第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-4] ポスター:発達障害 4

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-4-1] ポスター:発達障害 4重症心身障害児の自立活動に対するリハビリテーション職種の連携におけるコンサルテーション

各職種の専門性と作業療法士の役割

濱田 匠12笹田 哲3 (1神奈川県立保健福祉大学大学院 保健福祉学研究科博士後期課程,2鈴鹿医療科学大学保健衛生学部,3神奈川県立保健福祉大学大学院 保健福祉学研究科)

【はじめに】重症心身障害児(以下,重症児)の特別支援学校の自立活動では,必要に応じてリハビリテーション職種の外部専門家に助言や指導を求めることが推奨されている.しかし,医療機関に所属するリハビリテーション職種の連携によるコンサルテーションに関する報告はみられない.本研究の目的は,重症児の自立活動に対して,医療機関に所属する理学療法士(以下,PT)や作業療法士(以下,OT),言語聴覚士(以下,ST)の連携によるコンサルテーションの相談内容を分析し,各職種の専門性を明らかにするとともに,職種間連携におけるOTの役割を示すことである.なお,本研究に開示すべきCOI関係はない.
【方法】重症児が在籍している可能性がある全国の347の肢体不自由や病弱の特別支援学校を対象に,質問紙法による調査を実施した.回答者は各校の現状を把握している特別支援教育コーディネーター1名とした.相談内容は自立活動6区分27項目で設定し,その有無を調査した.調査は2021年5月28日に開始し,回答期限を2021年8月31日とし,無記名回答とした.分析方法は職種別に記述集計を行い,ユークリッド平方距離によるWard法の階層的クラスター分析から,デンドログラムを作成し,その特徴を概観した.解析はIBM社のSPSS Statistics version26.0を使用した.なお,本研究はX大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号:X大第7-20-68)を得て実施した.
【結果】91校(回収率:26.2%)から回答があり,PT・OT・STの全ての職種とコンサルテーションの実施があった59校が最終分析対象となった.回答者の学校教諭歴は平均20.2年(標準偏差±9.3)であった.PTのデンドログラムは,「姿勢と運動・動作の基本的技能(59件)」,「身体の移動能力(58件)」,「姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用(53件)」の順で多かった.また,2のクラスターに分類でき,クラスターPT1は22項目から構成され【基礎的な運動機能以外の課題全般】と,クラスターPT2は身体の動きと健康の保持の5項目から構成され【基礎的な運動機能】と命名した.OTのデンドログラムは,「日常生活に必要な基本的動作(51件)」,「作業に必要な動作と円滑な遂行(50件)」,「姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用(46件)」の順で多かった.また,2のクラスターに分類でき,クラスターOT1は主に健康の保持と心理的な安定,人間関係の形成,コミュニケーションの18項目から構成され【作業遂行の環境】と,クラスターOT2は主に環境の把握と身体の動きの9項目から構成され【作業遂行の能力(個人)】と命名した.STのデンドログラムは,「言語の受容と表出(47件)」,「コミュニケーションの基礎的能力(40件)」,「コミュニケーション手段の選択と活用(37件)」の順で多かった.また,2のクラスターに分類でき,クラスターST1はコミュニケーションを除く22項目から構成され【コミュニケーション以外の課題全般】と,クラスターST2はコミュニケーションの5項目から構成され【コミュニケーション】と命名した.
【考察】重症児の自立活動に対する職種間連携における専門性として,PTは主に基礎的な運動機能,OTは主に作業遂行,STは主にコミュニケーションに焦点が当てられた内容であると考えられた.また,OTの作業遂行の視点はPTやSTの専門性を俯瞰しうる可能性があると考えられ,OTはPTやSTと学校教諭をつなぐコーディネーターとしての役割を担うことが期待されると考えられた.