[PI-6-2] ポスター:発達障害 6周産期重症型低ホスファターゼ児に対する在宅生活に向けての作業療法の経験
【はじめに】今回,周産期重症型低ホスファターゼ症(以下,周産期重症型HPP)の女児に対して作業療法(以下,OT)介入の機会を得た.
近年,アルカリフォスファターゼ(以下,ALP) 酵素補充薬が開発され,それを投与された患者の5歳時生存率は84%であった.一方,無治療での5歳時生存率は 27%である.また,身体機能や生活の質に影響を及ぼしうる合併症は全ての病型で起こりえると報告されている.現在までこの疾患に対するOTの報告はなく,今回リスク回避を模索しながら在宅生活に向けたOTの関わりを以下に報告する.本発表に際して,保護者には書面で承諾を得た.
【症例】出生前診断を受けZ病院にて在胎36週Y日,198Xg,ALP値18で出生した女児.アプガースコア1分値3点,5分値5点.重度の骨石灰化不良を認め,狭胸郭であり,出生直後より人工呼吸管理を要した.酵素補充療法が行われ,骨化は改善傾向となった.気管軟化症のため月齢4か月で気管切開術が施行され,月齢5か月半に当院NICUに転院しOT開始.月齢11か月半に自宅退院した.
【介入目的】周産期重症型HPP児に対して,骨折や骨変形,さらに呼吸障害悪化に留意し,段階的に負荷量を考え在宅生活に向けたOT支援を行う.
【介入方法】週5日,1回あたり20分で母親の面会時間に,担当看護師同席のもとOT実施.骨化の進行や呼吸状態に関しては,医師に適宜確認した.
【経過】OT初日,仰臥位で両手を合わせることは可能だが,定頸が未発達のため寝返り獲得には至らず.追視や注視は可能で,母親と医療スタッフの顔を見て笑う事があり.児と母親との愛着形成は良好.Z病院では前腕と下腿に骨折歴があり,当院転院後も骨化は進んでいたが,重力負荷による骨折や骨変形への配慮が必要であった.そのため,保育器内で児がリーチ遊びできる環境をつくり,並行して母親と一緒に愛護的な赤ちゃん体操を実施した.月齢6か月から在宅用人工呼吸器に変更となり,痰の量が増加し無気肺予防のため腹臥位による体位ドレナージを行った.ベッド上腹臥位姿勢による体圧分散軽減のため,頭部と体幹前面から下腿にわたりタオルで保護をした.腹臥位で頸部伸展保持がみられる様になったことを受けて頭部を支持しながら介助下での座位に取り組んだが,一時的なSpO2低下と後方への反り返りが出現した.そこで,児の頭頚部から殿部までサポートを行える座位保持椅子での遊びを行い,その環境下で長い時間遊びができるようになったため離乳食摂取の体勢を母親による抱っこから座位保持椅子に変更した.さらに,母親に在宅で行える児との遊びの指導を行い,退院前には多職種と協同しベビーカーやチャイルドシート乗車練習を行った.
【結果】児はベッド上で自発的な遊びや親子で一緒に遊ぶことが可能となり,骨折や呼吸状態悪化なく自宅退院を迎えた.
【考察】作業療法士が留意したことは,周産期重症型HPP児は,将来的な機能的予後が未知であり,最大の特徴とする骨折や骨変形への配慮と段階的な重力負荷を行った.NICU入院中は医療優先となり,母は児と触れ合う時間を作れなかったが,離乳食などの短時間でも関わりを持つことができたことで笑顔が見られた.また児の運動発達の遅れをその中で感じることがあり,医療者側は家族に児の発達を感じ取れる様に配慮することが重要と思われた.
今回,NICUにて家族が児の生活上の世話をすることを通じ,不安を軽減し順調に在宅生活へ向けた準備が行えたと思われる.
近年,アルカリフォスファターゼ(以下,ALP) 酵素補充薬が開発され,それを投与された患者の5歳時生存率は84%であった.一方,無治療での5歳時生存率は 27%である.また,身体機能や生活の質に影響を及ぼしうる合併症は全ての病型で起こりえると報告されている.現在までこの疾患に対するOTの報告はなく,今回リスク回避を模索しながら在宅生活に向けたOTの関わりを以下に報告する.本発表に際して,保護者には書面で承諾を得た.
【症例】出生前診断を受けZ病院にて在胎36週Y日,198Xg,ALP値18で出生した女児.アプガースコア1分値3点,5分値5点.重度の骨石灰化不良を認め,狭胸郭であり,出生直後より人工呼吸管理を要した.酵素補充療法が行われ,骨化は改善傾向となった.気管軟化症のため月齢4か月で気管切開術が施行され,月齢5か月半に当院NICUに転院しOT開始.月齢11か月半に自宅退院した.
【介入目的】周産期重症型HPP児に対して,骨折や骨変形,さらに呼吸障害悪化に留意し,段階的に負荷量を考え在宅生活に向けたOT支援を行う.
【介入方法】週5日,1回あたり20分で母親の面会時間に,担当看護師同席のもとOT実施.骨化の進行や呼吸状態に関しては,医師に適宜確認した.
【経過】OT初日,仰臥位で両手を合わせることは可能だが,定頸が未発達のため寝返り獲得には至らず.追視や注視は可能で,母親と医療スタッフの顔を見て笑う事があり.児と母親との愛着形成は良好.Z病院では前腕と下腿に骨折歴があり,当院転院後も骨化は進んでいたが,重力負荷による骨折や骨変形への配慮が必要であった.そのため,保育器内で児がリーチ遊びできる環境をつくり,並行して母親と一緒に愛護的な赤ちゃん体操を実施した.月齢6か月から在宅用人工呼吸器に変更となり,痰の量が増加し無気肺予防のため腹臥位による体位ドレナージを行った.ベッド上腹臥位姿勢による体圧分散軽減のため,頭部と体幹前面から下腿にわたりタオルで保護をした.腹臥位で頸部伸展保持がみられる様になったことを受けて頭部を支持しながら介助下での座位に取り組んだが,一時的なSpO2低下と後方への反り返りが出現した.そこで,児の頭頚部から殿部までサポートを行える座位保持椅子での遊びを行い,その環境下で長い時間遊びができるようになったため離乳食摂取の体勢を母親による抱っこから座位保持椅子に変更した.さらに,母親に在宅で行える児との遊びの指導を行い,退院前には多職種と協同しベビーカーやチャイルドシート乗車練習を行った.
【結果】児はベッド上で自発的な遊びや親子で一緒に遊ぶことが可能となり,骨折や呼吸状態悪化なく自宅退院を迎えた.
【考察】作業療法士が留意したことは,周産期重症型HPP児は,将来的な機能的予後が未知であり,最大の特徴とする骨折や骨変形への配慮と段階的な重力負荷を行った.NICU入院中は医療優先となり,母は児と触れ合う時間を作れなかったが,離乳食などの短時間でも関わりを持つことができたことで笑顔が見られた.また児の運動発達の遅れをその中で感じることがあり,医療者側は家族に児の発達を感じ取れる様に配慮することが重要と思われた.
今回,NICUにて家族が児の生活上の世話をすることを通じ,不安を軽減し順調に在宅生活へ向けた準備が行えたと思われる.