[PI-4-2] ポスター:発達障害 4重症心身障害児・者施設における作業療法士によるグリーフケア
役割の質的解明における予備的研究
【はじめに】重症心身障害児者施設(以下,重症児者施設)では,利用者である重症心身障害児者(以下,重症児者)の高齢化・重症化が進んでおり,看取りが今後も増えていくことが予想される(船戸,2017).亡くなる利用者とその家族だけでなく,周囲の支援者,他の重症児者においても悲しみや抑うつなどの悲嘆反応(グリーフ)が残るが,重症児者施設におけるグリーフケアの具体的な指針や,作業療法士の役割は明示されていない.
【目的】本研究の目的は,他の作業療法士の経験から,重症児者施設のグリーフケアにおける作業療法士の役割について解明することである.
【方法】本研究は,森ノ宮医療大学の倫理審査の承認を得て実施した.作業療法士の個別的な経験を明らかにするため,様々な研究法の柔軟な組み合わせや修正を可能とする構造構成的質的研究法(Structure-Constructive Qualitative Research Method;SCQRM)を採用した.対象者は,重症児者施設での勤務と担当利用者の死の経験があり,研究参加に同意が得られた作業療法士1名とした.データ収集は半構造化インタビューを実施し,個別性を重視し分析を深めながらデータのストーリー性を再構築できるSCAT(Steps for Coding And Theorization)を用いて分析した.尚,本研究ではグリーフケアを「直接的,意図的な支援だけではなく,利用者の死の前後を問わず,結果として大切な人を亡くした人の適応過程にとって何らかの助けになる行いのこと」とした(坂口,2005).
【結果】作業療法の時間における有意義さや価値ある支援は,利用者のQOLの向上やその人らしい人生の支援に繋がるだけでなく,支援者のグリーフケアにとっても必要であることが挙げられた.利用者の代弁者となり,心身機能・身体構造のマイナス要素だけでなく,心身機能・身体構造のプラス要素,活動,参加に対するアプローチを行うことで,増えていく利用者との象徴的なエピソードを,利用者の死後,支援者が振り返り,語りによる癒しを得ることが重要だと捉えられていた.また,それは遺族の記憶に残る作業にもなり,遺族のグリーフケアにも繋がることが挙げられた.これらの支援は,医療的な知識からの予後予測を抜きにして,利用者の本当の希望に寄り添う役割を全うすることで,結果的に利用者の豊かな人生を実現することに繋がると捉えられていた.また,利用者の死に関して,他利用者に事実を伝える必要があることが挙げられた.他利用者が知ることを望むかどうかは分からないが,知る権利があり,支援者の自己都合による権利の剥奪が起こらないよう,心身の状態の評価に基づいた配慮のある伝え方をする必要があると捉えられていた.他利用者に予測不能な心身への影響があることが懸念されるが,仲間の死に対する自然な悲嘆反応であると捉えられていた.
【考察】重症児者施設における作業療法士のグリーフケアの経験について1事例を質的に分析し,作業療法士の役割やグリーフケアに繋がる支援が明らかとなった.利用者に対する生前の支援が,利用者の死後に支援者のグリーフケアになりうる重要なものであると考えられた.また,他利用者に対して仲間の死を伝える支援も,心身の状態を細やかに評価し伝え方を工夫することができる作業療法士の役割として重要になり得ると考えられた.今後,複数の作業療法士の経験を明らかにしていくことで,重症児者施設のグリーフケアにおける作業療法士の役割がより明確になり,日常の支援に繋がっていくことが期待される.
【目的】本研究の目的は,他の作業療法士の経験から,重症児者施設のグリーフケアにおける作業療法士の役割について解明することである.
【方法】本研究は,森ノ宮医療大学の倫理審査の承認を得て実施した.作業療法士の個別的な経験を明らかにするため,様々な研究法の柔軟な組み合わせや修正を可能とする構造構成的質的研究法(Structure-Constructive Qualitative Research Method;SCQRM)を採用した.対象者は,重症児者施設での勤務と担当利用者の死の経験があり,研究参加に同意が得られた作業療法士1名とした.データ収集は半構造化インタビューを実施し,個別性を重視し分析を深めながらデータのストーリー性を再構築できるSCAT(Steps for Coding And Theorization)を用いて分析した.尚,本研究ではグリーフケアを「直接的,意図的な支援だけではなく,利用者の死の前後を問わず,結果として大切な人を亡くした人の適応過程にとって何らかの助けになる行いのこと」とした(坂口,2005).
【結果】作業療法の時間における有意義さや価値ある支援は,利用者のQOLの向上やその人らしい人生の支援に繋がるだけでなく,支援者のグリーフケアにとっても必要であることが挙げられた.利用者の代弁者となり,心身機能・身体構造のマイナス要素だけでなく,心身機能・身体構造のプラス要素,活動,参加に対するアプローチを行うことで,増えていく利用者との象徴的なエピソードを,利用者の死後,支援者が振り返り,語りによる癒しを得ることが重要だと捉えられていた.また,それは遺族の記憶に残る作業にもなり,遺族のグリーフケアにも繋がることが挙げられた.これらの支援は,医療的な知識からの予後予測を抜きにして,利用者の本当の希望に寄り添う役割を全うすることで,結果的に利用者の豊かな人生を実現することに繋がると捉えられていた.また,利用者の死に関して,他利用者に事実を伝える必要があることが挙げられた.他利用者が知ることを望むかどうかは分からないが,知る権利があり,支援者の自己都合による権利の剥奪が起こらないよう,心身の状態の評価に基づいた配慮のある伝え方をする必要があると捉えられていた.他利用者に予測不能な心身への影響があることが懸念されるが,仲間の死に対する自然な悲嘆反応であると捉えられていた.
【考察】重症児者施設における作業療法士のグリーフケアの経験について1事例を質的に分析し,作業療法士の役割やグリーフケアに繋がる支援が明らかとなった.利用者に対する生前の支援が,利用者の死後に支援者のグリーフケアになりうる重要なものであると考えられた.また,他利用者に対して仲間の死を伝える支援も,心身の状態を細やかに評価し伝え方を工夫することができる作業療法士の役割として重要になり得ると考えられた.今後,複数の作業療法士の経験を明らかにしていくことで,重症児者施設のグリーフケアにおける作業療法士の役割がより明確になり,日常の支援に繋がっていくことが期待される.