[PI-4-5] ポスター:発達障害 45歳児の人物画発達の遅れに関連する因子
【はじめに】
描画は,幼児でよく行われる活動である.幼児の人物画の発達には一定の順序があり,これを利用した発達検査も存在する.発達障害児は人物画の発達の遅れや描出の特徴があることが知られているものの,どの要因がどの程度人物画に関連しているかは明らかにされていない.そこで,本研究では,5歳児を対象に人物画の発達に関連する症状や行動を明らかにすることを目的に調査を行った.
【方法】
対象は,A市5歳児発達健診二次健診を受診し,検査結果に欠損値のない233名とした.対象には,人物画検査として日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP)の人物画を実施し,チェックリストに沿って採点を行った.また,知能の評価として児童用ウェクスラー知能検査第4版(WISC-Ⅳ),社会性の評価として対人応答性尺度第2版(SRS-2),多動・不注意の評価としてConners3,行動特性の評価としてStrengths and Difficulties Questionnaire (SDQ,保護者が評価したものをP-SDQ,教師が評価したものをT-SDQとする),運動の不器用さの評価としてDevelopmental Coordination Disorder Questionnaire (DCDQ)を検査した.解析は,まず人物画の判定に関連する項目を明らかにするために,人物画検査で緑の判定を受けた者と赤・黄の判定を受けた者との間で各評価項目得点を群間比較した.その後,群間比較で差の認められた項目については人物画評価との関係性をみるために二項ロジスティック回帰分析を行った.これらの統計処理には統計解析ソフトSPSS 26.0を使用し,危険率5%未満を統計学上有意とした.なお,本研究は弘前大学医学研究科倫理委員会(2015-055, 2018-168)の承認のもとに実施され,開示すべきCOIはない.
【結果】
人物画検査で緑の判定を受けた者と赤・黄の判定を受けた者で群間比較したところ,赤・黄の判定を受けた者は,男児の比率およびDCDと知的障害(境界知能を含む)の診断を受けたものが有意に多かった(p<0.05).また,各発達検査の得点の比較では,赤・黄の判定を受けた者は,WISC-ⅣのFSIQおよび各下位項目,DCDQの総得点および微細運動の項目,P-SDQの多動/不注意の項目,T-SDQの総合的困難さおよび多動/不注意,向社会的な行動,仲間関係の問題の項目,Conners3の学習の問題の項目で有意に得点が低かった(p<0.05).二項ロジスティック回帰分析の結果,人物画判定に関連する因子として抽出されたものは,性別(B=-0.68,EXP(B)=0.51),DCDQの微細運動(B=-0.16,EXP(B)=0.85),T-SDQの向社会的な行動(B=-0.13,EXP(B)=0.88),WISC-Ⅳのワーキングメモリ指標(B=-0.02,EXP(B)=0.98)であった(p<0.05,判別的中率66.1%).
【考察】
本研究の結果,人物画の発達に関連した要素として,性別(男児であること),DCDQの微細運動,T-SDQの向社会的な行動,WISC-Ⅳのワーキングメモリ指標の4つが抽出された.人物画の判定にこれらが関係した理由について,男女の描画発達の早さの違いや好む遊びの違い,微細運動の苦手さによって生じる描画の回避による経験不足,向社会的な行動の苦手さによる共感性の乏しさ,ワーキングメモリの問題による描画のプランニングの乏しさが関与していると考えられた.各指標の得点の重みづけが異なることから,これらの指標が人物画の発達に与える影響に対して単純に順位付けをすることは難しいが,今回得られた知見は,保育園や学童保育などの訪問時での観察に活かされると考える.
描画は,幼児でよく行われる活動である.幼児の人物画の発達には一定の順序があり,これを利用した発達検査も存在する.発達障害児は人物画の発達の遅れや描出の特徴があることが知られているものの,どの要因がどの程度人物画に関連しているかは明らかにされていない.そこで,本研究では,5歳児を対象に人物画の発達に関連する症状や行動を明らかにすることを目的に調査を行った.
【方法】
対象は,A市5歳児発達健診二次健診を受診し,検査結果に欠損値のない233名とした.対象には,人物画検査として日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP)の人物画を実施し,チェックリストに沿って採点を行った.また,知能の評価として児童用ウェクスラー知能検査第4版(WISC-Ⅳ),社会性の評価として対人応答性尺度第2版(SRS-2),多動・不注意の評価としてConners3,行動特性の評価としてStrengths and Difficulties Questionnaire (SDQ,保護者が評価したものをP-SDQ,教師が評価したものをT-SDQとする),運動の不器用さの評価としてDevelopmental Coordination Disorder Questionnaire (DCDQ)を検査した.解析は,まず人物画の判定に関連する項目を明らかにするために,人物画検査で緑の判定を受けた者と赤・黄の判定を受けた者との間で各評価項目得点を群間比較した.その後,群間比較で差の認められた項目については人物画評価との関係性をみるために二項ロジスティック回帰分析を行った.これらの統計処理には統計解析ソフトSPSS 26.0を使用し,危険率5%未満を統計学上有意とした.なお,本研究は弘前大学医学研究科倫理委員会(2015-055, 2018-168)の承認のもとに実施され,開示すべきCOIはない.
【結果】
人物画検査で緑の判定を受けた者と赤・黄の判定を受けた者で群間比較したところ,赤・黄の判定を受けた者は,男児の比率およびDCDと知的障害(境界知能を含む)の診断を受けたものが有意に多かった(p<0.05).また,各発達検査の得点の比較では,赤・黄の判定を受けた者は,WISC-ⅣのFSIQおよび各下位項目,DCDQの総得点および微細運動の項目,P-SDQの多動/不注意の項目,T-SDQの総合的困難さおよび多動/不注意,向社会的な行動,仲間関係の問題の項目,Conners3の学習の問題の項目で有意に得点が低かった(p<0.05).二項ロジスティック回帰分析の結果,人物画判定に関連する因子として抽出されたものは,性別(B=-0.68,EXP(B)=0.51),DCDQの微細運動(B=-0.16,EXP(B)=0.85),T-SDQの向社会的な行動(B=-0.13,EXP(B)=0.88),WISC-Ⅳのワーキングメモリ指標(B=-0.02,EXP(B)=0.98)であった(p<0.05,判別的中率66.1%).
【考察】
本研究の結果,人物画の発達に関連した要素として,性別(男児であること),DCDQの微細運動,T-SDQの向社会的な行動,WISC-Ⅳのワーキングメモリ指標の4つが抽出された.人物画の判定にこれらが関係した理由について,男女の描画発達の早さの違いや好む遊びの違い,微細運動の苦手さによって生じる描画の回避による経験不足,向社会的な行動の苦手さによる共感性の乏しさ,ワーキングメモリの問題による描画のプランニングの乏しさが関与していると考えられた.各指標の得点の重みづけが異なることから,これらの指標が人物画の発達に与える影響に対して単純に順位付けをすることは難しいが,今回得られた知見は,保育園や学童保育などの訪問時での観察に活かされると考える.