[PI-5-3] ポスター:発達障害 5特別支援学校におけるコンサルテーション
体操と書字に問題を抱える児童生徒への助言・指導
【はじめに】筆者は特別支援学校において外部専門家として児童生徒の教育について指導・助言等の支援を行っている.今回,授業での体操場面での身体の動かし方と書字課題に苦手意識を持つ児童生徒に対して,作業療法の視点から担任教諭に助言・指導を行ったところ,動作の変容が見られたのでここに経過と考察をふまえて報告する.
【対象】A県内にある特別支援学校の小学部5年生の精神遅滞の男子児童生徒.担任からの情報として①初めてのことや不得意なことは消極的になり,泣き出したり目をつぶってしまったりすることがあるが,事前に具体的に内容を伝えたり,練習を積んだりすることで自信をもって取り組む②基本的な会話が成立し,場に応じたやりとりも少しずつできるようになった.③ラジオ体操,体づくり体操,ダンスなど体を大きく動かしたり部位を意識して動かしたりすることや,動きの模倣を苦手としている.⑤書ける文字も増えてきているが「書く」ことに苦手意識があるとのことであった.
【作業療法評価】①体操場面 観察してみると「腕を回す体操」で両上肢を交叉させる動きができていない,左右の上肢が違う肢位や大きく動かす運動の時に混乱しているなどの特徴が観察された.②書字課題 国語算数の授業を観察してみると平仮名の文字の書き出しの位置がわからない,横線を右から左に書くことがある,線が重なったり交叉する文字で形の歪みが目立ち,戸惑っている印象を受けた.
【作業療法介入(担任教諭への助言指導)】児童生徒の体操の問題と書字の問題には身体図式の未熟さがあり,運動企画能力の低さや自己の身体を中心とした左右,前後などの位置や空間関係の理解に混乱があるのではないかと考えた.そのため身体図式の発達を促すことを目的として,学校生活の活動の中で固有受容系感覚の入力を意識し,例えば重いものを運ぶ手伝い,押す,引くといった手掌面に強い感覚が入力される活動や上下肢の強い支持性が要求されるような活動を取り入れることを提案した.体操場面では対面で模倣させるよりも児童生徒の背後に回って上下肢を他動的に動かし,運動の方向性を伝えることを助言した.書字については簡単な点結びの空間関係課題から始めて失敗経験がないように課題の難易度を配慮するよう助言した.
【6ヶ月後の経過】体操では「深呼吸の体操」のような両上肢を同側性に大きく動かすような動きは自信を持って出来るようになってきた.空間関係課題は簡単な課題では誤りはなくなり,自信を持って取り組む様子が伺えた.同時に平仮名のなぞり課題も進めていったが,書き出しの部分を指示しなくても間違えずに書けるようなった.
【考察】体操と書字ができない問題の背景に身体図式の未熟さという共通した要因があるのではないかと考え,固有受容系感覚の入力を意識した関わり方を担任教諭に助言・指導したところ,体操,書字ともに変容が認められた.身体図式に変化を確認するため人物画の描画を行ったところ,つい最近まで頭足人のような描画であったが,頭部の他に体幹が描かれ,そこから上下肢が描かれており,身体図式にも変化があったことが示唆された.これに伴い,左右などの位置関係,空間関係が把握できるようになり,体操や書字においても変化が見られたのではないかと考える.
【おわりに】
特別支援学校において今回のような学校生活上での問題を抱えている児童生徒は少なくない.このような問題に対して,作業療法士はその専門性を発揮し,感覚-運動機能の視点から児童生徒の問題の背景にあるものを推測し,教育的な課題への支援方法を助言・指導することができる.
【対象】A県内にある特別支援学校の小学部5年生の精神遅滞の男子児童生徒.担任からの情報として①初めてのことや不得意なことは消極的になり,泣き出したり目をつぶってしまったりすることがあるが,事前に具体的に内容を伝えたり,練習を積んだりすることで自信をもって取り組む②基本的な会話が成立し,場に応じたやりとりも少しずつできるようになった.③ラジオ体操,体づくり体操,ダンスなど体を大きく動かしたり部位を意識して動かしたりすることや,動きの模倣を苦手としている.⑤書ける文字も増えてきているが「書く」ことに苦手意識があるとのことであった.
【作業療法評価】①体操場面 観察してみると「腕を回す体操」で両上肢を交叉させる動きができていない,左右の上肢が違う肢位や大きく動かす運動の時に混乱しているなどの特徴が観察された.②書字課題 国語算数の授業を観察してみると平仮名の文字の書き出しの位置がわからない,横線を右から左に書くことがある,線が重なったり交叉する文字で形の歪みが目立ち,戸惑っている印象を受けた.
【作業療法介入(担任教諭への助言指導)】児童生徒の体操の問題と書字の問題には身体図式の未熟さがあり,運動企画能力の低さや自己の身体を中心とした左右,前後などの位置や空間関係の理解に混乱があるのではないかと考えた.そのため身体図式の発達を促すことを目的として,学校生活の活動の中で固有受容系感覚の入力を意識し,例えば重いものを運ぶ手伝い,押す,引くといった手掌面に強い感覚が入力される活動や上下肢の強い支持性が要求されるような活動を取り入れることを提案した.体操場面では対面で模倣させるよりも児童生徒の背後に回って上下肢を他動的に動かし,運動の方向性を伝えることを助言した.書字については簡単な点結びの空間関係課題から始めて失敗経験がないように課題の難易度を配慮するよう助言した.
【6ヶ月後の経過】体操では「深呼吸の体操」のような両上肢を同側性に大きく動かすような動きは自信を持って出来るようになってきた.空間関係課題は簡単な課題では誤りはなくなり,自信を持って取り組む様子が伺えた.同時に平仮名のなぞり課題も進めていったが,書き出しの部分を指示しなくても間違えずに書けるようなった.
【考察】体操と書字ができない問題の背景に身体図式の未熟さという共通した要因があるのではないかと考え,固有受容系感覚の入力を意識した関わり方を担任教諭に助言・指導したところ,体操,書字ともに変容が認められた.身体図式に変化を確認するため人物画の描画を行ったところ,つい最近まで頭足人のような描画であったが,頭部の他に体幹が描かれ,そこから上下肢が描かれており,身体図式にも変化があったことが示唆された.これに伴い,左右などの位置関係,空間関係が把握できるようになり,体操や書字においても変化が見られたのではないかと考える.
【おわりに】
特別支援学校において今回のような学校生活上での問題を抱えている児童生徒は少なくない.このような問題に対して,作業療法士はその専門性を発揮し,感覚-運動機能の視点から児童生徒の問題の背景にあるものを推測し,教育的な課題への支援方法を助言・指導することができる.