第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-5] ポスター:精神障害 5

2022年9月17日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PH-5-3] ポスター:精神障害 5コロナ禍におけるリワークプログラムの効果

東京都緊急事態宣言下での持続可能なプログラム

小林 陽香1佐藤 俊之1 (1医療法人社団柏水会 三軒茶屋診療所東京リワークセンター)

【背景】東京リワークセンター(以下,当センター)は,2012年にリワークデイケアを開設した.プログラムの特徴は,仕事を模したグループワークと強度の高い運動を主体とすることである.その中で支援者や他の患者等他者からのフィードバックを通し,体験的に自身の認知や行動の修正を行う.先行研究では,当センターの2019年1月時点のリワークプログラム修了者の復職継続率を調査し,プログラム効果測定を行った.対象者242名のうち,1年以上の復職継続率が84.3%であり,一定の効果が示唆された(佐藤俊之.2019年).新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大により,生活様式の変化を余儀なくされた.東京都で緊急事態宣言が発令され,当センターでもプログラムの変更を行った.
(1)オンライン対戦機能のついたテレビゲームを用いたプログラム 2~4人で行うコミュニケーションゲーム.感染対策の視点は,テレビ画面を供覧してプレイするため,向かい合ったコミュニケーションを必要とせず,また,ソーシャルディスタンスを保てることである.
(2)オンライン会議機能を用いたプログラム 現在では身近なツールであるが,当初はオンラインへの抵抗性が高い患者も多くいた.しかし復職までの手続きや,業務時も必要となり,オンラインへの適応を求められる機会が増え導入に至る.
(3)少人数での土曜日プログラム 10名程に限定した希望制のプログラムを運営した.参加日を週5日から週6日にし,密を避けることを目的とした.過去には読書会,麻雀大会,ゲーム大会を行った. 仕事を模すことを目的に,メンバーが企画書作成,周知,運営を行う場合もある.作業療法士はこの間企画のサポートをし,メンバーの内省や行動変容を促す.
【目的】2022年2月現在,プログラム変更に伴う効果は検討されていない.コロナ禍の利用状況を明らかにし,プログラム変更後のリハビリテーションが,変更前と同程度の効果を期待できるか検討する.
【方法】2021年1月8日以降の東京都で緊急事態宣言が発令された期間(2021年1月8日~3月21日,4月25日~6月20日,7月12日~8月22日)と,2019年の同期間で以下の比較をした.
(1)1日あたりの平均利用人数,(2)修了までの平均利用日数,(3)登録人数における利用率
 尚,本報告の倫理的配慮として,書面及び口頭にて発表内容を説明し,同意を得ている.
【結果】
(1)1日あたりの平均利用人数 東京都の緊急事態宣言下における合計利用人数は2624名,稼働日は121日であった.1日当たりの平均利用人数は21.69名.一方,2019年の同期間では,合計利用人数は2590名,稼働日は120日.1日当たりの平均利用人数は21.58名であった.
(2)修了までの平均利用日数 2021年1月8日~3月21日の期間に登録されていた利用者の平均利用日数は,103.58(±51.69)日.2019年の同期間は129.88日(±57.16)であった.
(3)登録人数における利用率 2021年1月8日~3月21日の登録人数における利用率は73.95%,2019年の同期間は70%.2021年4月25日~6月20日の登録人数における利用率は64.59%,2019年の同期間は73.04%であった.2021年7月12日~8月22日の登録人数における利用率は58.54%,2019年の同期間は56.28%であった.
【考察】コロナ禍でのプログラム運営を模索する中,変更前と同程度のリハビリテーションを維持できていた可能性が示唆された.コロナ禍により,急激に生活様式の変化と適応を求められ,未だに変化し続けている.私たちが診ている患者の中には,その急激な変化に対応できず,休職を迫られる方が少なくない.私たちの仕事は社会の担い手を,社会に戻すことである.この有事に対し,変化を待つのでなく,私たちが主体的に変化,適応する必要を感じる.