第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-6] ポスター:精神障害 6

2022年9月17日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PH-6-4] ポスター:精神障害 6作業療法士の専門性に対する認識の違い

作業療法士と多職種の比較

浜田 実瑠1北田 有沙1藤田 周平2東江 薫2大類 淳矢3 (1東香里病院精神科作業療法,2東香里第二病院作業療法室,3大阪河﨑リハビリテーション大学)

【序論】医療やリハビリテーションの提供にあたってはチーム医療が重要であり,より治療効果を高めるためにはチーム内他職種の役割を認識し相互に協力する必要がある.しかし,作業療法士(以下,OT)の役割を精神科多職種がどのように認識しているかは十分に明らかにされていない.
【目的】OTの専門性についてOT自身と精神科多職種の認識の差及び認識内容を明確にする.
【方法】調査対象施設に勤務するOT,正看護師,准看護師,看護助手,精神保健福祉士,公認心理士,理学療法士を対象とした.本研究の趣旨を説明し,質問紙への回答の同意が得られた者を対象者とした.調査項目は職種,経験年数,配属年数,他職種との交流時間,OTの目標重要度,多職種との連携具合の認識,OTの専門性の良さと課題,とした.多職種との交流時間は,OTにはOT以外との,その他の職種にはOTとの交流時間を尋ねた.OTの目標重要度は,作業療法白書2015から引用した項目を使用し,OTが担う各項目の重要度を1(全く重要でない)から4(非常に重要である)の4段階での回答を求めた.多職種との連携具合の認識は,revised Collaborative Practice Assessment Tool(r-CPAT)日本語版を用いた.OTの専門性の良さと課題については,回答者自身が考える内容を自由記述にて回答を求めた.量的データの分析にはjamovi2.2.5を用い,OT群と各職種群で各変数の群間比較をWelchのt検定またはMann-Whitney U検定により行った.質的データの分析にはKHcoder3を用い,頻出語と回答職種の共起関係を示す「共起ネットワーク」を得た.なお本研究は調査対象施設の病院長及び各部門責任者の承認を得て実施し,開示すべき利益相反する企業等はない.
【結果】OT7名,正看護師21名,准看護師7名,看護助手12名,精神保健福祉士4名,公認心理士2名,理学療法士4名の合計57名から回答を得た.OTの目標重要度は,他職種全体(13.7±1.7)及び看護助手(13.0±2.1)がOT(15.1±1.6)よりも有意に低く(p<0.05),その他の各職種ではOTとの有意な差を認めなかった.r-CPAT合計点は,OT(65.4±13.1)は他職種全体(82.7±20.6)よりも有意に低かった(p<0.05).OTの専門性について共起関係の種類を職種ごとに求めた結果,「専門性の良さ」では「生活」(「生活技能の獲得」「生活動作を取り戻せる」「生活者の視点」等)や「精神」(「精神安定を図る」「精神活動が活発に」等)という語が最も多く2職種から共通して挙がった語で,「専門性の課題」では「社会」(「社会復帰に向けてのリハビリ」「社会経験などのスキルが必要」等)という語が最も多く3職種から共通して挙がった語であった.
【考察】OTの役割について,特に看護助手との認識の乖離が大きいことが明らかになった.専門的教育の有無の関連が想定されるが,OTは看護助手と接する機会も多く,対象者への言葉かけ等を含めた支援の方向性をさらに共有・連携する必要性が示唆された.また他職種との連携具合の認識について,OTは他職種よりも有意に「連携できていない」と認識していることが明らかになった.先行研究においても多くのOTが他部門との連携不足を感じていることが報告されている(向,2003).一方で多職種はOTほど連携できていないとは感じておらず,連携に対する意識の差の背景に存在する要因を明らかにし,さらに質の高いチーム医療を行うためには何を行うべきかを明確にする必要性があると考えられる.また,自由記述で得られたOTの課題より,OTは対象者に対してどのような支援を行っているのか,治療的な関わりの意味合いなどを,さらに多職種に伝えていく必要性があると考えられる.