第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-6] ポスター:発達障害 6

2022年9月17日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-6-3] ポスター:発達障害 6児童発達支援事業所及び放課後等デイサービス事業所で求められる作業療法の専門性

田村 孝司1 (1株式会社アルテディア)

【はじめに】
児童発達支援事業(以下,児発)及び放課後等デイサービス事業(放デイ)は2012年に従来のサービスから改変された事業で,急速に普及している.児発の事業所数は2017年までの5年間で2.2倍となり放デイは同期間で2.5倍となった.一方で児発,放デイは長時間預かる事業所と専門療育に特化した事業所があることが示されている.
2021年度における障害福祉サービス報酬改定で専門的支援加算が設定されることとなり,より質の高い療育を提供することが求められている.児発・放デイ共に新しいサービス体系であり,それぞれの事業所によって提供されるサービス内容は多岐にわたっているが,作業療法士による療育の必要性が高いことが推察される.本研究では作業療法士の児発・放デイにおける役割について調査し,考察を加えることにある.
【方法】
 2017年から2020年の間に日本作業療法学会で発表された抄録のうち標題に「児童発達支援」もしくは「放課後等デイサービス」が含まれる5演題について質的に分析した.
【結果】
 業務内容に関する記載があるものは2演題で作業療法士が直接サービスを提供しているものと巡回により,参与観察から相談助言を行っているものがあった.保護者へのアンケートは2演題あり,保護者のニーズには家から近いこと,子どもにあった療育が受けられること,送迎があることなどが挙げられ,最も優先されるのは子どもにあった専門的な療育であった.また,育児ストレスに関する調査では子どもの成長を感じることができているが,ストレスは高い状態であることが報告された. また,業務管理及び行政との連携に関する演題は2演題あり,業務管理から記録,行政との連携について報告されていた.
【考察】
 学校職員に対する調査では通常学級に発達障害の可能性がある児童は約6.5%存在することが報告され,さらに60万人以上に何らかの支援が必要だと推測されている.未就学児,就学児が療育を受けることができる機関は医療機関もしくは市区町村の事業もしくは児発・放デイである.このうち,短時間型の療育を提供しているのは放課後等デイサービス事業の約12.8%である.本研究においても業務内容の報告や保護者アンケートから作業療法士による専門的な療育が十分に提供できているとは言えない状況であることが推察された.
 2021年障害福祉サービスの改定にあたり専門的支援加算が設定され作業療法士等による加算は改定前の加算より増額されている.しかし,人材の確保は困難になっていることが予測される.限られた作業療法サービスの資源を有効に活用するためには,作業療法士は子どもに直接支援するだけでなく,環境調整を含むコンサルテーション能力が必要になると考えられた.これは保育所等訪問指導加算で行われている直接支援と間接支援を踏まえたサービス提供に近い形態と考えられる.地域の実情を踏まえた地域に密着した支援が求められている.