[PI-7-1] ポスター:発達障害 7学童期の発達障害児における感覚処理・行為機能の経時的変化
【背景】
障害児通所支援では定期的な再評価によって子供の発達特性を十分に理解し,積極的に支援計画を更新することが求められる(厚生労働省,2017).しかし,発達障害児の生活課題の一因となる感覚処理・行為機能を経時的に分析している研究は見当たらない.これまでに我々は,放課後等デイサービス利用児の当該機能についてJPANを用いて明らかにし,事業にOTが関与することで,児の1年後の感覚処理・行為機能が改善されることを報告した.今回,2年間の当該機能の経時的変化から,学童期にある発達障害児への今後の支援内容に関する示唆が得られたため報告する.
【目的】
学童期にある発達障害児の感覚処理・行為機能について2年間の経時的変化を明らかにする.
【方法】
障害児通所支援を担う当事業所でなされた2年間(2019年7月-2021年11月)の個別・集団指導において,OTが関わった発達障害児のうち同意の得られた小学生10名(男性7名/女性3名,年齢8.4±1.0歳,普通学級6名/特別支援学級4名,個別のみ2名/主に集団8名)を対象とした.対象者の感覚処理・行為機能はJPAN Short Version(S-JPAN)を用いて測定し,年度毎に計3回実施した.分析には,S-JPAN8項目の測定値を年齢%タイルで順序化した5段階指標(0-5%:1,6-16%:2,17-25%:3,26-50%:4,51%以上:5)とその指標から換算された合計点(低値の方が感覚統合機能の問題が軽度であることを示す)を用いた.統計解析ではFriedman検定を実施し,多重比較としてWilcoxon 符号順位検定(Bonferroni補正)を行った.有意水準は5%未満とした.なお,調査期間中の対象者には,OTやST,保育士,児童指導員のいずれかによる個別指導,ならびに運動と対人交流プログラムで構成された集団指導が,月2-4回でなされた.
【結果】
S-JPAN合計点の初年度と2年後の中央値(四分位範囲)は,それぞれ6.5(3.5-9.6)と2.0(0.4-3.3)であり,有意な改善が認められた(P=.038).また,両側運動協調の項目である「おっとっと」は4(2-4)から5(4-5)に,「仲良くおひっこしクロス」は1(1-2)から4(3-5)に2年間で有意に向上した(それぞれP=.048とP=.036).一方,姿勢模倣の「かっこよくまねしよう」では,1年後の2(2-2)から2年後の1(1-1)に有意な低下を示した(P=.043).支援内容に関しては,OTによる個別指導において縄跳びやバドミントン,ハサミと糊を用いる紙細工が多かった.集団指導の運動プログラムは,平均台上の立位で行う玉入れ,洗濯バサミを用いるボトルキャップ掴み,両手で把持した棒を扱うボール運び,四方に張られたビニールテープくぐり等が実施された.
【考察】
調査より,障害児通所支援を利用する学童期の発達障害児の感覚処理・行為機能は,2年後に改善し,特に両側運動協調への効果が明らかとなった.両手の協調動作における意識的な把持力制御は,固有受容感覚をもとになされること(小谷ら,2002)や,協調動作時の非利き手の操作は,両手の鏡像運動によって向上すること(荒牧,2014)が知られている.つまり,紙細工を通じた感覚運動経験や縄跳び・ボール運びなどの両手同時操作が奏効したといえ,対象児の感覚処理・行為機能を的確に評価し,発達特性に基づいた感覚運動遊びや実用的な課題練習を段階付けて行うことが重要と推察された.しかし,他者の動作を観察して自己の身体と照合させる姿勢模倣において,直近1年で低下したことは注視すべきである.模倣の困難さは,新たな生活行為の技能習得や他者と共感する社会的機能に影響することから,本結果は,身体の正中線交差を伴う両側統合や体性感覚処理を土台とした身体図式に対して,更なる介入を行う必要性を示唆している.
障害児通所支援では定期的な再評価によって子供の発達特性を十分に理解し,積極的に支援計画を更新することが求められる(厚生労働省,2017).しかし,発達障害児の生活課題の一因となる感覚処理・行為機能を経時的に分析している研究は見当たらない.これまでに我々は,放課後等デイサービス利用児の当該機能についてJPANを用いて明らかにし,事業にOTが関与することで,児の1年後の感覚処理・行為機能が改善されることを報告した.今回,2年間の当該機能の経時的変化から,学童期にある発達障害児への今後の支援内容に関する示唆が得られたため報告する.
【目的】
学童期にある発達障害児の感覚処理・行為機能について2年間の経時的変化を明らかにする.
【方法】
障害児通所支援を担う当事業所でなされた2年間(2019年7月-2021年11月)の個別・集団指導において,OTが関わった発達障害児のうち同意の得られた小学生10名(男性7名/女性3名,年齢8.4±1.0歳,普通学級6名/特別支援学級4名,個別のみ2名/主に集団8名)を対象とした.対象者の感覚処理・行為機能はJPAN Short Version(S-JPAN)を用いて測定し,年度毎に計3回実施した.分析には,S-JPAN8項目の測定値を年齢%タイルで順序化した5段階指標(0-5%:1,6-16%:2,17-25%:3,26-50%:4,51%以上:5)とその指標から換算された合計点(低値の方が感覚統合機能の問題が軽度であることを示す)を用いた.統計解析ではFriedman検定を実施し,多重比較としてWilcoxon 符号順位検定(Bonferroni補正)を行った.有意水準は5%未満とした.なお,調査期間中の対象者には,OTやST,保育士,児童指導員のいずれかによる個別指導,ならびに運動と対人交流プログラムで構成された集団指導が,月2-4回でなされた.
【結果】
S-JPAN合計点の初年度と2年後の中央値(四分位範囲)は,それぞれ6.5(3.5-9.6)と2.0(0.4-3.3)であり,有意な改善が認められた(P=.038).また,両側運動協調の項目である「おっとっと」は4(2-4)から5(4-5)に,「仲良くおひっこしクロス」は1(1-2)から4(3-5)に2年間で有意に向上した(それぞれP=.048とP=.036).一方,姿勢模倣の「かっこよくまねしよう」では,1年後の2(2-2)から2年後の1(1-1)に有意な低下を示した(P=.043).支援内容に関しては,OTによる個別指導において縄跳びやバドミントン,ハサミと糊を用いる紙細工が多かった.集団指導の運動プログラムは,平均台上の立位で行う玉入れ,洗濯バサミを用いるボトルキャップ掴み,両手で把持した棒を扱うボール運び,四方に張られたビニールテープくぐり等が実施された.
【考察】
調査より,障害児通所支援を利用する学童期の発達障害児の感覚処理・行為機能は,2年後に改善し,特に両側運動協調への効果が明らかとなった.両手の協調動作における意識的な把持力制御は,固有受容感覚をもとになされること(小谷ら,2002)や,協調動作時の非利き手の操作は,両手の鏡像運動によって向上すること(荒牧,2014)が知られている.つまり,紙細工を通じた感覚運動経験や縄跳び・ボール運びなどの両手同時操作が奏効したといえ,対象児の感覚処理・行為機能を的確に評価し,発達特性に基づいた感覚運動遊びや実用的な課題練習を段階付けて行うことが重要と推察された.しかし,他者の動作を観察して自己の身体と照合させる姿勢模倣において,直近1年で低下したことは注視すべきである.模倣の困難さは,新たな生活行為の技能習得や他者と共感する社会的機能に影響することから,本結果は,身体の正中線交差を伴う両側統合や体性感覚処理を土台とした身体図式に対して,更なる介入を行う必要性を示唆している.