[PH-5-4] ポスター:精神障害 5統合失調症患者への摂食嚥下リハビリテーションに対する精神科作業療法士の認識
【背景】
摂食嚥下リハビリテーション(以下,摂食嚥下リハ)は,子供から大人までの多様な疾患・障害者を対象に多職種連携のもと実施されており,作業療法士もその一役を担っている.一方,精神科作業療法士(以下,OTR)の主たる患者である統合失調症患者では,摂食嚥下機能障害に伴う誤嚥性肺炎や窒息事故が多発しているにも関わらず,OTRによる調査,介入等の報告はほとんど見られない.
本報告は精神科病院に勤務するOTRを対象に行った調査である統合失調症患者を対象とした摂食嚥下リハの実施状況からその一部であるOTRが考える統合失調症患者の摂食嚥下リハへの関与について,意見と理由を分析したものである.
【目的】
精神科作業療法に従事しているOTRが,統合失調症患者の摂食嚥下リハの関与についてどのように考えているかを明らかにすることである.
【方法】
公益社団法人 日本精神科病院協会に加盟している病院・施設に勤務するOTRを対象にwebアンケートを実施した.分析対象とした質問内容は「統合失調症患者への摂食嚥下リハについてOTRは積極的に関与すべきであると思いますか?あなたの意見とその理由をお答えください」とした.分析方法は記述統計と質的手法を用いた.テキストデータである「意見と理由」は,共同研究者(10年以上の経験を有するOTR)とともに熟読し,類似した意味内容ごとにカテゴリー化を行った.
【結果】
87名(100%)の回答結果を得て,そのうち63名(72%)が摂食嚥下リハに関与すべきであると回答した.回答の中には,関与すべきだが算定用件やマンパワー不足を背景に実施できていない,多職種連携していくことが重要であるなどが含まれた.OTRが関与すべき理由は「患者の高齢化や対象者の増加」14件,「食事,楽しみ,QOL維持・向上」13件,次いで「早食いや詰め込み食べなどへの対応」5件となった.
関与すべき以外の回答は言語聴覚士(以下,ST)を配置すべきおよびSTがいなければ関与すべき6件(7%),分からない・今は考えていない6件(7%),その他(回答無し含む)12件(14%)であった.
【考察】
70%以上のOTRが統合失調症患者の摂食嚥下リハに関与すべきであると回答している一方,医療保険上の制約や人的リソース不足を理由に摂食嚥下リハの実施を妨げている可能性が示唆された.また近年の高齢化に伴う精神科入院患者像の変化や早食い,詰め込み等の統合失調症患者の摂食嚥下機能障害の特性に注目すべき意見が挙げられた.OTRは,食事を日々の生活の上で繰り返され,人としての楽しみやQOLの向上等,栄養摂取だけでなく多様な側面を持つ作業であるとも認識していることが伺えた.今後,OTRが統合失調症患者を対象とした摂食嚥下リハを進めるには,加齢や食行動による摂食嚥下機能障害への影響を考慮するとともにその障害特性理解に努める必要があると考える.またOTR自身の見解だけでなく他職種からの期待や制度,それぞれの施設の環境も考慮し,摂食嚥下リハの実施方法を検討することが重要であると考える.
摂食嚥下リハビリテーション(以下,摂食嚥下リハ)は,子供から大人までの多様な疾患・障害者を対象に多職種連携のもと実施されており,作業療法士もその一役を担っている.一方,精神科作業療法士(以下,OTR)の主たる患者である統合失調症患者では,摂食嚥下機能障害に伴う誤嚥性肺炎や窒息事故が多発しているにも関わらず,OTRによる調査,介入等の報告はほとんど見られない.
本報告は精神科病院に勤務するOTRを対象に行った調査である統合失調症患者を対象とした摂食嚥下リハの実施状況からその一部であるOTRが考える統合失調症患者の摂食嚥下リハへの関与について,意見と理由を分析したものである.
【目的】
精神科作業療法に従事しているOTRが,統合失調症患者の摂食嚥下リハの関与についてどのように考えているかを明らかにすることである.
【方法】
公益社団法人 日本精神科病院協会に加盟している病院・施設に勤務するOTRを対象にwebアンケートを実施した.分析対象とした質問内容は「統合失調症患者への摂食嚥下リハについてOTRは積極的に関与すべきであると思いますか?あなたの意見とその理由をお答えください」とした.分析方法は記述統計と質的手法を用いた.テキストデータである「意見と理由」は,共同研究者(10年以上の経験を有するOTR)とともに熟読し,類似した意味内容ごとにカテゴリー化を行った.
【結果】
87名(100%)の回答結果を得て,そのうち63名(72%)が摂食嚥下リハに関与すべきであると回答した.回答の中には,関与すべきだが算定用件やマンパワー不足を背景に実施できていない,多職種連携していくことが重要であるなどが含まれた.OTRが関与すべき理由は「患者の高齢化や対象者の増加」14件,「食事,楽しみ,QOL維持・向上」13件,次いで「早食いや詰め込み食べなどへの対応」5件となった.
関与すべき以外の回答は言語聴覚士(以下,ST)を配置すべきおよびSTがいなければ関与すべき6件(7%),分からない・今は考えていない6件(7%),その他(回答無し含む)12件(14%)であった.
【考察】
70%以上のOTRが統合失調症患者の摂食嚥下リハに関与すべきであると回答している一方,医療保険上の制約や人的リソース不足を理由に摂食嚥下リハの実施を妨げている可能性が示唆された.また近年の高齢化に伴う精神科入院患者像の変化や早食い,詰め込み等の統合失調症患者の摂食嚥下機能障害の特性に注目すべき意見が挙げられた.OTRは,食事を日々の生活の上で繰り返され,人としての楽しみやQOLの向上等,栄養摂取だけでなく多様な側面を持つ作業であるとも認識していることが伺えた.今後,OTRが統合失調症患者を対象とした摂食嚥下リハを進めるには,加齢や食行動による摂食嚥下機能障害への影響を考慮するとともにその障害特性理解に努める必要があると考える.またOTR自身の見解だけでなく他職種からの期待や制度,それぞれの施設の環境も考慮し,摂食嚥下リハの実施方法を検討することが重要であると考える.