[PH-2-4] ポスター:精神障害 2転換性障害と診断された症例への身体領域での外来作業療法の一例
【はじめに】転換性障害とは,患者が運動機能や身体機能の変化を訴え,その症状が臨床的に明らかな苦痛または日常生活における支障をもたらしているが,症状を生理学的,解剖学的に説明することができない障害である.従来の介入方法は薬物療法や支持的精神療法,環境調整等がある.作業療法分野では実践報告も含めた先行研究は少ない.今回事故を契機に発症した症例を身体障害領域の外来作業療法で担当した.疾患未告知により従来の介入方法ではなく,日常での麻痺手の使用や趣味に必要な動作での介入により能力が改善したため考察を加え報告する.尚症例には発表の同意を得ている.
【症例紹介】30歳代男性,診断名は転換性障害.現病歴は墓石搬入作業中リフトのパーツが外れ,持ち手が左側頭部に当たり受傷.右半身が動かずA病院に搬送.CT等で異常所見なし.リハビリテーション継続目的に当院回復期病棟に転院.主治医から症例に告知はせず,家族に転換性障害と説明.退院時運動麻痺残存,健側でのADL自立だが,麻痺手使用の不安から外来作業療法を開始.社会的背景として幼少期に父親からの虐待あり.職歴は2度の転職後,3年前より父親経営の石材業に転職.趣味はバスケットボール.
【初期評価】112病日目,運動麻痺Brunnstrom stage(以下BRS)5-4-5,筋力右上下肢MMT4,握力2kg.簡易上肢機能検査(以下STEF):71/100点,Fugl-Meyer Assessment(以下FMA):51/66点,Motor Activity Log(以下MAL)はAmount of Use(以下AOU)2.3,Quality of Movement(以下QOM)2.0.ADLは健側手使用し自立,時折無意識に麻痺手を使用.希望は車の運転再開.
【経過】疾患未告知のため支持的精神療法が困難であった.運動機能に比べ麻痺手の使用頻度が少ない印象があり,学習性不使用も併発しているのではないかと仮説を立てた.そのため麻痺手の使用頻度改善にADOC-H等と能力改善に趣味に必要な動作を用いて介入することとした.定期評価は握力,STEF , FMA , MAL とした. 116 病日目より随意性促通とADOC-H を提供し, 握力3kg ,STEF86/100点,FMA54/66点,MALはAOU4.1,QOM3.9.145病日目よりADOC-Hと能力改善目的に現状の手関節機能・握力で可能なバドミントンやゴルフなど趣味に必要な動作を提供し,握力10kg,STEF96/100点,FMA55/66点,MALはAOU4.5,QOM4.3.自宅では家庭内役割を獲得.課題中に症例から腕が思ったより動くなどの発言あり.173病日目よりホームスキルアセスメントと手関節機能が向上したため,バスケットボールボールに必要な動作を提供し,握力20kg,STEF100/100点,FMA61/66点,MALはAOU4.9,QOM4.6.この時期はOTプログラムを症例自身が提案するようになった.
【最終評価】218病日目,運動麻痺上肢・手指はなし,下肢BRS6,握力25kg,STEF100/100点,FMA66/66点, MALはAOU4.9,QOM4.6.ADL・IADL自立,車の運転可能,趣味のバスケットボールの動作一部可能.仕事は退職し就職活動中.
【考察】今回のADOC-H等や趣味に必要な動作での介入により,運動機能の著明な改善には期間を要したものの,麻痺手の使用頻度・使用感は早期から著明に向上したことから,学習性不使用を併発しているという仮説は妥当であり,麻痺手に対する良好な認識を獲得することができたと考える.今回支持的精神療法での介入ができない中で,趣味を通し主体的に身体的回復を望むような介入をしたことが,能力改善の要因の一つだったのではないかと考える.
今回疾患未告知の転換性障害の症例に対し,日常での麻痺手の使用や趣味を用いた介入が能力改善に寄与する可能性があると示唆された.
【症例紹介】30歳代男性,診断名は転換性障害.現病歴は墓石搬入作業中リフトのパーツが外れ,持ち手が左側頭部に当たり受傷.右半身が動かずA病院に搬送.CT等で異常所見なし.リハビリテーション継続目的に当院回復期病棟に転院.主治医から症例に告知はせず,家族に転換性障害と説明.退院時運動麻痺残存,健側でのADL自立だが,麻痺手使用の不安から外来作業療法を開始.社会的背景として幼少期に父親からの虐待あり.職歴は2度の転職後,3年前より父親経営の石材業に転職.趣味はバスケットボール.
【初期評価】112病日目,運動麻痺Brunnstrom stage(以下BRS)5-4-5,筋力右上下肢MMT4,握力2kg.簡易上肢機能検査(以下STEF):71/100点,Fugl-Meyer Assessment(以下FMA):51/66点,Motor Activity Log(以下MAL)はAmount of Use(以下AOU)2.3,Quality of Movement(以下QOM)2.0.ADLは健側手使用し自立,時折無意識に麻痺手を使用.希望は車の運転再開.
【経過】疾患未告知のため支持的精神療法が困難であった.運動機能に比べ麻痺手の使用頻度が少ない印象があり,学習性不使用も併発しているのではないかと仮説を立てた.そのため麻痺手の使用頻度改善にADOC-H等と能力改善に趣味に必要な動作を用いて介入することとした.定期評価は握力,STEF , FMA , MAL とした. 116 病日目より随意性促通とADOC-H を提供し, 握力3kg ,STEF86/100点,FMA54/66点,MALはAOU4.1,QOM3.9.145病日目よりADOC-Hと能力改善目的に現状の手関節機能・握力で可能なバドミントンやゴルフなど趣味に必要な動作を提供し,握力10kg,STEF96/100点,FMA55/66点,MALはAOU4.5,QOM4.3.自宅では家庭内役割を獲得.課題中に症例から腕が思ったより動くなどの発言あり.173病日目よりホームスキルアセスメントと手関節機能が向上したため,バスケットボールボールに必要な動作を提供し,握力20kg,STEF100/100点,FMA61/66点,MALはAOU4.9,QOM4.6.この時期はOTプログラムを症例自身が提案するようになった.
【最終評価】218病日目,運動麻痺上肢・手指はなし,下肢BRS6,握力25kg,STEF100/100点,FMA66/66点, MALはAOU4.9,QOM4.6.ADL・IADL自立,車の運転可能,趣味のバスケットボールの動作一部可能.仕事は退職し就職活動中.
【考察】今回のADOC-H等や趣味に必要な動作での介入により,運動機能の著明な改善には期間を要したものの,麻痺手の使用頻度・使用感は早期から著明に向上したことから,学習性不使用を併発しているという仮説は妥当であり,麻痺手に対する良好な認識を獲得することができたと考える.今回支持的精神療法での介入ができない中で,趣味を通し主体的に身体的回復を望むような介入をしたことが,能力改善の要因の一つだったのではないかと考える.
今回疾患未告知の転換性障害の症例に対し,日常での麻痺手の使用や趣味を用いた介入が能力改善に寄与する可能性があると示唆された.