参加の同意が得られた者を対象とした.参加者は無作為に介入群と対照群に割り付け,介入群には,1回60分程度,週1回の頻度で計6回のセッションでライフレビューインタビューとそのテーマに基づいたコラージュ作品制作を実施した.対照群には通常通りに過ごしてもらった.
評価は,介入前,介入後,介入後3か月の3時点でPOMS短縮版,Life Skills Profile(LSP),Recovery Assessment Scale (RAS)を用いて実施し,介入群及び対照群の3時点の各評価項目の得点を反復測定二元配置分散分析を用いて分析した.
なお,本研究は広島大学大学院医歯薬保健学研究科の倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
<結果>
適格条件を満たした対象者は130名のうち研究同意の得られた対象者は51名で,その後すぐに同意を取り消した者や評価を欠席した者などの脱落があり,最終解析対象者は介入群,対照群ともに23名ずつの計46名となった.介入群において,プログラム開始後の脱落はなく,毎回のセッションを楽しみにしてくれていた参加者がほとんどであり,欠席をした者もいなかった.解析の結果,両群ともLSP得点の向上が見られたが,両群間での有意差は見られなかった.一方で,POMSの「Confusion」において両群間に有意な交互作用が認められた.Confusionの得点をさらに水準間で比較した結果,ベースラインと終了直後の水準間には有意な差はなく,ベースライン時と終了3ヶ月後の水準間で有意な交互作用が見られた.
<結論>
本プログラムは対象者の混乱を緩和する効果があり,その効果は時間の経過とともに顕著になることが示唆された.本プログラムを通して対象者がこれまで抱えていた様々な思いを整理することができれば,人生の新たな意味を見出し,将来の希望を引き出すことも可能になるのではないかと思われた.しかし,抑うつ状態など他の情動状態については,有意な改善を認めることができなかった.これは,介入期間の長さなどによる可能性も考えられたが,今後さらなる検討が必要である.
日本の精神科病院では未だに多くの長期入院患者を抱えており,その多くは統合失調症患者である.このような対象者では,長期の入院の中で人生も目標を見失ってしまっていることも多く,作業療法を実践する上でも対象者の希望を引き出し支援することが困難な場合が多くある.そのような対象者に対して,回想コラージュブック作り(ラ>イフレビューのインタビュー内容をもとにコラージュ活動を行い,その作品を1冊の本にまとめる)を用いた個別作業療法は,作業療法士が対象者のこれまでの人生経験や役割,それに対する感情や思いを理解すると同時に対象者自身も人生の目標や希望を取り戻す手段として有用ではないかと考えた. そこで,本研究では,長期入院の統合失調症患者における回想コラージュブック作成の心理社会的効果を検証することを目的として調査を実施した.
<方法>
対象は,1)年齢は20歳以上 2)統合失調症者と診断されている 3)精神科病院に1年以上入院している 4)精神症状が安定し言語的なコミュニケーションがとれる5)主治医から研究参加の許可が得られる者を適格条件とし,これらの条件を満たした者のうち,本人から文書にて研究参加の同意が得られた者を対象とした.参加者は無作為に介入群と対照群に割り付け,介入群には,1回60分程度,週1回の頻度で計6回のセッションでライフレビューインタビューとそのテーマに基づいたコラージュ作品制作を実施した.対照群には通常通りに過ごしてもらった.
評価は,介入前,介入後,介入後3か月の3時点でPOMS短縮版,Life Skills Profile(LSP),Recovery Assessment Scale (RAS)を用いて実施し,介入群及び対照群の3時点の各評価項目の得点を反復測定二元配置分散分析を用いて分析した.
なお,本研究は広島大学大学院医歯薬保健学研究科の倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
<結果>
適格条件を満たした対象者は130名のうち研究同意の得られた対象者は51名で,その後すぐに同意を取り消した者や評価を欠席した者などの脱落があり,最終解析対象者は介入群,対照群ともに23名ずつの計46名となった.介入群において,プログラム開始後の脱落はなく,毎回のセッションを楽しみにしてくれていた参加者がほとんどであり,欠席をした者もいなかった.解析の結果,両群ともLSP得点の向上が見られたが,両群間での有意差は見られなかった.一方で,POMSの「Confusion」において両群間に有意な交互作用が認められた.Confusionの得点をさらに水準間で比較した結果,ベースラインと終了直後の水準間には有意な差はなく,ベースライン時と終了3ヶ月後の水準間で有意な交互作用が見られた.
<結論>
本プログラムは対象者の混乱を緩和する効果があり,その効果は時間の経過とともに顕著になることが示唆された.本プログラムを通して対象者がこれまで抱えていた様々な思いを整理することができれば,人生の新たな意味を見出し,将来の希望を引き出すことも可能になるのではないかと思われた.しかし,抑うつ状態など他の情動状態については,有意な改善を認めることができなかった.これは,介入期間の長さなどによる可能性も考えられたが,今後さらなる検討が必要である.