[PH-9-6] ポスター:精神障害 9不安障害患者の余暇活動を改善した短期間の作業療法
【序論】作業療法(以下OT)は,作業を通して健康と幸福を促進する(日本OT協会2017)が,我が国の精神科領域の作業療法士の大部分は単科精神科病院で,入院患者の作業療法を中心とした業務に従事する (小林,2014),一方精神科入院患者の11倍以上の外来患者が存在する(厚労省, 2017).演者は精神科診療所患者を対象としたOTを実施している(四本, 2021他).常に1対1で作業遂行を聴取し,1回1時間,週1回以下の頻度で実施する点が一般的な病院OTと異なる.
【目的】電車が利用できず余暇活動が行えない対象者に,心身の特性と症状発現の理解を促し,余暇活動ができた経過を報告し,外来患者のWell-beingを目標としたOTを提案する.症例から報告の同意を得ている.
【方法】A氏は30歳代半ばの小柄な女性である.電車に乗れない,外食ができないとエネルギッシュに訴えた.10年以上前に同じ状態で精神科受診し薬物療法で改善した.今回パロキセチン20㎎,アルプラゾラム0.8㎎を服用し,睡眠障害は改善傾向であったが電車に乗ることを希望し紹介された.介入中薬物療法に変更はない.方法は1回1時間のOTを計8回8か月間実施した.支持的精神療法を基盤とし,心理教育を実施した.
【経過・結果】2回 (1か月) 目まで:生活歴,生活リズム,困りごとの聴取から,幼少期の乗り物酔い経験,学生時代の数回パニック発作経験や睡眠障害,1年前バスで乗り物酔いしパニック発作を再発後電車に乗れなくなったことが明らかになった.日本語版State-Trait Anxiety Inventory(STAI)状態不安56・特性不安60高不安域であった.仕事は自転車通勤で,症状悪化時には休みながら10年以上勤務,独居で日常生活に問題はなく,同僚や友人と外食やコンサート,旅行の経験もあった.元来神経質で車酔いしやすい体質であり,余暇活動による気分転換ができず高不安状態になり睡眠障害を併発していることを共有した.
3-6回(2-5か月)目:不安障害と睡眠障害について解説を行い,A氏の心身の特徴を実際の生活の中のエピソードを使用して解説した.睡眠障害改善のために就寝前に薫りとストレッチでリラクゼーションし,自己肯定感を高めるためにポジティブ日記を導入した.睡眠の改善後,余暇活動としてコンサートに行くことを目標に,通勤の一部を電車にすることや友人との外食を段階付け,かつ最悪の事態を想定した対策も含めて現実的に計画した.
7-8回(5-8か月)目:体調と不安状態を一緒にモニタリングし「ダメだったら途中で止める」とコンサートに出かけ,自ら不調時の対応にコツを得たと述べて終了した.STAI状態不安45・特性不安50(中不安域)であり,3か月以上不調はなかった.
【考察】A氏は,身体的特徴として外的環境の変化に即応することが難しく,幼少期から体調不良時に悪心,さらに思春期にパニック発作を経験し,それを回避するために不安が増強したと思われた.心身状態が良好な時には友人と旅行や外食を楽しむ経験があり,1年前にパニック発作を再発し不健康状態に陥ったと考えられる.A氏は自身の生物学的特徴を理解し,リラクゼーションとポジティブ日記により自己肯定感の向上,睡眠障害の改善が得られ,症状発現のメカニズムの理解も進んだ.不安尺度得点の改善は小さいが症状化を理解した上で,心身良好状態で余暇活動を再開することができ,調整のコツを得たと感じたと考えられる.
社会機能は高いものの自身の心身特性に気づかず,余暇活動ができず,症状発現してしまう症例は,薬物療法だけでwell-beingを高めることは難しい.不安障害には認知行動療法が有効とされるが,本事例からOTでは医学的・作業的理解を基に生活機能の改善を通して健康に貢献できる可能性が示された.
【目的】電車が利用できず余暇活動が行えない対象者に,心身の特性と症状発現の理解を促し,余暇活動ができた経過を報告し,外来患者のWell-beingを目標としたOTを提案する.症例から報告の同意を得ている.
【方法】A氏は30歳代半ばの小柄な女性である.電車に乗れない,外食ができないとエネルギッシュに訴えた.10年以上前に同じ状態で精神科受診し薬物療法で改善した.今回パロキセチン20㎎,アルプラゾラム0.8㎎を服用し,睡眠障害は改善傾向であったが電車に乗ることを希望し紹介された.介入中薬物療法に変更はない.方法は1回1時間のOTを計8回8か月間実施した.支持的精神療法を基盤とし,心理教育を実施した.
【経過・結果】2回 (1か月) 目まで:生活歴,生活リズム,困りごとの聴取から,幼少期の乗り物酔い経験,学生時代の数回パニック発作経験や睡眠障害,1年前バスで乗り物酔いしパニック発作を再発後電車に乗れなくなったことが明らかになった.日本語版State-Trait Anxiety Inventory(STAI)状態不安56・特性不安60高不安域であった.仕事は自転車通勤で,症状悪化時には休みながら10年以上勤務,独居で日常生活に問題はなく,同僚や友人と外食やコンサート,旅行の経験もあった.元来神経質で車酔いしやすい体質であり,余暇活動による気分転換ができず高不安状態になり睡眠障害を併発していることを共有した.
3-6回(2-5か月)目:不安障害と睡眠障害について解説を行い,A氏の心身の特徴を実際の生活の中のエピソードを使用して解説した.睡眠障害改善のために就寝前に薫りとストレッチでリラクゼーションし,自己肯定感を高めるためにポジティブ日記を導入した.睡眠の改善後,余暇活動としてコンサートに行くことを目標に,通勤の一部を電車にすることや友人との外食を段階付け,かつ最悪の事態を想定した対策も含めて現実的に計画した.
7-8回(5-8か月)目:体調と不安状態を一緒にモニタリングし「ダメだったら途中で止める」とコンサートに出かけ,自ら不調時の対応にコツを得たと述べて終了した.STAI状態不安45・特性不安50(中不安域)であり,3か月以上不調はなかった.
【考察】A氏は,身体的特徴として外的環境の変化に即応することが難しく,幼少期から体調不良時に悪心,さらに思春期にパニック発作を経験し,それを回避するために不安が増強したと思われた.心身状態が良好な時には友人と旅行や外食を楽しむ経験があり,1年前にパニック発作を再発し不健康状態に陥ったと考えられる.A氏は自身の生物学的特徴を理解し,リラクゼーションとポジティブ日記により自己肯定感の向上,睡眠障害の改善が得られ,症状発現のメカニズムの理解も進んだ.不安尺度得点の改善は小さいが症状化を理解した上で,心身良好状態で余暇活動を再開することができ,調整のコツを得たと感じたと考えられる.
社会機能は高いものの自身の心身特性に気づかず,余暇活動ができず,症状発現してしまう症例は,薬物療法だけでwell-beingを高めることは難しい.不安障害には認知行動療法が有効とされるが,本事例からOTでは医学的・作業的理解を基に生活機能の改善を通して健康に貢献できる可能性が示された.