第56回日本作業療法学会

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ポスター

精神障害

[PH-6] ポスター:精神障害 6

Sat. Sep 17, 2022 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PH-6-5] ポスター:精神障害 6地域生活の実現に向けた多職種・多機関協働の取り組み

協議の場と地域基盤の整備

朝倉 起己1下久保 美和2丹羽 弘菜3 (1共和病院デイケア課,2相談支援事業所みらい,3ケアホームあしび)

1.はじめに
 近年,精神障害者の地域移行・地域定着支援を推進していくために精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築が求められている.今回,精神障害者が地域で安心して自分らしい暮らしが出来るよう医療・障害福祉・住まい・社会参加が包括的に確保された地域の基盤整備を行ったため報告する.なお本報告について対象者の同意を得るとともに所属機関の倫理審査委員会の承認を得ている.
2.事例紹介
 Aさん,60歳代,男性,統合失調症(GAF;35,HDS-R25,服薬量CP換算値740).高校卒業後に幻覚・妄想出現し当院初診.30歳代前半までに8回の入退院(怠薬による不調).外来通院中の50歳代中頃に警察介入による措置入院.3年を経て措置解除,翌年にグループホーム(GH)入所とともに精神科デイケア(DC)利用開始.両親は他界,長姉がキーパーソン.目先の楽しみが我慢できず浪費,他罰的で他者とのトラブル多い.
3.経過
 Aさんは「家族に頼らず自立した生活(一人暮らし)を送りたい」と希望.X年3月,金銭に関するトラブルが絶えずGHの仲介も限界となり契約更新不可となり半年後(X年9月末)には退居方向へ.一人暮らしに向けてB町のAさんの実家状況を確認するも天井や床に穴が開いており「実家で暮らすには正直厳しい,近所の人間関係も難しい」と話している.
 X年4月,ケア会議に姉も同席し今後の金銭管理や保証人は後見制度の利用を決めるが,X年5月には「後見制度は断る.自分のお金は自分で管理したい」と変心.X年6月のケア会議(Aさん,姉,相談支援事業所,GH,町役場,町社協,訪問看護,DC)では,日常的な金銭の貸し借りや思い通りにいかないと易怒的になること,B町から病院までの通院は遠方のため治療中断と怠薬の可能性があること等の課題が挙がる.X年7月のカンファレンス(主治医,相談支援事業所,GH,DC)ではAさんの意向を尊重しつつAさんには今まで同様に通院と内服を最低限取り組んでもらいたい旨を確認しあう.B町の物件を探しに不動産会社を回るもAさん希望の物件(精神疾患で障害年金受給者可,生活保護念頭,駅近)はB町には無い状況.「将来を考えて病院近くのC市の物件を考えます」とAさんも納得.X年8月にはギャンブルで散財し「自身での金銭管理はもう無理です」と後見制度の利用を希望.同時期にC市内に条件に合う物件が見つかる.X年9月には携帯電話・家電等の購入や新旧支援者の引継ぎのケア会議(Aさん,姉,相談支援事業所,GH,DC,訪問看護,訪問介護,B町役場,B町社協,後見センター,C市役所,C市社協,居宅介護支援事業所)を実施.今後の生活課題とその対策は,①怠薬と治療離脱防止のために訪問看護による24時間相談対応と定期訪問の実施,②浪費は後見センターによる生活費の管理とDCによる昼食の提供を予定し,Aさんも安堵の表情.
 X年10月よりC市にて一人暮らし開始.病状は安定(GAF,HDS-R,CP換算値は不変),若干の金銭トラブルはあるものの穏やかに地域生活を継続している.
4.考察
 幾度と開催したケア会議は支援者間の協議の場となり医療・障害福祉・住まい・社会参加における支援体制の構築となった.この顔の見える緊密な連携によりそれぞれの部門での支援方法や課題の共有となり,Aさんの生活のしづらさを理解する機会になり統一した対応が可能となった.
 また,支援者は地域基盤の整備を注視しAさんの意向を極力優先しAさんのペースや自己決定を尊重した結果,Aさんは現実検討を経て自身にとって安心と思える生活を実現することに繋がった.今後もAさんの目標である自立した生活を送れるよう多職種連携しリカバリー支援を続けて行きたい.