[PI-6-1] ポスター:発達障害 6食べることの困難さを抱える子どもに対し,複合的なアプローチを行った事例
【はじめに】これまでの研究では,生後15ヶ月時点で56%の子どもに偏食が認められるものの,3歳頃になると大多数の子どもに食の広がりがみられるとされている(Emmett,2018).しかし,発達障害を抱える子どもは,幼児期を過ぎても偏食が残存し,心身の健康を悪化させるリスクや家族のストレス増加に影響する可能性がある(Fodstad,2008;Phillips,2014;Sahan,2021).偏食につながる要因として,味覚や食感に対する異常な反応性や口腔機能の問題,保護者の養育態度などが挙げられる(Kuschner,2015;Sahan,2021).今回,偏食や口腔機能の問題から固形物を食べることに困難さがある事例に対し,母親や関係者間で協働しながら複合的な介入を行った.結果,食べることのできる食物の種類が増え,家庭や学校の生活に広がりがみられたので報告する.
【事例紹介】事例は9歳の男児.父親,母親,祖父母,本児の5人家族.小学校入学を機に当施設(放課後等デイサービス)を利用するようになった.小学校では特別支援学級に在籍している.早産・低体重にて出生し,新生児期に頭蓋内出血を発症した.粗大運動発達は,寝返り7ヶ月,お座り1歳,歩行2歳6ヶ月であった.3歳まで発語がなく他人に興味を持つことは少なかった.食事ではペースト食やお粥,栄養補助飲料などを摂取しており,固形物を提供されると回避する様子が観察された.摂食嚥下機能に関して,口腔期における送り込みの不十分さはあるが.咽頭期に問題はみられなかった.母親は小学校の給食を食べられるようになることを望んでいた.田中ビネー検査は,生活年齢8歳8ヶ月,精神年齢4歳6ヶ月,知能指数52であった.なお本報告に際して,事例の母親に同意を得ている.
【方法】食べられる食物の種類を増やすことを目標に,本児の自主性を重視した実作業の実践と行動学的フィードバックを組み合わせて介入した.①実際の食事場面にて本児が許容できる固形物から食べる経験を積むこと②本児への肯定的なフィードバック③家庭や学校へのフォロー④口腔運動機能の要素的練習から構成されるプログラムを立案し,1回/週の頻度で2ヶ月間の介入を行った.
【結果】母親より,家族で外食に行った際にはカレーや鉄火巻き,学校ではオムレツを初めて食べることができたと報告があった.施設利用時において,おやつ時は固形物のお菓子,お弁当ではご飯やおむすびを新たに食べることが可能となった.一方,固形物を食べる機会の増加に伴って,咀嚼の持続性や食塊形成,一口量の調整が今後の課題となった.
【考察】今回,食べることに困難さを抱える子どもに対し,実際の食事場面を中心とした複合的なアプローチを行った.食べることの支援において,Steinsbekkら(2017)は子どもの自主性を認めるような支援の重要性を示唆し,Lukensら(2014)は行動学的手法や口腔運動療法,介入プロセスへの保護者の参加などのアプローチを複合的に行う必要性を示している.これらからも,今回の子どもの自主性を重視した複合的なアプローチが,食べられる食物の種類の増加と食の広がりにつながった可能性があると考えられる.
【事例紹介】事例は9歳の男児.父親,母親,祖父母,本児の5人家族.小学校入学を機に当施設(放課後等デイサービス)を利用するようになった.小学校では特別支援学級に在籍している.早産・低体重にて出生し,新生児期に頭蓋内出血を発症した.粗大運動発達は,寝返り7ヶ月,お座り1歳,歩行2歳6ヶ月であった.3歳まで発語がなく他人に興味を持つことは少なかった.食事ではペースト食やお粥,栄養補助飲料などを摂取しており,固形物を提供されると回避する様子が観察された.摂食嚥下機能に関して,口腔期における送り込みの不十分さはあるが.咽頭期に問題はみられなかった.母親は小学校の給食を食べられるようになることを望んでいた.田中ビネー検査は,生活年齢8歳8ヶ月,精神年齢4歳6ヶ月,知能指数52であった.なお本報告に際して,事例の母親に同意を得ている.
【方法】食べられる食物の種類を増やすことを目標に,本児の自主性を重視した実作業の実践と行動学的フィードバックを組み合わせて介入した.①実際の食事場面にて本児が許容できる固形物から食べる経験を積むこと②本児への肯定的なフィードバック③家庭や学校へのフォロー④口腔運動機能の要素的練習から構成されるプログラムを立案し,1回/週の頻度で2ヶ月間の介入を行った.
【結果】母親より,家族で外食に行った際にはカレーや鉄火巻き,学校ではオムレツを初めて食べることができたと報告があった.施設利用時において,おやつ時は固形物のお菓子,お弁当ではご飯やおむすびを新たに食べることが可能となった.一方,固形物を食べる機会の増加に伴って,咀嚼の持続性や食塊形成,一口量の調整が今後の課題となった.
【考察】今回,食べることに困難さを抱える子どもに対し,実際の食事場面を中心とした複合的なアプローチを行った.食べることの支援において,Steinsbekkら(2017)は子どもの自主性を認めるような支援の重要性を示唆し,Lukensら(2014)は行動学的手法や口腔運動療法,介入プロセスへの保護者の参加などのアプローチを複合的に行う必要性を示している.これらからも,今回の子どもの自主性を重視した複合的なアプローチが,食べられる食物の種類の増加と食の広がりにつながった可能性があると考えられる.