[PH-3-5] ポスター:精神障害 3精神科デイケアと公共職業安定所の連携による職業準備プログラムの有効性
【はじめに】
精神障害者に対する就労支援において医療機関と他機関での連携が試みられている.千曲荘病院では2016年度よりハローワークと連携し就労支援モデル事業を開始した.報告の目的は就労支援プログラムの概要を紹介し,そのプログラムの有効性について属性情報などから検討することである.なお,報告するにあたり当院倫理審査の承認を得た.
【対象と方法】
ジョブコースは1日6時間×週5日,10~13週間かけて実施するプログラムで,作業療法士を含むDCスタッフとハローワーク職員が担当した.内容はグループ活動を中心に,IMR(疾患管理とリカバリー)に基づく心理教育,SST,MCT(メタ認知トレーニング),体力作り,パソコン練習,職場実習等であった.集中支援では圏域の障害者就業・生活支援センターを加えた支援チームを結成し,職業相談と紹介,定期的なケース会議を実施した.
対象は2020年1月~2021年12月のプログラム修了者35名(男性18,女性17,平均39.8±9.5歳)とした.ジョブコース開始時と終了時に測定した統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS),精神障害者社会性評価尺度(LASMI),機能の全体的評価尺度(GAF),日本語版リカバリープロセス尺度(QPR-J),自尊感情尺度(RSES),ベック認知的洞察尺度(BCIS)を比較した.統計解析にはWilcoxon検定を用い有意水準は5%未満とした.
【結果】
対象の疾患名は統合失調症15名,気分障害11名,発達障害4名,その他5名であった.精神科入院歴の有/無は15/20名,正社員・パート就労経験の有/無は29/6名,デイケア利用経験の有/無は18/17名であった.集中支援後の対象者の転機は,正社員・パート就労16名(事務業5名,製造業5名,サービス業3名,医療/福祉2名,清掃業1名,アルバイト就労3名),就労継続B型事業所2名,就労移行支援事業所2名,デイケア継続中12名(その内,就職活動を行う集中支援期間中の者は10名)であった.GAFの平均スコア(開始時/終了時)は,62.7/63.6であった.BACS z-scoreの平均は,言語記憶-0.72/-0.49,作動記憶-0.64/-0.59,運動記憶-2.11/-2.12,言語流暢性-0.67/-0.37,注意機能-0.99/-0.76,遂行機能-0.26/0.03,総合得点-0.89/-0.71で,言語流暢性(p<.05),総合得点(p<.01)は有意差を認めた.LASMIでは日常生活8.2/7.9,対人関係15.1/14.5,労働・課題遂行16.6/16.2,持続性・安定性4.8/4.6,自己認識4.3/4.1といずれも改善し,対人関係では有意差を認めた(p<.01).QPRは33/37,RSESでは22.1/25.1と改善し,それぞれ有意差を認めた(p<.01).BCISは,自己内省性尺度12.4/12.6,自己確信性尺度4/4であった.
【考察】
今回の結果から,BACSの総合得点,LASMIの対人関係,QPR,RSESはジョブコース開始時と終了時の比較において有意な改善を認めた.認知機能(Fett, 2011)や対人関係技能(Becker, 1998)は就労に関連する重要な要因としてたびたび報告されている.学習プログラムだけでなく,スケジュール管理や課題遂行,グループ内での対人交流練習など複合的な体験活動を通じて認知機能や対人関係技能が向上したものと思われる.ジョブコースに参加することで仲間ができ,就労に向けた自信がつき,結果としてリカバリーや自尊感情改善が促進されたのではないかと考える.一方でMCTを実施していたにもかかわらず,BCISにて測定された認知的洞察は改善しなかった.自己内省性はMCT実施6ヶ月後に改善がみられたという報告(Ochoa, 2017)もあり,認知的洞察については長期経過を調査し,有効性を検討する必要があると思われた.
精神障害者に対する就労支援において医療機関と他機関での連携が試みられている.千曲荘病院では2016年度よりハローワークと連携し就労支援モデル事業を開始した.報告の目的は就労支援プログラムの概要を紹介し,そのプログラムの有効性について属性情報などから検討することである.なお,報告するにあたり当院倫理審査の承認を得た.
【対象と方法】
ジョブコースは1日6時間×週5日,10~13週間かけて実施するプログラムで,作業療法士を含むDCスタッフとハローワーク職員が担当した.内容はグループ活動を中心に,IMR(疾患管理とリカバリー)に基づく心理教育,SST,MCT(メタ認知トレーニング),体力作り,パソコン練習,職場実習等であった.集中支援では圏域の障害者就業・生活支援センターを加えた支援チームを結成し,職業相談と紹介,定期的なケース会議を実施した.
対象は2020年1月~2021年12月のプログラム修了者35名(男性18,女性17,平均39.8±9.5歳)とした.ジョブコース開始時と終了時に測定した統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS),精神障害者社会性評価尺度(LASMI),機能の全体的評価尺度(GAF),日本語版リカバリープロセス尺度(QPR-J),自尊感情尺度(RSES),ベック認知的洞察尺度(BCIS)を比較した.統計解析にはWilcoxon検定を用い有意水準は5%未満とした.
【結果】
対象の疾患名は統合失調症15名,気分障害11名,発達障害4名,その他5名であった.精神科入院歴の有/無は15/20名,正社員・パート就労経験の有/無は29/6名,デイケア利用経験の有/無は18/17名であった.集中支援後の対象者の転機は,正社員・パート就労16名(事務業5名,製造業5名,サービス業3名,医療/福祉2名,清掃業1名,アルバイト就労3名),就労継続B型事業所2名,就労移行支援事業所2名,デイケア継続中12名(その内,就職活動を行う集中支援期間中の者は10名)であった.GAFの平均スコア(開始時/終了時)は,62.7/63.6であった.BACS z-scoreの平均は,言語記憶-0.72/-0.49,作動記憶-0.64/-0.59,運動記憶-2.11/-2.12,言語流暢性-0.67/-0.37,注意機能-0.99/-0.76,遂行機能-0.26/0.03,総合得点-0.89/-0.71で,言語流暢性(p<.05),総合得点(p<.01)は有意差を認めた.LASMIでは日常生活8.2/7.9,対人関係15.1/14.5,労働・課題遂行16.6/16.2,持続性・安定性4.8/4.6,自己認識4.3/4.1といずれも改善し,対人関係では有意差を認めた(p<.01).QPRは33/37,RSESでは22.1/25.1と改善し,それぞれ有意差を認めた(p<.01).BCISは,自己内省性尺度12.4/12.6,自己確信性尺度4/4であった.
【考察】
今回の結果から,BACSの総合得点,LASMIの対人関係,QPR,RSESはジョブコース開始時と終了時の比較において有意な改善を認めた.認知機能(Fett, 2011)や対人関係技能(Becker, 1998)は就労に関連する重要な要因としてたびたび報告されている.学習プログラムだけでなく,スケジュール管理や課題遂行,グループ内での対人交流練習など複合的な体験活動を通じて認知機能や対人関係技能が向上したものと思われる.ジョブコースに参加することで仲間ができ,就労に向けた自信がつき,結果としてリカバリーや自尊感情改善が促進されたのではないかと考える.一方でMCTを実施していたにもかかわらず,BCISにて測定された認知的洞察は改善しなかった.自己内省性はMCT実施6ヶ月後に改善がみられたという報告(Ochoa, 2017)もあり,認知的洞察については長期経過を調査し,有効性を検討する必要があると思われた.