第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-1] ポスター:発達障害 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-1-5] ポスター:発達障害 1小学校教諭の相談内容の変化について

定期的な勉強会の取り組みから

吉岡 和哉1 (1群馬パース大学リハビリテーション学部作業療法学科)

【はじめに】発達領域に関わる作業療法士が働く場所として,医療や福祉,地域など多岐にわたって拡がっている.また,日本作業療法士協会や各都道府県士会で,「学校を理解して支援が出来る作業療法士の育成研修会」など,学校で連携を行う際に必要な知識やスキルに関する研修が行われている.教育現場での実際の連携に関しては,支援学校や地域の学校での取り組みについて報告がされており,教育機関と直接関わりを持つ作業療法士も増えつつある.その中で,学校で行える支援内容の具体的な方法や考え方についての協働が求められることがある.
 教諭と連携を進める中での課題としてフィードバックなどの時間の確保が十分でない場合がことが1つとしてあり,相互での情報交換の内容が限られてしまうことがあり,必要最低限の対話が出来ていない場合があると感じる経験をすることがある.その課題の改善のために演者は教諭と相談して一緒に勉強会を開催できる機会を教諭と協力して企画した.勉強会では,教諭が児童に届けたい教育に対する想いやクラス運営の中で気になることや困ることについて伺った.また,環境や児童の理解など作業療法の視点でならの考える対応方法について関しても伝えるなど,相互にディスカッションしながらの勉強会を行った.定期的に進めていく中で教諭の発言や相談内容に変化が認められるようになった.
 そこで本報告の目的は,教諭の相談内容の変化や時に対する捉え方の変化について明らかにする.明らかにした内容を解釈し,教諭の捉え方の変化に合わせた作業療法士の協働について検討を行う.
【方法】対象者は勉強会に参加した小学校教諭(通常級・支援級担任)とした.分析に用いたデータは,勉強会の1年目と3年目の記録(テキストデータ)を対象とした.分析方法は,KHCoder3を用いて計量テキスト分析を行った.今回は,共起関係を示す共起ネットワークの結果から元の文脈を参照しながら解釈を行った.倫理的配慮は,教諭が所属している学校長の許可を得て参加者にも同様に同意を得て実施した.
【結果】共起ネットワークでは,1年目は10カテゴリ,3年目は9カテゴリが明らかになった.1年目と3年目で比較したところ,「トラブル」や「殴る」,「ゴロゴロ過ごす」等の学校生活においてネガティブな内容の単語が1年目も3年目,共通して認められた.しかし,3年目の結果では「褒める」,「楽しい」,「受け入れる」,「クラスのいい雰囲気」などポジティブな内容が認められたが,1年目の結果には認められなかった.
【考察】今回,1年目と3年目で検討を行った結果,共起ネットワークでは,1年目ではネガティブな内容が中心であったが,3年目では,ネガティブとポジティブの両方の内容が含まれていた.これは児童の問題ばかりに着目していた視点から,勉強会を通してどう対応すればいいかなど問題解決のために必要な関わりを意識できる視点に拡がった.また,児童が出している適応的な反応に対しても気付くことができるようになっていったと考えられる.つまり個人の課題のみに着目した限られた視点だけであった視点からクラス全体の様子の変化にも気付く広い視点とともに児童自身の変化を求めるだけでなく環境調整の必要性にも気付くことができてきたと考えられる.
 今回の結果から,児童の課題にのみ着目しているしている時期は,その課題に対する取り組み方法と合わせてクラス全体の様子など環境の状態に対する共有などが1つのポイントとして考えられる.また,1年目と3年目の比較であったことを受けて教諭自身の変化には時間をかけて経験することも必要なポイントとして考えられる.