第56回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-7] ポスター:発達障害 7

Sat. Sep 17, 2022 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PI-7-2] ポスター:発達障害 7加速度を用いた発達障害児の筆記具操作の特徴の検討

描画特徴・運筆動作の特徴・書字の読みやすさとの関連

池田 千紗1中島 そのみ2大柳 俊夫3仙石 泰仁2 (1北海道教育大学札幌校特別支援教育専攻,2札幌医科大学保健医療学部作業療法学科第二講座,3札幌医科大学医療人育成センター 教養教育研究部門)

【はじめに】
 我々は描画や書字といった運筆に困難さを抱える発達障害児(以下,不器用児)への支援方法を検討するため,タブレットPCを用いた運筆評価方法を開発し,不器用児の描画と運筆動作の特徴を報告してきた(池田ら,2016).この研究から不器用児は筆記具を滑らかに操作できないことが明らかとなり,不器用児では筆記具操作時の運動制御に問題があることが示唆された.そこで本研究では,運動制御の指標とされる加速度を用い不器用児の筆記具操作の特徴を示し,描画特徴,運筆動作の特徴,書字の読みやすさとの関連を検討した.
【方法】
1.被験児 : 被験児は,筆者所属先の倫理規定に則り本研究へ参加の同意が得られた小学校2~6年生の右利きの男児で,定型発達児53名(2年8名,3年10名,4年11名,5年12名,6年12名)と不器用児10名(2年2名,3年3名,4年1名,5年2名,6年2名)とした.不器用児10名は書字や描画の不正確さと疲れやすさを主訴としており,書字の読みやすさの定量的評価(池田ら,2013)で書字に問題があると判断された児は5名だった.
2.課題: 描画課題は,タブレットPC上に提示した一辺10cm(以下,△10)の正三角形と同心内側の正三角形との罫線間(3mm)にペン型マウスを用いてはみ出さないように線を引く課題とし,3試行実施した.課題実施中の運筆動作を分析するために,被験児の右肩峰,右上腕骨外側上顆,右橈骨茎状突起,ペン型マウスにマーカーを貼付し,被験児の上方と右側方からビデオカメラで撮影した.
3.分析: 筆記具操作の特徴は,ペン型マウスの移動加速度の度数分布を作成し度数分布毎の割合を算出した.描画特徴は,罫線間からのはみ出し距離を算出した.運筆動作の特徴は,動画解析を行い,描画課題実施中の4つのマーカーの総軌跡長を100%とした際の,各マーカーの軌跡長の割合を算出した.不器用児の筆記具操作の特徴は,度数分布について対応する学年との適合度検定により逸脱を確認した.度数分布の割合が定型発達児と異なる場合,運動制御の問題により筆記具を滑らかに操作できていないと判断した.不器用児の描画特徴は,はみ出し距離について対応する学年の標準範囲(平均値±1SD)からの逸脱を確認した.不器用児の運筆動作の特徴は,軌跡長の割合について対応する学年との適合度検定により逸脱を確認した.不器用児を筆記具操作の特徴(加速度)により分類し,描画特徴,運筆動作の特徴,書字の読みやすさの特徴との関連を検討した.
【結果】
 不器用児の筆記具操作の特徴は,加速度の度数分布の割合が不適合で筆記具を滑らかに操作できていないと判断されたⅠ群7名,度数分布の割合が適合したⅡ群3名に分類された.描画特徴については,はみ出し距が長く描画が不正確な児はⅠ群5名,Ⅱ群1名だった.運筆動作の特徴については,軌跡長の割合が不適合だった児はⅠ群4名,Ⅱ群1名だった.尚,書字の定量的評価で読みにくいと判断された児は全員Ⅰ群で,Ⅰ群の7名は描画と書字のいずれか,もしくは両方に問題があった.
【考察】
 筆記具を滑らかに操作できていないと判断された児は描画の不正確さや書字の読みにくさを呈し,運筆動作が定型発達児と異なる傾向があった.このことから,加速度を用いた筆記具操作の特徴の評価は,日常生活の書字や描画の困難さを反映することが示唆された.今後はさらに手指の詳細な運動学的データを収集し,不器用児の筆記具操作の特徴を明らかにしていく.