[PI-3-4] ポスター:発達障害 3自発的なアイコンタクトの生起がASD児の社会性におよぼす影響
児童発達支援での応用行動分析に基づく介入
【はじめに】自閉スペクトラム症(ASD)では,自発的な模倣の障害が社会性の学習に影響することが示唆されている.また,ASD児が定型発達児に比べて自発的な表情模倣を示さないのは,目の領域に注意が向かないためではないかとの可能性も示されている(千住,2012).一方,ASD児の行動改善に有効とされる応用行動分析(ABA)に基づく介入(Novak,2019)は,本邦の作業療法領域でも実践例があり,訓練内容にアイコンタクト課題が含まれている(倉澤ら,2019).本研究ではABAに基づく介入による自発的なアイコンタクトの生起がASD児の社会性におよぼす影響を検証した.なお,発表にあたり書面にて対象児の保護者に同意を得ている.
【事例紹介】3歳3か月の男児.知的障害を伴うASD.KIDS幼児発達スケール(Type-T)の総合発達年齢1歳2か月(検査時年齢3歳2か月),発達指数37.日本語版M-CHATは,23項目中9項目通過.認定こども園と当児童発達支援事業所を併用.当事業所は週2日利用,約3時間の集団療育(集団遊び,制作活動等)と,2週に1回の頻度で1回30分の個別療育(構成課題,ボールの転がし合い等)を受けていた.母親のニードは,「自分の意思を言葉で伝えられるようになってほしい」であった.
【介入前(3歳3か月時)】アイコンタクトにおいては,近くで呼びかけると時折大人の目を見ることはあるが,本児が自発的に目を合わせることはほとんど無かった.言語理解においては,音声言語の理解困難,指差しの理解困難であった.言語表出においては,有意味語の表出や音声模倣が聞かれず指差しでの意思表示も見られなかった.その他の社会的行動では,欲しい物があると大人の手を引いていく,遊びの順番を抜かす,集まりで椅子に座らず立ち歩くといった行動が見られた.
【介入期】個室で作業療法士(OTR)と対面での介入を1回30分,2週に1回の頻度で行った.獲得を目指す行動(標的行動)は,アイコンタクトによる要求,指差しの理解,動作模倣とし,課題は本児の好きな遊びである①シャボン玉,②型はめ,③粘土遊びを選択した.①では,本児と目が合うとOTRがシャボン玉を吹く試行を繰り返したところ,シャボン玉を吹いてほしい時に自発的に目を合わせるようになった.②では,本児が型をうまくはめられない場合に,目が合うとOTRが指差しで正しい場所を示す試行を繰り返したところ,型をはめられない場合に自発的にOTRの目を見るようになった.③では,本児は当初粘土をちぎって遊ぶことが多かったが,次第にOTRの模倣をしてお団子やヘビを作るようになった.また,集団療育では,本児の欲しがる玩具を目が合ってから手渡すよう児童指導員に助言し実施してもらった.
【介入後(3歳9か月時)】欲しい物やしてほしいことを要求する場面で,本児が自発的に大人の目を見る行動がみられるようになった.言語理解では,名前を呼ばれると振り向くこと,指差しで示したゴミ箱にごみを捨てに行くことが可能になった.言語表出では,欲しいものを手ざしで要求する,不快な情動を示す際に偶発的だが「イヤ」と言うことが可能になった.他に,集まりで一定時間椅子に座る,遊びの順番待ちをすることが可能になった.日本語版M-CHATは,23項目中12項目通過となり,項目10(アイコンタクト)が通過に変化した.母親からは「よく目が合うようになり何をしてほしいかわかりやすくなった」との弁が聞かれた.
【考察】ABAを取り入れた療育により,本児の自発的なアイコンタクトが増加したことで,自発的な模倣が促進され,社会的な適応行動の学習が促されたと推測される.ただし,他の療育内容や環境変化等による影響を除くことはできない.
【事例紹介】3歳3か月の男児.知的障害を伴うASD.KIDS幼児発達スケール(Type-T)の総合発達年齢1歳2か月(検査時年齢3歳2か月),発達指数37.日本語版M-CHATは,23項目中9項目通過.認定こども園と当児童発達支援事業所を併用.当事業所は週2日利用,約3時間の集団療育(集団遊び,制作活動等)と,2週に1回の頻度で1回30分の個別療育(構成課題,ボールの転がし合い等)を受けていた.母親のニードは,「自分の意思を言葉で伝えられるようになってほしい」であった.
【介入前(3歳3か月時)】アイコンタクトにおいては,近くで呼びかけると時折大人の目を見ることはあるが,本児が自発的に目を合わせることはほとんど無かった.言語理解においては,音声言語の理解困難,指差しの理解困難であった.言語表出においては,有意味語の表出や音声模倣が聞かれず指差しでの意思表示も見られなかった.その他の社会的行動では,欲しい物があると大人の手を引いていく,遊びの順番を抜かす,集まりで椅子に座らず立ち歩くといった行動が見られた.
【介入期】個室で作業療法士(OTR)と対面での介入を1回30分,2週に1回の頻度で行った.獲得を目指す行動(標的行動)は,アイコンタクトによる要求,指差しの理解,動作模倣とし,課題は本児の好きな遊びである①シャボン玉,②型はめ,③粘土遊びを選択した.①では,本児と目が合うとOTRがシャボン玉を吹く試行を繰り返したところ,シャボン玉を吹いてほしい時に自発的に目を合わせるようになった.②では,本児が型をうまくはめられない場合に,目が合うとOTRが指差しで正しい場所を示す試行を繰り返したところ,型をはめられない場合に自発的にOTRの目を見るようになった.③では,本児は当初粘土をちぎって遊ぶことが多かったが,次第にOTRの模倣をしてお団子やヘビを作るようになった.また,集団療育では,本児の欲しがる玩具を目が合ってから手渡すよう児童指導員に助言し実施してもらった.
【介入後(3歳9か月時)】欲しい物やしてほしいことを要求する場面で,本児が自発的に大人の目を見る行動がみられるようになった.言語理解では,名前を呼ばれると振り向くこと,指差しで示したゴミ箱にごみを捨てに行くことが可能になった.言語表出では,欲しいものを手ざしで要求する,不快な情動を示す際に偶発的だが「イヤ」と言うことが可能になった.他に,集まりで一定時間椅子に座る,遊びの順番待ちをすることが可能になった.日本語版M-CHATは,23項目中12項目通過となり,項目10(アイコンタクト)が通過に変化した.母親からは「よく目が合うようになり何をしてほしいかわかりやすくなった」との弁が聞かれた.
【考察】ABAを取り入れた療育により,本児の自発的なアイコンタクトが増加したことで,自発的な模倣が促進され,社会的な適応行動の学習が促されたと推測される.ただし,他の療育内容や環境変化等による影響を除くことはできない.