[PI-2-2] ポスター:発達障害 2自閉スペクトラム症児者の視覚処理に関する困難への対処法に関する質的調査
【序章】
自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder; ASD)児者において,感覚処理障害を持つ割合が高いことが多くの先行研究で報告されている.感覚に関する困難は主観的であり,専門家であっても気づきにくい困難を抱えている場合がある.そのような困難にどのように対処しているのかを明らかにすることで,ASD児者の支援に生かすことができる.複数の先行研究において,感覚に関する困難への対処法の調査が行われているが,困難と対処法を対応させた自由記述形式のアンケートを用いた大規模な調査は行われていない.
そこで演者らは,自由記述形式で感覚の問題による困難とその対処法の調査により,その実態を明らかにすることを目的とし,大規模なアンケート調査を実施した.本研究においては,その一部である視覚に関する困難の対処法を体系的にまとめることを目的とし分析を行った.
【方法】
ASD児者とその保護者2,872名を対象に,自由記述形式の質問紙によってデータを収集した.分析手法として,KJ法のグループ編成を用いてグループ分けを行った.本報告では,はじめに3名の作業療法士により,視覚に関する困難のグループ分けを行った.前処理として,困難の回答を過反応,低反応,感覚探求,感覚識別の4領域に分類し,当てはまらない回答をその他とした.その後,各困難グループで用いられていた対処法についてグループ分けを行い,困難との関係性を検討した.なお,本研究は,長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学系倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:17110905-2).
【結果】
アンケートの回収率は,12.0%(344名/2,872名)であった.対象者の属性は,男性273名(79.4%),女性71名(20.6%),平均年齢20.9(±10.3)歳であった.
視覚に関する困難を各領域でグループ分けを行った結果,過反応に関する困難は『光刺激』『情報量の多さ』『周囲のもの』に,感覚探求に関する困難は『光刺激』『動き刺激』に,感覚識別障害に関する困難は『識別』『フィルタリング』に分類された.低反応に関する困難は挙げられなかった.困難の分析で分類されたグループごとに,対処法の分類を行った.その結果,『光刺激』への対処法は,「光の調節」「グッズの使用」などの8種類に,『情報量の多さ』への対処法は,「人込みを避ける」「情報を整理する」などの5種類に,『周囲のもの』への対処法は,「物を見えないようにする」「集中すべき物事に注目させる」などの4種類に,『光刺激』『動き刺激』への対処法は,両グループとも「許容する」「制限する」の2種類に,『識別』への対処法は,「道具の工夫」「前の席に座る」などの8種類に,『フィルタリング』への対処法は,「置き場所を決める」「声掛け」などの5種類にそれぞれ分類された.
【考察】
分析の結果,視覚に関する困難は多くの場面で生じており,それぞれの困難に対して複数の対処パターンの試みられていることが明らかになった.その対処パターンとして,環境の調整やグッズの使用などが多くの場面で用いられる一方で,特定の困難に対してのみ用いられる対処法も見られた.困難が生じる環境や状況,心理状態,個人の感覚特性や認知能力によって,適切な対処法が異なる可能性が考えられるため,今後は各対処法の効果を検証するとともに,それぞれの対処法がどのような要因で効果を示すのかを調査していく必要がある.
自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder; ASD)児者において,感覚処理障害を持つ割合が高いことが多くの先行研究で報告されている.感覚に関する困難は主観的であり,専門家であっても気づきにくい困難を抱えている場合がある.そのような困難にどのように対処しているのかを明らかにすることで,ASD児者の支援に生かすことができる.複数の先行研究において,感覚に関する困難への対処法の調査が行われているが,困難と対処法を対応させた自由記述形式のアンケートを用いた大規模な調査は行われていない.
そこで演者らは,自由記述形式で感覚の問題による困難とその対処法の調査により,その実態を明らかにすることを目的とし,大規模なアンケート調査を実施した.本研究においては,その一部である視覚に関する困難の対処法を体系的にまとめることを目的とし分析を行った.
【方法】
ASD児者とその保護者2,872名を対象に,自由記述形式の質問紙によってデータを収集した.分析手法として,KJ法のグループ編成を用いてグループ分けを行った.本報告では,はじめに3名の作業療法士により,視覚に関する困難のグループ分けを行った.前処理として,困難の回答を過反応,低反応,感覚探求,感覚識別の4領域に分類し,当てはまらない回答をその他とした.その後,各困難グループで用いられていた対処法についてグループ分けを行い,困難との関係性を検討した.なお,本研究は,長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学系倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:17110905-2).
【結果】
アンケートの回収率は,12.0%(344名/2,872名)であった.対象者の属性は,男性273名(79.4%),女性71名(20.6%),平均年齢20.9(±10.3)歳であった.
視覚に関する困難を各領域でグループ分けを行った結果,過反応に関する困難は『光刺激』『情報量の多さ』『周囲のもの』に,感覚探求に関する困難は『光刺激』『動き刺激』に,感覚識別障害に関する困難は『識別』『フィルタリング』に分類された.低反応に関する困難は挙げられなかった.困難の分析で分類されたグループごとに,対処法の分類を行った.その結果,『光刺激』への対処法は,「光の調節」「グッズの使用」などの8種類に,『情報量の多さ』への対処法は,「人込みを避ける」「情報を整理する」などの5種類に,『周囲のもの』への対処法は,「物を見えないようにする」「集中すべき物事に注目させる」などの4種類に,『光刺激』『動き刺激』への対処法は,両グループとも「許容する」「制限する」の2種類に,『識別』への対処法は,「道具の工夫」「前の席に座る」などの8種類に,『フィルタリング』への対処法は,「置き場所を決める」「声掛け」などの5種類にそれぞれ分類された.
【考察】
分析の結果,視覚に関する困難は多くの場面で生じており,それぞれの困難に対して複数の対処パターンの試みられていることが明らかになった.その対処パターンとして,環境の調整やグッズの使用などが多くの場面で用いられる一方で,特定の困難に対してのみ用いられる対処法も見られた.困難が生じる環境や状況,心理状態,個人の感覚特性や認知能力によって,適切な対処法が異なる可能性が考えられるため,今後は各対処法の効果を検証するとともに,それぞれの対処法がどのような要因で効果を示すのかを調査していく必要がある.