第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-2] ポスター:発達障害 2

2022年9月16日(金) 13:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-2-6] ポスター:発達障害 2児童虐待予防の支援に関する文献研究〜作業療法士が抱える課題と今後に向けて〜

後藤 健太郎12笹田 哲3 (1神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科 博士前期課程,2三浦市立病院診療支援部 リハビリテーション科,3神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【はじめに】
わが国における児童虐待への取組みは,平成12年の児童虐待の防止等に関する法律の制定を受け,発生予防(一次予防),早期発見・早期対応(二次予防),虐待を受けた子どもの保護・自立に向けた支援,保護者への支援(三次予防)など切れ目のない支援が行われるよう取組みが進められてきたが,近年,国民意識の向上や社会環境の変化により児童虐待相談件数は急激な増加傾向にある.保健・医療・福祉等の関係者は,児童虐待を特別な家族の問題ではなく,どの家庭にも起こり得るものとして認識し,子どもを持つ全ての親を念頭に入れて,子ども虐待防止の取組みを進めていく必要がある.本研究の目的は,作業療法士(以下,OTR)を含む専門職種の児童虐待支援の特徴を明らかにした上で,OTRが抱える課題を検討することである.本研究において開示すべきCOIはない.
【方法】
医学中央雑誌Web版とCiNii Articlesを用い,対象を原著論文に限定した上で「専門職」「児童虐待」「支援」をキーワードに,2021年12月1日に対象期間を設けずに検索した.尚,専門職は,OTR,理学療法士,言語聴覚士,臨床心理士・心理職(以下,心理職),保健師,看護師,助産師,保育士,児童福祉司とした.対象文献の分析は以下の手順で実施した.検出論文から,各専門職による支援内容・対象者が未記載のものを除外した.その後,支援内容から一次・二次・三次予防の期別および支援対象者の虐待の別-身体的虐待(以下,身体),心理的虐待(以下,心理),性的虐待(以下,性),ネグレクト-を判別し,アブストラクトテーブル上に整理した.最後に,全論文における期別の割合,児童虐待支援に対する各専門職の傾向とOTRにおける課題を検討した.
【結果】
 全論文における期別割合は一次予防17%,二次予防56%,三次予防27%であった.リハビリ職ではOTR論文のみ1件抽出され,三次予防1件で,ネグレクト1件であった.心理職論文は5件抽出され,二次予防2件,三次予防3件で,身体2件,心理2件,性2件,ネグレクト3件であった.保健師論文は37件抽出され,一次予防7件,二次予防26件,三次予防13件で,身体12件,心理9,性2件,ネグレクト17件であった.看護師論文は12件抽出され一次予防2件,二次予防7件,三次予防3件で,身体5件,心理2,ネグレクト5件であった.助産師論文は11件抽出され一次予防5件,二次予防8件で,身体5件,ネグレクト2件であった.保育士論文は3件抽出され,二次予防3件で,身体1件,心理2件,ネグレクト2件であった.また,二次・三次予防の全論文で,複数職種または複数機関との連携がなされていた.
【考察】
 児童虐待支援では二次予防に関する報告が過半数を占めており,その重要性が推察された.看護職は,一次予防から三次予防まで幅広く取り組みがなされており,その支援対象は全ての虐待に渡っていた.また,論文件数は圧倒的多数であり,児童虐待支援において先駆的に取り組み,全体としてこの分野を牽引していることが伺えた.心理職は,二次予防以降で全ての虐待への関わりが認められた.保育士は,二次予防以降で性以外の虐待の種類との関わりが認められた.OTRは児童虐待のリスク要因とされる発達障害児を含む家庭を支援する専門職であるが,本研究の結果,その対象は三次予防におけるネグレクトに限局されていた.今回抽出された論文が1文献のみであり,三次予防やネグレクト以外のOTRによる児童虐待支援の実態について,OTR全般の取り組みとして一般化する事は難しい.今後,OTRが行う児童虐待支援を明らかにすることは,作業療法領域の発展の一助となると考えられる.